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余次元住まいのハザマ様! part6 ― 業深き画家の家系 編 ―  作者: 山桃


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雨宮青児の本性

甘い痺れの余韻で私はぐったりとして横になったまま、深く息を吐いた。


彼は私の指に自身の指を絡め、恋人繋ぎをしたまま、静かな声で問いかけてきた。


「……室生さんの彼氏はもの凄く用心深いね。いつもこんな風なの?」


彼の声には、微かな苛立ちと興味が混じっていた。私は絡められた指先の熱を感じながら、静かに彼を見据えて答える。


「いいえ。彼は、雨宮さんをもの凄く警戒しているようです。当初、私にはその理由がわからなかったんですけど……今は、充分に理解しています」


「へえ?」


「私が月島家との繋がりが強いと知った途端、あなたは、すぐにアプローチしてきました。……多分、お父様の絵が欲しいんですよね?」


その言葉を聞いた瞬間、絡め合っていた彼の手からふっと力が抜けた。

沈黙のあと、彼はうつむき加減で笑みを浮かべゆっくりと顔を上げた。

そこに、あの儚げで大人しい青年の面影はなかった。


「…………君って、天然で何も考えていないお姫様なのかと思ってたけど。とても鋭いね」


冷ややかな光を宿した瞳に見下ろされながら、私は彼に告げる。


「私もあなたのこと、朴訥(ぼくとつ)で女性嫌いな人だと勘違いしていましたけど、違いますよね。生き延びるために、それこそ自分の容姿と絵の才能を武器に、なんでもしてきた人……ですよね?」


彼の目が、わずかに見開かれる。

私は頭の中で繋がったピースを、一つひとつ並べていった。


「画号と、本当に名乗りたかった名前……。あなたは『月島』と名乗れなかったから、月山(つきやま) 青湖(せいご)という父親の画号の影で自意識を満たしていた。青児(せいじ)という名前も、読み方を変えれば『セイゴ』と読めますし……」


「月山青湖の後期作品は、あなたが描いていた。……だから、月島家にある絵とここの絵では、タッチが違ったんだわ」


アトリエの空気が凍りついたように重くなる。

やがて、彼は自嘲するように唇の端を上げた。


「……この短い期間でよく見抜いたね。君が初めてだったよ。まるでエスパーみたいだ」


軽口とは裏腹に、彼の声には暗く重い感情が渦巻いていた。


「君にはわからないよ。ちゃんとした両親に大事に育てられて……だから、いつものほほんとした幸せそうな態度でいられるんだ。……凄くイライラする」


(ああ、またか……これを言われるのは、何度目だろう……)


そういう人たちは本質的なところで、ひどく似通っている。


不意に、彼は空いたほうの手で私の耳に触れた。彼は私の耳を優しく揉みながら、耳元で毒蛇のように囁く。

「で、どうするの? 世間に僕のことバラすの?」


物理的な距離の近さと、脅迫めいた言葉。しかし、私の心は不思議なほど凪いでいた。


「月島の家にも迷惑がかかりますから、そんなことはしません。……追悼展が終わり次第、私があなたから離れるだけで済むことだから」


突き放すようにそう告げると、彼の指先がぴくりと震えたような気がした。


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