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第154回:唐帝国高宗の時代

ミニコラムの続きです。

 とう二代目皇帝太宗たいそう李世民りせいみんは、国の建国に多大な貢献をしました。さらに対外戦争にも勝利を重ねます。中華帝国としての領土を広げ、支配地域ははるか西域にまで及びました。

 そして、李世民りせいみんは優れた政治家を登用して、唐を世界帝国に、首都の長安ちょうあんを世界都市に成長させます。

 そして、李世民りせいみんの死後は、彼の第9子が高宗こうそうとして帝位に就きます。高宗こうそうは、父とは違って性格的にはパッとしなかったようです。そもそも、高宗こうそうは病気がちでもありました。このため、高宗は政治において主導権を発揮することはありませんでした。

 即位初期は外戚の長孫無忌ちょうそんむきが実権を握ります。長孫無忌ちょうそんむきは唐建国の功臣として功績第一位の名臣でした。この為、李世民りせいみん死後の高宗を巧みに補佐します。

 そして、長孫無忌ちょうそんむきの死後は皇后の則天武后そくてんぶこうが補佐を行うようになります。平たく言うと奥さんに実権を握られたのです。

 若き日の則天武后そくてんぶこうはそもそも高宗の父である李世民りせいみん側室そくしつでした。高宗は自分が頼りない性格だったので「グイグイ引っ張ってくれるアネゴ肌の女性」が好みでした。

 この為、父の側室だった則天武后そくてんぶこうが好きになります。言うまでもなく、則天武后そくてんぶこうは気の強いアネゴ肌の女性でした。そして、父の死後に則天武后そくてんぶこうを皇后に迎えるのです。

 本来、中華思想では「父の妻は母親同然なので自分の妻に迎えるなどは言語道断」という考え方です。それに対してとうの出身民族である鮮卑族せんぴぞくの思想では「父や兄の妻を未亡人にするのは可哀そうだろ?自分の母親じゃないなら後添えとして側室にして面倒見なさいよ」という考え方でした。鮮卑族せんぴぞくは元々は北方騎馬民族でした。だから、その時の思想が今でも残っていたのです。

 高宗は父の側室を自分の妻にしてもいいのか悩みます。しかし、権力を望む則天武后そくてんぶこうの強い後押しもあり、いろいろと理屈をつけて彼女を皇后に迎える事に成功しました。

 なお、高宗の治世は先代太宗が育て上げた人材たちに支えられた事で大きな失政もありませんでした。これは補佐した則天武后そくてんぶこうの政治力も優れていた事も大きな理由だったのです。

 ちなみに、高宗の時代に朝鮮半島で百済くだら新羅しらぎの二国が争いを行いました。当初は新羅しらぎが劣勢でした。しかし、唐の支援を得ることで新羅しらぎが起死回生します。百済くだらは滅んでしまいます。

 しかし、百済くだらは生き残った皇族が「国の再興をしたい」と願います。百済くだらは仲の良かった倭国わこくに「助けてくれ。兵を出してくれ」と泣きつきます。倭国わこくとは日本の事です。

 百済を支援するため東国の倭国わこくが介入する事になりました。思わぬ援軍が来たために、とう新羅しらぎを再度支援することになりました。この結果、「白村江はくすきのえの戦い」という決戦が行われます。

 倭国わこく軍の支援で百済くだらは勢いを盛り返します。ですが、百済くだらはこの期に及んで、内部抗争による皇族間の殺し合いを始めてしまったのです。国の名前の通り「くだらない」争いでした。

 倭国は焦りました「しまった、このまま百済くだらがやらかして負けたら我が国はエラい事になる」仕方なく倭国わこくは4万もの援軍を送り込みました。当時の倭国わこくからすると相当無理をした兵力でした。

 この当時の倭国の指揮官は中大兄皇子なかのおおえのおうじという人物でした。後に「天智天皇てんじてんのう」と言われる事になる人物です。激戦の結果、日本・百済くだら連合軍は負けました。つまり、とう新羅しらぎ連合軍が勝利をおさめたのです。

 日本にとっては国家の威信をかけた一大事でしたが、唐の皇帝高宗にとっては「勝ったか。ご苦労」で済む話でした。唐にとっては「やっと朝鮮半島の先端部分を安定させた。いよいよ本来の目的の高句麗征服だな」というスタンスの出来事でした。

 目的を達成するための準備段階だったのですね。その後、幸いな事に高宗の治世はそれ以外に大きな戦乱もありませんでした。治世後半になると高宗は怪しげな薬を服用するなどで健康を害します。そして政治の実権は完全に皇后の則天武后そくてんぶこうに掌握される事になります。中国史唯一の女帝である武則天ぶそくてんの誕生です。

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