第七十二話 男の修行 正しいことしか言ってないのにおかしい
ある日。
下校途中の敦の前に、黒い車がスーッと止まる。
窓が開く。
琴葉父「乗れ。」
敦「えっえっえっ!?誘拐!?違いますよね!?」
琴葉父「男としての修行だ。」
(答えになってない)
敦「いや説明!?説明をください!!」
そのまま車は発進。
◆到着:山
降ろされた場所は、立派な山の中。
敦「え、ここどこ!?何の修行!?山伏!?裸足走り!?滝修行!?」
琴葉父は無言でリュックを渡す。
琴葉父「……琴葉を守りたいか。」
琴葉父「ならば走れ。」
敦「雑っ!?修行内容が雑すぎる!!」
◆修行1:なぜか山道の全力疾走
琴葉父は普段クールなくせに尋常じゃない体力で先を走る。
敦「琴葉父、速いぃぃ!!まって!!」
琴葉父「遅い。」
敦「鬼!?」
◆修行2:丸太担ぎ(理由はない)
琴葉父「男は、いざという時に大切な人を支える肩が必要だ。」
敦「いや言ってることはかっこいいけど、
丸太を担ぐ理由にはなってません!!」
◆修行3:心の胆力
琴葉父
「敦くん……琴葉は時に、突然“女の子”になる。」
「そして固定されると周囲の記憶まで変わる。」
敦「……全部理解してるとは言えません」
一拍。
敦「でも……それ込みで琴葉なんで」
――沈黙。
琴葉父は、すぐには何も言わなかった。
ただ、ほんのわずかに視線を落とす。
琴葉父「……そういう真剣さを、私は見たかった。」
敦「(あ、この人……ちゃんと父親なんだ)」
いい雰囲気が流れたその瞬間。
父「では最後の修行だ。」
敦「まだあるんですね!?」
父はポケットから――
『明るい家族計画』のモザイク物体(例のアレ)
をスッ……と出す。
敦「やめてぇぇぇぇ!!!」
琴葉父「男としての心得だ。」
敦「琴葉母と同じ方向性で来るのやめて!!」
琴葉父「……この前、お母さんにもらっただろう?」
敦「そうなんですよ!もう持ってます!
だからこそもういらない!!」
最後は敦が逃げ帰り、
父は満足げに頷いた。
琴葉父「……悪くない男だ。」
……『明るい家族計画』のモザイク物体(例のアレ)は敦のポケットに素早く放り込まれていた。
家に帰って気づく敦
例のアレの前で両膝をついて崩れ落ちていた
「⋯12個目⋯たまっていく⋯」
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