第49話 自己紹介
放課後、俺と要が帰ろうとしていると、何やら教室の生徒達が窓に集まっていた。
「ねぇ、あの子どこ高だろ?」
「あの制服見たことある。確か私立の女子高じゃなかったっけ? お嬢様学校!」
「なんであんな格好してんだろ? もしかして……有名人?」
「つーかめちゃくちゃスタイル良くね? 髪きれ〜」
「なんだろーな」
「さあ? それより行こう、素直」
「ん、」
「よっ! 空木と神宮寺っ!」
靴箱で逆巻と合流して、俺達は自転車置き場に向かう。
徒歩通学の逆巻に合わせて、俺達も自転車を押して歩く。
すると、校門の前でみんな一様に振り向き、何かを確認して歩いていく。
何かあるのか? と思いながら校門をすり抜ける。
その時だった。
「あっあのっ!」
「んあ?」
逆巻が反応し、振り向く。
そこには真っ黒なサングラスと黒いキャップを被っている女子が立っていた。
制服が明らかに俺達の学校とは違う。
もしかして、さっきクラスの奴らが言ってたの、この子だったのか?
「なんやねーちゃん。俺達になんか用か?」
逆巻は若干の警戒を含んだ目で女子を睨む。
するとその女子は慌てたように声を上げた。
「あたしっ! あたしだよっほらっ……ひよりっ!」
女子がサングラスを外し、帽子を脱ぐ。
長いまつ毛に縁取られた桃色の瞳がこちらを見る。ピンクのグラデーションのかかった長い金髪が、サラッと広がった。
その瞬間、逆巻の大きな目がさらに大きく開き、わなわなと震える指で指さした。
「ひっひっ……ひよりちゃん!?」
「しっ」
姫川さんが人さし指を口元に添える。逆巻はハッとしたように口元を押さえた。
「とりあえず、どっか落ち着けるとこ、行こっか」
姫川さんについていってたどり着いたのは、高級ホテルのラウンジだった。
すっと背筋を伸ばし、綺麗な足取りで歩く姫川さんの後ろを、俺達はついていった。
隣を歩く逆巻が、妙にそわそわしながら耳打ちしてきた。
「おい空木っなんやここ、ごっつい場所やんけっ俺、そんなに金持ってへんでっ」
「……要」
声を掛けると、要が財布から何かを取り出す。
ブラックカードが要の指先できらりと光った。
「な?」
「こんのブルジョワジーめ……」
テーブルに案内され、俺達はふかふかのソファに腰を落ち着ける。
正面に座る姫川さんが、気まずそうにこちらを見た。
「あの……君たちそれで大丈夫?」
姫川さんが怪訝な顔をするのも無理はない。周囲もチラチラとこちらを見ていた。
それも仕方ない。俺達は野郎三人、ぎゅうぎゅうになりながら同じソファに座っていた。
「良かったら私の隣、一人来たら?」
「あ、じゃあ、お言葉に甘えて~……」
がしっ。
真ん中にいる逆巻が立ち上がろうとするのを、俺と要で腕を掴んで止めた。
「いや、いいんです。俺達……めっちゃ仲いいんでっ」
「そ、そうなんだ……」
飲み物が運ばれてきて、テーブルの上に置かれる。
帽子を被った姫川さんがアイスコーヒーを一口飲み、こちらを見た。
「ごめんね、急に学校に行っちゃって」
「いや、それは全然。でも……どうしてなのかは教えて欲しいです」
「……嬉しかったの。同い年くらいの能力者の子に会うの、初めてだったから」
「同い年くらいのってことは、大人の能力者には会ったことがあるんですか?」
「うん。スカウトされたの。エデンっていう組織に」
姫川さんの口から出た言葉に、俺達は息を呑む。
要が問いかけた。
「姫川さんは、エデンの人間なんですか?」
「あっ違うよっ! 断ったの。なんか、怖かったから……」
「スカウトということは、エデンの人間が姫川さんに接触してきたってことですよね? それ、どんな人だったか、詳しく教えて頂けますか」
要の問いかけに、姫川さんが思考するように目を伏せる。
ドキドキしながらそれを見守っていると、姫川さんが口を開いた。
「それが……よく、覚えてないの」
「覚えてない?」
「うん。確かに誰かと話したはずなのに。どんな顔の人だったか、男の人だったか、女の人だったか……それすらも、思い出せなくて」
「……能力か」
要が確信したように呟くと、姫川さんがおそるおそる問いかけた。
「あの……君達の名前と、能力を教えてくれない? さすがに自分の能力だけ明かしておくの、ちょっと怖くて」
「そうでしたね。俺は要。神宮寺要です。能力は治す能力。金髪の方が逆巻隼人、受けた力を変換して返す能力。そして、この中で一番強力な力を持ってるのが──」
要が俺に視線を送る。それに応えるように、俺は姫川さんを見た。
「俺は空木素直。能力は壊す能力で、実は……エデンに命を狙われてるっぽい、です」
本作は【火・木・土】更新予定です。
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