第五十六話 勝ったはずなのに負けている
昼休み。
机を囲むようにしてAとBが近づいてくる。
A「なぁ敦、最近なんか機嫌よくね?」
B「例の“謎の恋人”のせいじゃね?」
敦「ちげーよ」
その横で――
琴葉がじわじわ口角を上げる。
ニヤ~~っと悪い顔。
そして混ざってくる。
琴葉「へ〜?敦のお気に入りの子?」
琴葉「具体的にどんなタイプ?
教えろよ〜〜?」
琴葉「参考にするから」
A「お、幼馴染の煽り来た!」
B「ほら敦、白状しろって〜!」
琴葉は両手でラッパポーズ。
琴葉「ヒュ〜〜ヒュ〜〜!!」
敦(…この野郎……
女型の琴葉を隠すために仕方なく作った
“謎の恋人説”で遊びやがって……)
敦の表情が、すっ……と変わる。
敦
一拍。
敦(そう来るわけね)
口元だけが、ゆっくり歪む。
さっきまで普通だった顔が、
“してやったり”の悪い笑みに変わる。
敦「……まぁ、“可愛い人”、だけど?」
琴葉「ヒュ〜……へ?」
A「おぉっ!!」
B「え、そこ否定しないんだ!?」
敦はそのまま、
にこ……っと甘い“素の笑顔”を落とす。
敦「めっっちゃ可愛いよ。」
敦「ほら、すぐ顔赤くするし……」
敦「な?」
ちらっと琴葉を見る。
琴葉「い、今!? 俺!? なんで俺!?!?」
A&B「アッッッ……!!」
A「これ、完全に刺しにいってる!!」
B「敦の顔!!勝者の顔!!」
琴葉は一瞬で耳まで真っ赤。
琴葉「なっ…ななっ!?!」
敦はさらに追撃。
“してやったり顔”のまま、落ち着いた声で。
敦「だってさ。
そいつ、すっげぇ可愛いんだよ。
……俺の幼馴染なんだけど?」
A「うおおおお!?!?」
B「直球通り越して爆撃ぃ!!」
琴葉「やめろおおおお!!////」
琴葉、机に突っ伏してバタバタ。
両耳が完全に真っ赤。
A「見て見て!!琴葉の耳真っ赤だぞ!!」
B「自分で煽っといて返り討ちなの面白すぎ!!」
周囲は大爆笑の渦。
A「あー……はいはい。
もう分かったわ」
B「原因は……」
A&B「幼馴染ィィ!!!(確信)」
琴葉「指すなぁぁぁ!!!////」
その横で――
敦は“過去一勝ち誇った顔”をしていた。
敦(ふっ……完璧な反撃……!
…よし。これで黙るだろ)
だが。
ふと。
さっきのやり取りが、脳内で再生される。
一拍。
敦
敦(……俺いま)
敦(本人に言ってないか?)
敦、ゆっくり机に額をぶつける。
敦「……」
胸にズドン。
敦「…………ああああああああ!!!?!?!?」
突然の赤面+裏返った悲鳴。
B「うるさっ」
琴葉「!? なんで敦が爆発すんの!!」
敦「考えたら死ぬほど恥ずかしいんだよ!!
本人に!!可愛いって!!連呼して!!」
A「え、気づくの今?」
B「遅ぇって!!」
昼休みの教室は拍手と笑いで包まれた。
周囲「最高の昼休みー!!」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
勝ったつもりが、一番ダメージを受けます。




