第七十一話 ちゃんとやったらちゃんと出来た
ー次の日
雑な手つきで、ガンッ と弁当箱が机に置かれた。
琴葉「よし。敦、食ってみろ♪」
敦「軽っ!!そのテンション、逆に恐怖!!」
琴葉「“味付けって何?”レベルのリベンジ料理だぞ? 心の準備はできてるか♪」
敦「お前が先に言うなよ!? 俺のツッコミ奪うな!」
琴葉「うっしっし……。ほら、早く♪」
敦(なんでそんな楽しそうなんだよ……)
ゆっくり箸を伸ばし、卵焼きをひと口。
――ふわっ。
敦「…………えっ」
琴葉「どした?」
敦「(な、なんだこれ……)」
口の中でやさしくほどける、絶妙な塩味。
敦「……おい……おいしい……!」
「……やばい。……逆に魂が追いつかない……」
琴葉「魂!!?」
敦「うますぎて言葉出ねぇって言おうとしたら……魂が先に沈んだ……」
琴葉「あ、マジ?よかった♪ 適当に混ぜて焼いただけなんだけど」
敦「適当でこの完成度かよ!?俺、奇跡の舌持ってる説浮上!!」
琴葉「俺……分かったんだ⋯昨日は“プロみたいに作ろう”として事故った。
今日は“自分のペース”でやったら形になった。」
敦「自分のペースが正解なの初めて知ったの!? 長かったな!」
琴葉「うっしっし!ほら次も食えよ♪」
敦「ほんとに美味いって。
味、めっちゃ丁寧だし……お前ってこういう味作るんだって……
なんか、ちょっと感動した」
琴葉「お、おい失礼だろ!?
俺だってやればできるわ!!」
敦(照れてる……完全に照れてる……)
箸は止まらず、気づけば完食。
琴葉「っしゃあ!! 完食ー♪」
ぶんッ と勢いよくガッツポーズ。
顔はいつもの表情なのに、どこか柔らかくて嬉しそう。
敦(可愛いかよ……いや可愛い……
なんで軽いノリで来たのにこんな破壊力あるんだ……)
鈴原家。
家に帰った敦は、玄関を開けた瞬間⋯悟った。
(あ、今日……死ぬ)
敦母「敦♡♡♡ 聞いたわよ……!」
敦「何を!?」
敦母「敦♡ 昨日の琴葉ちゃんのお弁当……すごかったらしいじゃない?」
敦「なんで知ってんの!?!?」
敦母「琴葉ちゃんママがね〜、、朝からテンション高くて電話してきたのよ〜」
敦「連絡するな!!」
敦母「琴葉ちゃん一人で頑張ってたんだって♪」
敦「うっ!!」
魂を撃ち抜かれた衝撃
そのころ清水家。
琴葉母「琴葉!!敦くんが“魂が沈むほど美味い”って言ってたらしいじゃないの!!」
琴葉「なんで知ってんの!?!?」
琴葉父「魂が沈む……そんな表現を引き出すほどの味……」
琴葉「だから!味じゃない!!敦の語彙のバグと勢いの問題!!断じて実力じゃない!!」
母大盛り上がり。
父だけ真面目に感動している。
ー同時刻敦家ー
敦母「自分の息子が“魂沈めた料理”を食べたなんて……ついに来たのね……息子の青春フラグ……!」
敦「やめろ!!!」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
問題は、その後だったりします。




