第六十九話 理由はそんなに大きくない
甘さ爆発敦を胸の奥に無理矢理しまい込んで数日……
琴葉はやっと心が平穏を取り戻せたと感じられるようになってきた。
そんなある日の学校の帰り道。
琴葉は敦と一緒にコンビニに寄った。
敦「今日さ、母さん夜勤なんだよ」
琴葉「ふーん」
敦はパン棚の前で少し悩んで、
菓子パンを二つ取る。
敦「昼はこれでいいかな」
琴葉「毎回それだな」
敦「慣れてるから」
会計を済ませて、外に出る。
琴葉(慣れてる、か)
――夜。
リビングでテレビが流れている。
琴葉はソファに座って、スマホを眺めながら音だけ聞いていた。
ナレーション
「初心者でも簡単!失敗しないお弁当の――」
琴葉「……初心者?」
画面には、フライパンと卵。
琴葉(初心者って……)
少し考えてから。
琴葉(俺、初心者だな)
自分が対象に含まれていることに、
なぜか今さら気づく。
琴葉母がキッチンから手を拭きながらテレビの前にやってきた。
母「弁当作るの、意外と楽しいわよ」
琴葉「へー」
相づちは適当。
でも、さっきのナレーションが頭に残っている。
琴葉(楽しい、か)
テレビでは、卵がくるっと返された。
琴葉(焼くだけだしな)
理由としては、弱い。
でも。
琴葉(明日、パンなんだよな)
敦の手にあった菓子パンを思い出す。
琴葉「……」
そのまま立ち上がって、冷蔵庫を開ける。
卵。
賞味期限、まだ先。
琴葉(……一回くらい)
作る、とは決めてない。
ただ、
琴葉
ここまで読んでいただきありがとうございます。
最初は、それくらいでいいと思います。




