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「杖持たず」の旧式魔術師 〜機械音痴は手動の魔術で時代を追い抜く〜  作者: 最上 虎々
第三章 王都の伝説と最高位魔術師

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第二十四話 南洋戦線の天使

「あらぁ~……外してしまいましたぁ~!お強いんですねぇ~!」


 本人に悪気は無いのだろうが、ここまでの斬撃を披露されてからだと、むしろ煽りに感じてしまう褒め言葉を受けながら、俺は冷えた背筋を温め直す。


「や、ヤバい」


「じゃあ次、行きますよぉ~?」


「【屈折迷彩(ピカリィ)】!」


「そぉ~れっ!」


 間一髪、俺は光の屈折を利用して囮となる分身を作り出し、自身の姿を隠す。


「あっぶな……」


「プラティエさんは現代魔杖を使わないんでしたっけ~。その分、応用が効くと聞いています~。こんなこともできるんですねぇ~」


「そ、そうですけど……模擬戦にしては随分とエグい攻撃をしてきますね」


「ふふふっ。大丈夫です、指を切り落とすような斬撃は出しませんからぁ~」


「怖いです、マジで」


 頬に左手を当てながら、シャルラ先生の口から物騒な言葉が飛び出す。


「じゃあ……そちらの攻撃も見せてもらいましょうか~。私、待ってますから~」


 そして、まさかの攻撃待ち。


 魔法薬のエキスパートでありながら、戦士としても超一級ということだろうか。


 南洋戦線の天使。


 それは味方を癒す天使でありながら、敵を葬り去る天使でもあったということなのだろう。


「じゃあ、遠慮なく!……炎よ、不死鳥の姿を以て敵を葬り去れ!【火の鳥(モエーロ)】!」


 俺は呪文を唱え、鳥を模った火の塊を撃った。


「そ~れそれ!」


 しかし、火の鳥は一瞬にして切り裂かれ、そのまま火の粉と化して消えてしまった。


「火の鳥が切られた……!?」


「ふふっ。このナイフ、魔力が豊富な地域から採れた鋼で造られてるんです~!だから杖の代わりにだってなりますし、魔術だって加護だって簡単に切れちゃうんですよ~!」


「ああー……これは……どうすれば……」


「じゃあ私、ちょっと本気出しちゃいますね~!」


「防御を……!透き通り、流れる宝玉よ!降り注げ!」


「そぉ~れっ!はぁいっ!」


「【浸水隕水(ヌラッセ)】!」


 より疾く、より強い斬撃。


 俺は巨大な水の塊を降らせ、それを壁とすることで、何とか防ぎ切ったが……これを何回も防ぐ自信は無い。


「あら~。これも防がれてしまいました~。それじゃあ、必殺技……見せちゃいましょうか~!」


「必殺技……!?」


「そうです~!これでも、元・天使だったので~!」


「透き通り、流れる宝玉よ……」


「【断辻(タチツジ)】~!」


 瞬く間の出来事だった。


 俺が構えた右腕は風を感じる間も無く、その袖だけが綺麗に斬り裂かれている。


 そして背後へ視線を移すと、そこにはただ、ナイフを鞘に収めるシャルラ先生。


 どうやら、俺は負けてしまったようだ。


 腕輪も肌も傷つけず、ただ、制服の袖だけを真っ二つに切り裂かれたのだ。


 実戦であれば、間違いなく腕輪ごと右腕が飛んでいたことだろう。


 完敗である。


「……ま、参りました」


「うふふっ。ありがとうございました~!珍しい魔術、いろいろ見せてもらって楽しかったですよ~!袖は後で縫ってあげますね~!」


「ありがとう、ございます」


 勝てるとは思っていなかった。


 しかし魔術的な効果をもつとはいえ、ナイフと戦闘技術だけでここまでボコボコにやられてしまうとは。


 一撃も攻撃を当てられなかった。


 クルピアちゃんに鍛えられたとはいえ、俺もまだまだである。


「じゃあ、教室に戻りましょうか~!もうすぐ、次の講義も始まりますし~」


 そして。


「あのマリナ・シャルラに勝負を挑むとは。無謀なことをするのう」


「シャルラ先生、やっぱ強かったのかー!?」


「うん、とんでもなく強かった。ボロ負けだった」


「当たり前じゃ。妾でも警戒するわい、あんなバケモン」


「へぇー!アタシも戦ってみてぇなぁ……」


「やめておけ、後悔するぞ」


 模擬戦のことをイロハ(クルピア)ちゃんとベルリナちゃんに話したところ、俺はどうやら、かなり無茶な勝負をしていたようだと判明したのであった。

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