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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


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第四十六話 そのままの状態が続いている


教室。


敦は無意識に、自分の手を見ていた。


昨日の琴葉の声が残っている気がする。



琴葉「今日はちょっと冷えるなぁ」


敦「……温めねぇぞ」


琴葉「? なんの話だ?」


敦「何でも無ぇ!!寒いならお前もジャケット着てこい」


琴葉「うーん……そうだなぁ。明日着てくるか」



そんな他愛もないやり取り。


ーーーーー


放課後。


敦は職員室へ行くため、

両手いっぱいにプリントを抱えていた。


敦「悪い、これ持ってて」


琴葉「おー」


受け取ったジャケットを、琴葉は最初は腕にかけていた。


が、階段でずれそうになり――


琴葉「……あ、これ着たほうが楽だな」


何の迷いもなく羽織る。


敦「……」


(合理的だ)


(合理的だけど)


ーーーー

職員室。


先生「お、プリントありがと……う?」


敦がプリントを渡す。


その一歩後ろに立つ琴葉。


先生の視線が、

琴葉の胸元で止まる。


……。


――『鈴原(敦)』



先生は無言で敦を見る。


敦は

「質問受け付けません」


と言わんばかりに視線を逸らす。


先生「……気をつけて帰れよ」


敦「……はい」


振り返り


敦「⋯⋯琴葉、お待たせ」


琴葉「おぅ」


二人の背中を見送りながら、


先生「……なんて自然な風貌」


ーーーー


外。


琴葉「なんか外の方が暖かいなぁ〜。日があるからかなぁ〜」


敦(俺のジャケット着てるからだろ)


言おうと思えば言えた。


返せ、と。


でも。


敦(教室で寒いって言ってたし)


敦(……まあ、いいか)


敦の視界の端で、

自分のジャケットが揺れている。


分かれ道。


琴葉「じゃあなー」


敦「……あ、ああ」


琴葉はジャケットを着たまま、

いつも通り手を振って帰っていった。


敦「……」


敦(……言いそびれた)


ーーーーーー


帰宅後。


琴葉「あー!」


リビング


琴葉「敦が言ってくれないからジャケット返し忘れたー!」


ぷりぷりしながら、

ハンガーにジャケットを掛ける。


琴葉「明日返そうっと」


そう言い残して、部屋に戻る。


残された琴葉母が、

ゆっくりとジャケットに近づく。


胸元の名前を見る。


把握。


無言で、

しわを伸ばして、ほこりを払った。


ーーーーー


翌朝。


半目の琴葉が、

もそもそと朝の準備を整えた。


琴葉「……行ってきまーす」


琴葉母「琴葉ー、今日もちょっと寒いから

    ジャケット着ていったら?」


琴葉「うーん……」


半分寝ながら

敦のジャケットを羽織る。


琴葉母(小さくガッツポーズ)


琴葉「……行ってきまーす」


琴葉母「いってらっしゃーい♪」


ーーーー


校門。


敦は――


一瞬で固まった。


琴葉が来る。


――昨日と同じジャケットを着て。


敦「……」


琴葉「おはよ」


敦「……おはよ」


敦(心の準備)

(してない)

(二日目)


琴葉「……あ」


ここで気づいた顔。


琴葉「敦のジャケット……ある。

   ⋯でも自分のジャケット⋯忘れた」


敦「……」


結局。


二日間、琴葉は敦のジャケットを着て過ごした。



ここまで読んでいただきありがとうございます。


借りたままでも、問題は起きません。

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