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余次元住まいのハザマ様! part6 ― 業深き画家の家系 編 ―  作者: 山桃


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初音、耳が孕みそうになる

『修復学』の授業後、雨宮さんに声をかけられた。

「画家のアトリエって興味あります? 室生さんって工芸分野だから、油絵画家には興味ないかもだけど」


「いいえ、凄く興味あります。私が絵を描くようになったのも、油絵に興味を持ったのがきっかけなので」


「良かった。じゃあ、一緒に行きましょう」


連れて行かれたのは、雨宮家だった。

洋館造りのガラス張りで陽がよくあたるアトリエ。薔薇やさまざまな花が植えられていて美しい場所だった。テレピンの匂いが、アトリエそのものの雰囲気を醸し出している。


「ご家族が絵描きさんなのですか?」


「ええ、父が画家で。兄の秀青からは聞いていなかったのですか?」


「やはり、秀青さんとご兄弟だったのですね?秀青さんは、その話題を敢えて避けて言わなかったんだと思います。」


「そうですね、月島家では父は苦しみの種でしかなかったでしょうから」


アトリエにはイーゼルに描きかけの一枚の絵が飾ってある。女性の絵だ。その他にも、花と女性が描かれている絵が何枚か置いてある。


「どこかで見たことがある……美人画が専門なんですね?」


「ええ。月山(つきやま)青湖(せいご)という画号で」


「あ、あの月山青湖!」


まさか、美人画で有名なあの画家が秀青さんのお父様だったなんて!


「実は、月島家って離婚してないんですよ。父があの家から出てそのまま帰らなかったので、離婚届を出していないようなんです。本当は僕は父の姓を受け継いで、月島青児という名前になるはずだったんですが……母の姓を名乗っています」


「複雑なんですね……」 なんとコメントして良いかわからない状態になった。


「あの、雨宮さんが私を誘った理由って、本当にアトリエを見せたかっただけなんですか?」


つまり、本当の目的を言って欲しい、と遠回しに聞いてみた。


雨宮青児は静かな声で囁くように言った。


「いいえ、貴女とお近づきになりたくて……」


私はもう、耳が孕(はら)むのを必死に堪(こら)える状態だった。 御影様、ごめんなさい。そして貞操帯は御英断でした。


*****


一緒に紅茶を飲みながら、彼の経歴を聞く。

彼の通っていた高校は少し変わっていて、卒業後も専門的に勉強できる「専攻科」という場所があるらしい。


そこで大学二年分の単位を取得できたため、この芸大の三年に編入してきたのだという。


だから、兄である月島秀青が生きている間にこの大学で会いたくても、結局会えずじまいだったそうだ。


彼は少し困ったように微笑みながら言った。 「この大学に入ってから、兄の名前で呼ばれたり、『月島さんの兄弟?』と同じ質問を何度もされてしまって……」


「ふふっ、私も思わず見入ってしまいましたもん」 と、私は笑って伝えた。


「あの、雨宮さんって長い髪で目を隠すようにしてますけど……ひょっとして、ストーカーとか女難を避けるための対策ですか?」


「……そうですね。人と関わりたくないのに、向こうから強引に押しかけてくる人が苦手なんです。できるだけ、目を合わせないようにしています」


彼は静かにそう答えると、ふと私の胸元へ視線を落とした。


「そういう室生さんだって……その首に掛けている指輪で、男性を寄せ付けないようにしているのでは?」


「私には男性なんてほとんど寄ってこないので、そういうわけでは……ただ、指につけていると絵の具などで汚れてしまうので、首に掛けているだけです」


その後は、好きな絵や芸術について語り合った。御影様と話すのとはまったく違う充実した時間を過ごし、私はアトリエを後にして帰路についた。







 

 

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