第六十一話 止める人がいない
母親の勘による鋭い洞察力により、
厳重に隠されていた反省文が、容赦なく日の光に晒された。
敦母と琴葉母は、それぞれ別々の家で反省文を読む。
……同時に、まったく同じ表情になる。
敦母(……これ、一人で抱えたら死ぬ)
琴葉母(……これ、誰かと共有しないと情緒が爆発する)
二人はほぼ反射でスマホを掴んだ。
ピロン。
ピロン。
敦母「……あれ?」
琴葉母「……あら?」
敦母「桜ちゃん?」
琴葉母「真理子さん?」
※親の勘、方向性が完全一致。
敦母「桜ちゃん!反省文見た!?」
琴葉母「見た!床に崩れた!!」
敦母「敦がね!?
“元気になるのはお前の一言のおかげ”って!!
反省文で恋愛感情を提出してきたんだけど!?」
琴葉母「琴葉なんて『好き』って単語を文章に入れてきたのよ!?
反省どこ行った!?」
敦母「減点対象なのに心臓が加点されていく!!」
琴葉母「教育と母性が真っ向から殴り合ってる!!」
敦母「これは……会おう」
琴葉母「会おう」
敦母「今」
琴葉母「今すぐ」
敦母「カフェで」
琴葉母「走れる服で」
敦母「父親?」
琴葉母「連行」
ーーーー
カフェにて。
敦両親が先に到着、10秒後琴葉両親も到着した。
琴葉母「真理子さーーーん!!会いたかったわーーー!!」
敦母「桜ちゃん〜〜〜!!変わってない!!若い!!」
琴葉父「……お久しぶりです、健司さん。いや、これは長期講義になりそうですね」
敦父「覚悟してます」
敦母「見て、この反省文!!敦が“いつも隣に居てくれて”とか書いてんのよ!?」
琴葉母「こっちは“敦の声、安心する”って……
それ反省文じゃなくて日記帳の最奥!!」
琴葉父「……反省文、って何でしたっけ?」
敦父「……提出物だと思ってますが」
琴葉父「いつから恋文になったんだろうな」
敦父「多分、本人たちが一番気づいてない」
琴葉父「……それが一番怖いな」
琴葉母「反省文で心臓撃ち抜いてくるのやめてほしい!!」
敦母「反省文なのに愛の塊よね!?」
琴葉母「そうなの!!反省してないの!!!」
敦母「むしろ自白書!!」
琴葉母「そう!!恋の供述書!!」
(二人、同時に胸を押さえる)
敦母「無理……尊すぎる……」
琴葉母「ちょっと待って、私まだ反省文の下段読んでない……」
敦母「やめて!!
後半は致死量よ!!」
カフェ全体が明るくなるレベルのボルテージ。
その頃、テーブルの端で父親ズは…
琴葉父「……何の集まりでしたっけ?」
敦父「……さて」
父親ズ「「……でも止められない」」
敦母「でね!帰ったら敦の顔がもうへにょへにょに溶けているのよ〜!」
琴葉母「琴葉は玄関で転んで、そのまま布団まで転がってった!!」
敦母「撮った!?」
琴葉母「撮った!!」
敦母「送って!!」
琴葉母「真理子さんも!!」
敦母「任せて!!“尊いアルバム”作ろう!!」
もはや親の役目を忘れはじめてる。
こうして――
母親ズの爆上がりテンションに引きずられる形で、
『息子たちを静かに見守る会(過保護)』
が発足した。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
本人たちは、まだ何も知りません。




