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「杖持たず」の旧式魔術師 〜機械音痴は手動の魔術で時代を追い抜く〜  作者: 最上 虎々
第二章 魔術学院へようこそ

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第二十話 入学式後の模擬戦闘

 それから入学式は無事に終了した。


 校長にしてパルグレフ魔術学院最強クラスの魔術師であるヘンリー・ポトマックによる挨拶と、名だたる魔術師によって構成された教授陣の紹介があり、その中には、杖を触れないように両腕を縛られて口にガムテープを貼られた、魔術師トリャーズマの姿もあった。


 その後、俺達は事前に伝えられていた一年B組の教室へ向かう。


「なあ!アレ、どうやったんだ!?」


「あんな魔術、発売されてたっけ!?」


「あれを満足に使うだなんて、あなた何者!?」


 すると案の定、クラスでは俺とクルピアちゃんの席を囲むように人だかりができてしまった。


「えーっと、満足にも何も、手動でしか魔術は使えないし、発売は多分してないし……」


「ええ?どういうこと?」


「そういえば杖持ってなかったような……」


「手動魔術!?おじいちゃんの友達が使ってたような……」


「二人ともそうなのー!?」


「そうわよ、私達、手動魔術の使い手なの」


「何なら俺は手動魔術しか使えないし」


「私は現代魔杖も使えるがの……手動の方が楽なのわ」


 もう無理があるってその口調。


「なあなあ!俺と一戦、手合わせしてくれよ!」


「私も!一度、手動で魔術使う人と戦ってみたかったの!」


 そして、戦魔術師志望なのか、バーサーカー達が次々に手合わせを申し込んでくる。


 しかし、そんな彼らを押し退けて、一人の男が俺の机を両手で叩いた。


「……まずは、僕と勝負してもらいましょうか。きっかけはもう十分でしょう?」


 バルディオ・ラルグス。


 名家の一人息子だとかいう少年である。


 金髪に翡翠色の目を持つ彼は、その整った顔立ちからは想像もつかないほどに嫌味ったらしい口調で、わざわざ反り返ってまでこちらを見下した。


「バルディオ・ラルグス君か。……そうだね、まずは君と戦おうか」


 整った顔立ち故、黙っていればイケメンだというのに。


 この思い上がった根性に、一度お灸を据えてやりたいものである。


 俺とバルディオは入学式の後、教室でのガイダンスが済んですぐに、審判兼試合の見届け人として、イロハ(クルピア)ちゃんとベルリナちゃん、そして観戦を希望するクラスの皆を連れて、闘技場へ向かった。


 普段は戦闘に使う魔術の訓練で使う場所だが、空いている時間なら、すぐに使えるらしい。


「受付の人ー?今って使えますか?」


「あっ、はい!闘技場の利用をご希望ですよね!今なら空いてるので使えますよ!」


「ありがとうございます!」


 俺は受付の人に許可をとり、バルディオを闘技場の右端へ立たせる。


 そして俺は左端へ立ち、向かい合った。


「随分とすんなり闘技場に案内してくれたじゃありませんか。てっきり逃げるかと思っていましたよ」


「まあ、最初に戦うなら君かなって」


「フン、よく分かってるじゃないですか。さて、ここで賭けたいものがありましてね」


「賭けたいもの?戦いで何かかけるってこと?」


「ええ。僕が勝ったら、貴方のハーレムを頂きます。その代わり、僕が負けたら、実家から僕のハーレムを二人……いや、三人、お送りいたしましょう。それでどうです?」


「何を言ってるんだ君は」


「だから君のハーレムを」


「俺のハーレムじゃ無いって」


「……は?」


「だーかーらー。俺はハーレムを築いてなんかいないんだって!」


 勘違いも甚だしい。


「う、嘘だろう?男女に友情なんてあり得る訳がない、どうせどちらかがどちらかを好きなんだろう?」


 言われてみれば、俺はクルピアちゃんを好きだし、ベルリナちゃんは俺のことが好きだと言っていた。


 しかし、俺はハーレムを築く気も無いし、築かれても困ってしまうだろう。


「好きだよ。好きだけど」


「なら!」


「俺は、ハーレムのために女の子と関わってる訳じゃない」


「……え?」


「あと、ついでにもう一つ言っておく」


 俺は腕輪を構え、体内の魔力を腕輪に回す。


「綺麗事を!」


 それに気付いたバルディオもまた、杖を構えた。


「ハーレムだろうと何だろうと、女の子は物じゃない」


「うるさいッ!【メルティ・ゴーズ・ヘルファイア】!」


 やはり現代魔杖を使っているためか、魔術の発動はバルディオの方が早い。


 しかし、流星群のように散りながら飛びかかってくるドス黒い炎が俺に着弾する前に、腕輪が輝き始め、俺の魔術が発動した。


「【(ヌラッセ)】!」


 至近距離で受けるならともかく、ある程度距離が離れていれば、何かを散らせる魔術はせいぜい、《《ただの弱い一発か二発にしかならない》》。


「まだまだ!【ヘブンズアロー・タイフーン】!」


「【強化(ググーン)】!やっ!はっ!そらそらっ!」


 続けて、バルディオは矢の雨を降らせてくる。


 しかし、これも強化した身体で殴ったり蹴ったりするだけで、簡単に弾けてしまい、避けるにも守るにも困らない攻撃魔術だった。


「何故、そんなキザなことを言えるんです!」


「女の子は物じゃないって?そりゃそうだからでしょ」


「所詮!女など、僕の家に……ラルグス家に惹かれてくる者ばかりで、僕そのもののことなど、どうでも良いんですよ!僕のハーレムだって、僕そのものを愛してくれている人などいるものか!皆、僕のことは『ラルグス様』と呼ぶ!誰も『バルディオ』とは呼ばない!女は所詮、僕の家に惹かれているだけなんですよ!」


 確かに、名家生まれ故にモテることはあるだろう。

 そして、名家の生まれ故に、相手の好意を信じることができなくなってしまったと、そういうことだろうか。


「……そうか。名家は名家で大変なんだね」


「ええ!所詮、女はスペックしか見ていないのですよ!だから僕は開き直った!ハーレムを築いて、結婚と財産をチラつかせながら、良いように使ってやることにしたんです!」


「でも、全員が全員そうと決まった訳じゃ無いと思うんだ」


「何を言い出すかと思えば……庶民の幻想は大概に……」


「バルディオ君は、人の心を読めるの?意外と人が人を好きになるきっかけって、よく分からないものだよ」


「いいや、分かるね!ラルグス家の僕はモテている!顔が悪いとも思わないしね!でも、それだけだ!」


「……まあ、それを狙う人もいるとは思うけど。でも、もしバルディオ君を好きになったきっかけがスペックだとしても、その女の子がハーレムに残り続けてるうちに、バルディオ君そのものに愛着が湧いてしまう可能性も無いとは言えなくない?」


「そ、そんな、ことが……!あり得ない、あり得るハズが……!」


 バルディオは頭を抱えながら天を仰いだ。


「あと、一つだけ……。好きな女の子がいる俺から、一つだけ、アドバイス」


「はぁ……?何を」


「戦闘中の余所見は厳禁だよ」


「は」


「【火柱(モエーロ)】」」


「ほぎゃぁぁぁぁぁ!」


 俺は足先から地面に這わせていた魔力をバルディオの足元で爆発させ、火柱を発生させる。


 みるみるうちにバルディオの魔力防壁は焼けて削れ、そして火柱が鎮まると同時に、それは粉々に砕け散ってしまった。

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