第四十話 完成形が先にある
下校途中。
駅前。
敦「……」
足が止まる。
ガラス越し。
ブティックAのショーウィンドウ。
そこに立っていたのは――
帽子。
メガネ。
白シャツ。
短パン。
そして。
細身のベージュのロングカーディガン
袖は少しだけまくり気味。
足元は白スニーカーに細いシルバーチェーンのアンクレット。
完全に“休日デート仕様”。
敦「…………」
完全停止。
横を歩いていた琴葉。
琴葉「どうした?」
敦、無言で指差す。
琴葉「?」
見る。
三秒。
琴葉「……あ」
五秒。
琴葉「俺じゃん」
敦「違う!!」
マネキンには、
しっかり帽子とメガネ。
しかも腕の角度が微妙に
“誰かに寄り添ってる姿勢”。
敦「なんでそのポーズなんだよ!!」
店内からAが手を振る。
A「おー敦!」
敦「やめろ!!気づくな!!」
A、外に出てくる。
A「新作。カップル想定コーデ」
敦「想定すんな!!」
お客さん「すみませーん、この服のLサイズあります?」
A「はーい」
去っていくA。
外に残される二人。
琴葉、真剣に観察。
琴葉「……でも似てるな」
敦「同意するな!!」
琴葉「帽子とメガネ強いな」
敦「分析するな!!」
琴葉、腕を組む。
琴葉「なるほど」
敦「何がだよ」
琴葉「女型の時、こんな風に合わせればよかったのか」
敦「やらなくていい!!」
琴葉「敦、これ買う?」
敦「なんで俺に聞くんだよ!!」
琴葉「一緒に歩く側の意見大事じゃん」
敦「俺を評価基準にすんな!!」
ふと。
琴葉、マネキンの隣に立つ。
敦「待て」
並ぶ。
シルエット、ほぼ一致。
敦「やめろぉぉ!!」
琴葉「写真撮る?」
敦「撮るな!!歴史を残すな!!」
Aがひょっこり帰って来る。
A「彼女連れてくれば完成だったのに」
敦「いねぇって!!」
琴葉「惜しいな」
敦「お前も乗るな!!」
歩き出したあと。
敦、まだ顔が赤い。
琴葉「でもさ」
敦「なんだよ」
琴葉「女型の時、あんな感じに見えてるんだな」
敦「……」
少し黙る。
敦「……まぁ」
琴葉「?」
敦「……似合ってた」
琴葉「へ?」
敦「マネキンがな!!」
琴葉「今一瞬違ったろ」
敦「違わねぇ!!」
夕方の人混み。
誰も二人を気にしない。
でも敦の中だけ、
今日も事件だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
形があると、無視できなくなります。




