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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


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第七十三話 きっかけはそれだけでいい


キッチン。


フライパンの上で、パンケーキが静かに焼けている。


敦「……最近さ」


琴葉「んー?」


敦「料理する率、高くない?」


琴葉「そう?」


フライパンを揺らしながら、琴葉は首をかしげる。


敦「前は“食べられればOK派”だったろ」


琴葉「あー……」


少しだけ考えてから。


琴葉「弁当」


敦「……やっぱりそれか」


琴葉「一回作ったらさ」


敦「うん」


琴葉「“うまい”って言われて」


敦「……」


琴葉「だから“もう一回くらい作ってもいいかな”って」


パンケーキをひっくり返す。


きれいな焼き色。


敦「で、気づいたら趣味?」


琴葉「気づいたら趣味」


敦「軽いな!」


琴葉「ははは、でもさ」


琴葉は皿を出しながら、ちらっと敦を見る。


琴葉「作る側も楽しいって、ちょっと分かった」


敦「……」


敦(それ、俺が聞いていいやつか?)


琴葉がフライパンを置く。


エプロンの紐が揺れる。


敦「……エプロン、似合ってる」


琴葉「はいはい」



皿を出して、何事もなかったみたいに。


琴葉「ほら、焼けた」


敦「話流したな」


琴葉「感想は?」


敦「……うま」


琴葉「よし」


敦「よしって」


琴葉「それ聞くために焼いた」


敦「正直すぎだろ」


琴葉は満足そうに頷く。


琴葉「次は弁当用にもアレンジするか」


敦「日常に侵食してきてる」


でも


敦(最初の“うまい”が、こんな風につながってるの)


敦「……責任、取るからな」


琴葉「何を」


敦「感想係」


琴葉「それ責任か?」


琴葉のクックックと笑う声がパンケーキの焼ける音と共に静かに響いた。



ここまで読んでいただきありがとうございます。


気づいたら、日常になっていました。

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