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「杖持たず」の旧式魔術師 〜機械音痴は手動の魔術で時代を追い抜く〜  作者: 最上 虎々
第三章 王都の伝説と最高位魔術師

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第二十二話 人形使いのお気に入り

 入学式翌日、二コマ目の講義。


「プラティエさァん!ちょォッと良いですかァ!」


 俺、イロハ(クルピア)ちゃん、ベルリナちゃんの三人で横に並んで、必修である数学の講義を受けている最中に、教室へ入ってきて俺の名を叫ぶのは、この男。


「じゅ、授業中に何ですか、コレディッカ先生」


 入学式に乱入してゴーレムを乗り回したでお馴染み、魔術師トリャーズマ・コレディッカさんである。


「何ですかじゃあないでェす!アナタ!入学式でワタクシのゴーレムを吹き飛ばしたじゃあないですかァ!」


「はあ、まあそうですけど」


「あの魔術!すンごい威力でしたァ!ワタクシ、アナタに興味が湧いて湧いて仕方ないンですよぉ!今すぐ、ワタクシの研究室に来て下さいィ!」


「ちょ、授業ちゅ」


「特例でェす!ちゃんと許可も取りまァした!昨日は大目玉を見ましたかァらねぇ!」


「そ、そうですか……」


 魔術師トリャーズマの勢いたるや、乱気流が如くである。


 数学の先生も、すっかり諦めたといった様子で、俺に視線を送ってきた。


「何じゃ。妾の友達を褒めてくれるのは結構。それに、許可を取っただけ殊勝じゃろう。じゃが、勝手に連れて行くのはどうかと思うそ」


 口調を変える訓練の成果は、散々であった。


 逆に不自然な口調で身分を暴かれる訳にもいかないため、「わよ口調」は諦めることにしたのである。


 そんなイロハ(クルピア)ちゃんが助け舟を出してくれた。


「こぉれはこれはァ、イロハ・テレジアさァん!アナタにも興味が湧いていたところでェしたァ!ご一緒にどうでェすかぁ?」


 しかし、魔術師トリャーズマは止まらない。


 俺どころか、イロハ(クルピア)ちゃんまで連れて行こうと、更に距離を縮める。


「光栄じゃが、後にしてくれんかのう。それと、プラティエを連れていくのも、じゃ。序盤も序盤で、コイツだけ授業にいなかったせいで、必修の数学さえ修められなかったら、責任を取ってくれるつもりかのう?」


「ムムムゥ……良いでしょう!この講義は仕方あァりませェん!ですがァ!今は二コマ目、この後は昼休みですねぇ?」


「そ、そうですけど」


「昼休みに来い、とでも言うつもりかの」


「ご名答ォ!食事のついでに、談義を交わしましょぉぉう!……扉の前で待ってますヨ」


 そして、魔術師トリャーズマは扉をバタンと閉めるのであった。


「……ぜーんぜん反省してねーみてーだな、あの先生」


「そうみたいじゃな」


「あの表情は……この後怖いなあ」


 それから数十分後。


 講義が終わると同時に、俺とイロハ(クルピア)ちゃんは窓から魔箒を用いた「飛行(フワゥリ)」で逃げようと、窓枠から足を乗り出そうとする。


 しかし。


「そんなことだろうと思いまぁしたァ!逃しませんよォ!行きなさぁい!我が特性スピネラの魔術、見せてあげましょォう!【編み編み魔導人形(ウィッカーマン)】!」


 木で組み立てられた魔導人形は俺達を体内に取り込み、逆向きに魔力防壁を張ることで、それは歩く檻の体を成した。


 前門のコレディッカ先生、後門のウィッカーマンである。


 そして、「ウィッカーマン」と名のついた魔導人形は何も言わずに、俺達を研究棟の三階に在る一室へと運んでいくのであった。




 それから数分後、トリャーズマ研究室。


「ようこそ、と言わんばかりの料理ですね」


「昼ご飯には十分過ぎるくらいじゃな」


「うぅんン!おっしゃる通ォォォりでェす!ようゥこそ、まさによォォォこそォ!ここにある物は好きに食べてくださァい!食べながらで良いので話をしましょうぅぅぅ!」


 私用で学生を拐うのはどうかと思うが、相応に俺達をもてなす気はあるようだ。


「手動魔術の使い手!実に素晴らしぃぃぃ!今のォ時代に、現代魔杖を積極的に使わない魔術師がいィたとはァ!」


「フン。確かに、そのようじゃがのう」


「えぇ、えェそうですともォ!ワタクシ達の世代でさえ、現代魔杖を用いていた人が大半でェしたからねェ!」


「そうですか……。でも、わざわざ俺達を研究室に、それも拉致まがいの事までして、何で連れてきたんですか?まさかそれだけの理由で、こんな強引な手段に出た訳じゃない、ですよね?」


「エ?」


「「え?」」


「いやぁ?それだけ、ですけどォ?今時珍しい、《《若い》》手動魔術の使い手と、魔術の話をしたかっただけでェすよぉ?」


「そんなバカな」


「それだけのために、あんな大掛かりな人形を呼び出したのか……不安になってきたわい」


「いやいやァ。これしきのこと、日常茶飯事でェすよォ」


 どうなってんだ、この学校。


 よく国も認可を出しているものだ。


 それとも、魔術師の社会とは、そういうものなのだろうか。


 恐ろしや、魔術界隈である。


「……じゃあ、しますか。魔術の話」


「仕方ないのう。このまま黙ってても、帰してはくれないじゃろうしのう」


 イロハ(クルピア)ちゃんの力であれば、力づくで帰ることも出来るだろうが……穏便に済ませるためには、ここで話に付き合う他無いと、彼女も察したのだろう。


 俺達は大人しく料理をつまみながら、得意な魔術やらの話をして、昼休みを終えたのであった。

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