二つの指輪と貞操帯の鍵
ハザマ様と惟光さんが、ずぶ濡れになってまで見つけ出してくれた婚約指輪。
だからどうしても捨てられず、鎖を通して首にかけている。 御影様と私のとで、合わせて二つ。
同級生には「二つもぶら下げてどうしたの?」と聞かれるが、「自分の経験値を皆さんにお知らせしようと思って」などと強がって誤魔化している。
婚約破棄されたのだから、もう貞操帯はしなくていいと思ったので、美麗さんに「鍵を渡してほしい」と連絡を入れた。
しかし、美麗さんからの返信は絶望的なものだった。
『鍵は御影様にお渡ししたわ。秀青さんが
「そうすれば丸く収まる」とお話しされていたからよ』
(なにぃーーー!? 終わった、私の人生終わったわ……今度は貞操帯の鍵を池に放り込まれるわ……!)
がっくりと肩を落としていると、同級生が声をかけてきた。「室生さん、お兄さんが来てるよ! ほら、あそこ!」
以前、御影様が同級生に自己紹介した時、私と同じ「室生」姓だったため、兄だと勘違いされたままなのだ。
「え? 何処に?」
私が視線を彷徨わせると――ギャラリーの奥、蒼穹大賞受賞作の目の前で、ぷるぷると震えながら絵を鑑賞している御影様の姿があった。
(やっば、逃げよう!)
踵を返そうとした瞬間、彼はくるりとこちらを向き、完璧な営業スマイルで言った。
「初音、探したぞ?」
こっわ。営業スマイル、こっわ。
「あ、初音ちゃんのお兄さん、お久しぶりです」
「やあ、いつも初音と仲良くしてくれてありがとう!」
無邪気な同級生が、さらなる爆弾を投下する。
「この蒼穹大賞の絵のモデル、初音さんですよね?」
こらこらこらこら、余計なこと言うんじゃない。
「ははは、初音。随分と破廉恥なことやってんだな」
御影様、絶対、心の中では一ミリも笑ってないやろ……。
「初音、家まで送ってやるよー」
彼は努めて明るく、恐ろしいほど爽やかに振る舞っていた。
「は、はい。ありがとうございます……」




