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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


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第七十話 雑でもちゃんと伝わる

昼休み。


教室の真ん中で、琴葉が弁当を開く。


友人A「……ん?なんか今日、弁当違くね?」


友人B「量おかしくない?」


明らかに二人前。


敦「……それどうした」


琴葉「ん? 作った」


教室「は???」


敦「は???」


琴葉「なんでだよ」


友人A「いやお前が“作った”って言う日来るんだなって…」


友人B「今日なんか起きるぞ絶対」


琴葉「失礼だな」


弁当を敦に寄せる。


琴葉「敦、半分食べる? 作りすぎた」


敦「……半分?」


琴葉「途中で量も味もよく分かんなくなった」


友人A「怖いこと言うな」


距離が自然に近づく。


敦「近い」


琴葉「食いやすいだろ?」


敦「理屈は分かるけど距離は分からん」


琴葉、卵焼きをつまむ。


琴葉「とりあえずこれ」


そのまま敦の口元へ。


友人A「いやもうそれ“あーん”だろ」


教室「…………え?」


一瞬停止。


敦「待て」


箸を掴んで止める。


敦「それは違う」


琴葉「何が?」


敦「分けるならこうだろ」


弁当を引き寄せて、きっちり半分に分ける。


敦「これで半分な」


琴葉「おお」


友人B「対応が妙に冷静」


友人A「慣れてんなこいつ」


敦、卵焼きを口に入れる。


一拍。


敦「……美味い美味い」


すぐ次を食べる。


終了。


琴葉「……どう?」


敦「美味いって」


短い。


雑。


友人A「軽っ!!」


友人B「初自炊だぞ今の!?」


琴葉「そうなのか?」


敦「そうだろ」


即答。


友人A「お前が言うな」


琴葉「?」


分かってない顔。


そのまま普通に食べ始める。


距離は近いまま。


友人A「……なあ」


友人B「うん」


友人A「距離だけずっとおかしくない?」


友人B「それはもう仕様だろ」


敦「正常だ」


即答。


友人A「だからお前が言うな」




帰り道。


夕焼け。


敦「……琴葉」


琴葉「ん?」


敦「昼の弁当」


琴葉「うん」


敦「……雑に言って、ごめん」


一拍。


敦「ちゃんと、うまかった」


琴葉「……え?」


少しだけ目が丸くなる。


琴葉「そうか。なら……よかった」


ほんの少し、力が抜ける。


敦「だからまた作ってくれたら……」


琴葉「あー、それなんだけど」


敦「ん?」


琴葉「“アレは二度と作れない”」


敦「は?」


琴葉「再現性ゼロだから」


敦「嫌な予感しかしない」


琴葉「まずボウル落とした」


敦「アウト」


琴葉「跳ねて卵割れた」


敦「偶然が働きすぎ」


琴葉「勝手に卵混ざってた」


敦「工程を飛ばすな」


琴葉「味付けなんだけど」


敦「うん」


琴葉「入れてない」


敦「は???」


琴葉「全部忘れた」


敦「全部!?」


琴葉「たぶん気合い」


敦「だから気合いは調味料じゃねぇ!!」


琴葉「でも敦“美味い”って言ってたじゃん」


敦「俺の舌が奇跡起こしたんだよ!!」


琴葉「ラッキー」


敦「軽いな!!」


琴葉「だから再現性ゼロ」


敦「納得したくないけどした!!」


琴葉「でも次あるならちゃんとする」


敦「頼むからちゃんとやってくれ……!」


琴葉「気合いは?」


敦「抜け!!」


琴葉「じゃあ愛情は?」


敦「それが一番危ない」


琴葉「なんでだよ」


笑い声が、夕焼けに混ざる。



ここまで読んでいただきありがとうございます。


たぶん、それで十分です。

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