不機嫌な婚約者
室生 初音 : 地方の芸大4年生
室生御影: 初音の婚約者 霊的能力を持つ
ハザマ様 =室生 透青
室生家の巫覡をしている。
中の人は月島秀青で芸大の助手をしていた
月曜日、本家の方へ出向くと、御影様はめちゃくちゃ不機嫌だった。
「一週間の間、来なかったよな? しかも、意識が俺に向いていなかった」
ぎくっとした。
意識の方向までわかるとは……。
「う、浮気なんかしてませんよ! 貞操帯もちゃんと着けてますし!」
「体の浮気をされる方が、まだマシかもしれない。それは欲望の排出で済む場合もあるからな。だが、心の浮気は本物の浮気だからな」
怒らせちゃった〜。 私はこの状況を打開しようと、話題を変えることにした。
「あっ、あの。御影様はいつベトナムへご出発ですか? お見送りに行きますから……」
「なんだ? 俺に早く日本から出て行って欲しいのか?」
し、しまったーーー! 完全に火に油を注いじゃったぁ!
「貞操帯の鍵も、予定通り俺が持っていってやる! 困ればいい!」
「うう……今日は御影様の言うこと、なんでも聞きますから機嫌直して下さい」
「……じゃあ、一体何があったのか、正直に話せば許してやる」
――それで、ここ最近あった事を正直に話した。
大学三年生に編入してきた男性がハザマ様の異母兄弟で、彼のアトリエに誘われたこと。
そして彼の父親が、有名な美人画家の月山青湖だと知ったこと。
少し私に気があるようなそぶりを見せたが、それは多分、彼が月島家とのパイプ役を欲しかったんだと思う……など。
それを聞いて、御影様は厳しく釘を刺してきた。
「月島家のパイプ役が欲しいんだろうって、そこまでわかってんなら、それ以上は余計な感情を持つんじゃないぞ? いいな? 初音は騙されやすいんだからな」
「うう、できるだけ誘惑に負けないよう、がんばります」
「できるだけじゃ、ダメだ! 絶対に誘惑に負けるなよ。俺はお前が傷つかないように言ってるんだぞ」
「でも、朴訥な方で、そんな不誠実な人には見えなかったんですけど……?」
御影様は呆れたように吐き捨てた。
「それだからお前は危なっかしいんだ。いいか、あのハザマの異母兄弟だぞ? 大人しい羊であるわけがねーだろ。女たらしで、利用できるものは女でも道具として使うに決まってるじゃねーか!」
――御影様がそこまで言った時、襖がすーっと開いて、ハザマ様が顔を出した。
「なんか凄く腹が立つが、御影の言う通りだ。あ、私は刺されてからすっかり改心したから、信用してもらってもいいぞ?」




