第九十二話 その選択は俺じゃない
夜。
敦の部屋。
ベッドに横になりながら、
敦は天井を見つめたまま、目を閉じなかった。
明かりは消しているのに、目は冴えている。
敦(……考えすぎ、か)
そう思おうとしても、浮かんでくるものは止まらなかった。
女型の時の琴葉。
手をつなぐのも、腕を組むのも、当たり前みたいに自然だった。
近づいても、距離を取られたことはない。
一方で、男型の時。
外ではベタベタしない。
触れる時も、必要以上に踏み込まない。
それは拒んでいるからじゃない。
無意識のうちに、外用の距離を選んでいる。
敦(……違うんだよな)
ただ、
気づいたら、そうなっている。
そう言うしかない感じだった。
――男の修業の時のことを思い出す。
勢いだけで告白した、あの瞬間。
事『……この姿の時に言うの?』
拒まれた言葉じゃなかった。
けれど、少しだけ戸惑いが混じっていた。
――今の自分に向けた言葉なのか。
確かめるみたいな、問いかけ。
そして、「正式に告白する」と伝えた時。
琴葉は、何も言わずに――女型で、そこにいた。
敦(……たまたま、じゃないよな)
シーツを無意識に掴む。
……答えを出すには、まだ早い。
それでも、偶然だと片づけるには、胸に残りすぎている。
母の言葉が、ふと浮かぶ。
『琴葉自身が、迷いながら選んだ結果よ』
敦は、ゆっくり息を吐いた。
敦(……無意識、か)
選んだ覚えはない。
決めたつもりもない。
それでも――
琴葉は、安心できる時に、そうなっている。
敦
敦(……俺が、決めちゃいけない気がする)
胸の奥が、じんわり熱くなる。
名前を呼びそうになって、飲み込む。
まだ答えは出ていない。
ただ、間違えないように――
そう思いながら、目を閉じた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
決めるのは本人です。




