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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


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第八十八話 隠す気ゼロだとこうなる


朝。


カーテン越しの光が、やけにまぶしい。


昨日の事が頭に浮かぶ。


途端に頬に熱が上がる。


頬を手で隠しながら


敦(……今日……どんな顔で)



ガチャッ!!!


扉が爆音で開いた。


琴葉「おはよーーーーー!!!!!!」

 

声量が朝じゃない。


敦「声がでかい!!!

近所!!近所起きる!!

てか、なんでうちに居る!?」


ドタドタと駆け込んできたのは、

男型・テンションMAX・ブレーキ不在の琴葉。


琴葉「敦!!!!!!

聞いて!!!!!!

俺さ!!!!!!

恋人!!!!!!」


敦「知ってる!!!!昨日言った!!!!」


琴葉「違う!!!

“知ってる”と“実感してる”は別!!」


琴葉「恋!人!!

こ・い・び・と!!!!」


敦「喜び方が昭和のアイドル!?」


琴葉は満面の笑顔。


その様子を見て、敦は——

思わず、笑ってしまう。


敦(……めちゃくちゃ元気だ) 


昨日までの不安も、慎重さも、

どこかに吹き飛ばす勢い。


敦「……そんな嬉しいか?」


琴葉「当たり前!!!!」


琴葉「……あ」


敦「?」


琴葉、急に真顔になり、

敦の顔を両手で挟む。


琴葉「今の顔」


敦「なに!?」


琴葉「落ち着いてるフリしてるけど」


琴葉「めちゃくちゃ嬉しい顔してる」


敦は一瞬だけ視線を逸らし、

観念したように言う。


敦「……そりゃ、嬉しいに決まってる」


琴葉「へへっ」


琴葉「はーーー!!

朝から楽しい!!!!」


敦「テンション高すぎだろ……」


琴葉「だってさぁ」


琴葉は、少しだけ声を落として言う。


琴葉「昨日から、

ずっと胸が軽いんだ」


敦「……っ」


敦「……それなら、良かった」


琴葉「な、敦」


敦「ん?」


琴葉「今日さ、

一日ずっと楽しい」


敦「……断言するな」


琴葉「だってもう楽しい!」


敦は小さく笑う


ああ


敦(こんな朝が、続くなら)


敦(——悪くない)



 

朝食の食卓。


敦母は鼻歌まじり、

敦父はいつもなら新聞——のはず。


敦(……なんだこの布陣)


テーブルには、


敦母(すでに全てを察している顔)


琴葉母(笑顔が危険域)


琴葉父(背筋ピーン、戦場の顔)


敦父(新聞をめくる手が止まってる)


そして、

その中心に——


テンション高すぎ琴葉と自分


元気。


元気すぎる。


敦父「……朝から元気だね」


琴葉「はい!!

人生最高の朝なので!!!」


敦「言うな!!!

なんで言う!!!」


——次の瞬間。


敦母&琴葉母

「「あらぁ?」」


来た来た来た来た!


琴葉母「人生最高、ですって」


敦母「昨日は何か“良いこと”があったのかしらねぇ?」


声が柔らかい。

柔らかすぎて怖い。


琴葉「ありました!!!!」


敦「待て!!

ストップ!!

赤信号!!」


琴葉母、にこっ。


琴葉母「琴葉?」


琴葉「はい?」


琴葉母「今、“敦くんの隣”に座ってるわよね?」


琴葉「はい!!恋人なので!!!」


敦「全面降伏早すぎ!!!!!」


——母親ズ、完全に勝利の笑顔。


敦母「言質、とれました」


琴葉母「はい、確定」


敦母「……ふふ」


敦父「……あー……やっと言ったのか」


琴葉父「…………」


琴葉父、ゆっくりと箸を置く。


琴葉父「……正式に?」


敦「はい、正式に」


敦父「昨日までが“幼馴染”?」


敦「昨日の夜に昇格しました」


敦母「昇格……」


敦母の肩が揺れる。

 

琴葉父「……なるほど」


琴葉父、深くうなずく。


琴葉父「では確認するが」


敦(来た、父のターン)


琴葉父「……手は?」


敦「……」


敦、横を見る。


琴葉は一瞬だけ敦を見返し――

すっと、目を逸らした。


琴葉父「……なるほど……今ので十分だ」


敦(なぜ!?)


敦母が口元を手で隠す。


敦母「……ふふっ、

言葉より分かりやすいことってあるのよね」


母親ズ、完全に楽しんでいる。


敦母「でもまあ」


敦母「昨日までとは、顔が違うわね」


琴葉母「ええ」


琴葉母「“頑張ってる顔”じゃない」


琴葉、きょとん。


琴葉「そう?」


敦母「ええ」


敦母「朝からずっと、自然に肩が向いてる」


敦、固まる。


敦(無意識!!)


敦父「……それは、良いことだな」


静かにそう言われて、

敦は少しだけ救われる。


琴葉父「無理のない距離でいなさい」


敦「……はい」


琴葉「はい!!」


母親ズ、顔を見合わせて——


同時に。


敦母&琴葉母

「「可愛いわねぇ……」」


敦「声に出すな!!!」


琴葉母「敦くん、ありがとうね」


敦「え?」


琴葉母「この子、今とっても安心してる」


敦母「ええ、本当に」


琴葉、少しだけ照れて、

それから満面の笑顔。


琴葉「えへへ」


……ああ


敦(守られてるな、俺)


(親にも、琴葉にも)


父親ズ「……ごちそうさま」


朝食の空気は、

甘くて、騒がしくて、

逃げ場がなかった。


ーーーー


子どもと母親が去った後。

向かい合って座る二人の父親。


敦父「……なあ」


琴葉父「はい」


敦父「率直に聞くぞ」


琴葉父「どうぞ」


敦父「——あの二人」


敦父「いつ“こうなると思ってた”?」


琴葉父「……“言う前からそうだった”ので」


敦父「……それな!!」


机を軽く叩く敦父。


敦父「俺ずっと思ってたんだよ!」


敦父「“あれで違ったら嘘だろ”ってな」


琴葉父「私もです」


敦父「……止める気は?」


琴葉父「ありません」


即答。


敦父「即答だな」


琴葉父「本人が“楽”そうでした」


敦父「……それな」

 

敦父「…………でも」


敦父「若い恋ってもっとこう……

探り合いとか、ぎこちなさとかあるだろ?」


琴葉父「……ありますね」


敦父「なのにあの二人」


敦父「もう自然じゃん」


琴葉父「……否定できません」

 

敦父「……父としての心構え、いるよな」


琴葉父「必要ですね」


敦父「例えば?」


琴葉父「……見ないふりをする覚悟」


敦父「……見ないふりも、楽じゃなくなったな」


琴葉父「経験値が要ります」


敦父「……修行か」


琴葉父「……難易度Sです」


一拍。


敦父「……もう始まってるな、それ」



ここまで読んでいただきありがとうございます。


全面降伏(幸福)です。

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