第九十六話 めんどくさいほど好きになる
放課後 ―
校門を出ても琴葉はずっと不機嫌。
敦「……まだ怒ってんの?」
琴葉「怒ってねぇ」
敦(怒ってる)
歩幅は合っている。
でも、手が遠い。
敦は一瞬、指先を動かす。
触れるかどうか、迷ってやめる。
敦(今は違う)
信号待ち。赤
風が吹く。
琴葉の前髪が揺れる。
敦「今日のお前」
琴葉「なに」
敦「……めんどくせぇ」
琴葉「はぁ!?」
琴葉が顔を上げ、一瞬だけ視線が合う。
敦「……可愛い」
今度は逸らさない。
琴葉は固まる。
琴葉「……どこが」
敦「全部」
言ってから、自分で後悔する。
敦(言い過ぎた)
琴葉「……調子乗るな」
声は弱い。
青に変わる。
歩き出す。
でも今度は、ほんの少しだけ
肩が触れた。
わざとか偶然か、分からない程度に。
敦は何も言わない。
琴葉も何も言わない。
曲がり角。
琴葉「……じゃあな」
敦「……おう」
琴葉は歩き出す。
三歩。
止まる。
振り返らないまま、
琴葉「……明日も昼、一緒な」
敦は一瞬遅れて笑う。
敦「命令かよ」
琴葉「確認だよ」
少し間。
敦「……当たり前だろ」
琴葉は小さく息を吐いて、そのまま曲がる。
敦はその背中を見送りながら、
敦
……けど
敦(……好きだわ)
小さく、独り言。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
めんどくさい方が、だいたい本物です。




