第三十一話 少し時間がかかる
週末。
待ち合わせ場所。
白いシャツに短パン、帽子とメガネ。
足元だけ、やたら大きいスニーカー。
敦は一瞬、言葉を失った。
敦「……前と何も変わってなくね?」
琴葉は胸を張って言う。
琴葉「え?女型琴葉ちゃんはな、前回敦と下着買いに行って以来、お出かけしてないんだ」
一拍。
琴葉「だから靴もそのまま」
そして急にドヤ顔。
琴葉「あ、でもブラジャーは――」
敦「そこじゃねぇ」
ため息混じりに、敦は手を差し出す。
敦「……ほら」
琴葉は首を傾げる。
琴葉「ん?」
敦「靴デカいんだろ。手」
一瞬だけ間があって、
琴葉「あ、うん」
当然みたいに、掴む。
敦(……普通に来た)
歩き出すと、琴葉は楽しそうにしている。
敦(……そう言えば)
敦は一瞬だけ周囲を見た。
敦
結局そのまま歩いた。
映画の前に軽く昼を済ませる事にした。
店内。
琴葉はバーガーを持ったまま、少し止まる。
琴葉「……あれ」
敦「なんだよ」
琴葉「これ」
少し近づけて、
琴葉「デカい」
敦「……いつもより口が小さい」
琴葉「それだ」
琴葉、頑張ってかぶりつく。
少しだけ崩れる。
琴葉「……食べづらい」
敦「慣れてねぇだけだろ」
琴葉「かもな」
もう一口。
今度はさっきより小さく。
琴葉「……時間かかるな」
敦「急ぐもんでもねぇだろ」
琴葉「そうだけど」
少し間。
琴葉、外を見る。
琴葉「……なんか、新鮮だな」
敦「何が」
琴葉「こういうの」
敦「……」
敦「まぁな」
敦もゆっくり食べる。
いつもより、少しだけ時間がかかる。
でも。
琴葉「……こんな時間も悪くない」
敦「……そうだな」
敦はコーヒーを一口飲む。
一瞬だけ、琴葉に目をやる。
何も言わず、目線をカップを戻した。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
変わっていないようで、少しだけ違います。




