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第二十九話 いつも通りが違っている
昼休みが終わる少し前。
教室のざわめきの中で、
敦は何度目か分からない視線を、琴葉に向けていた。
敦(……違和感……?)
友達と軽く笑う琴葉。
購買のパンを机に置いて、「余った」とか言う声。
距離も、態度も、何一つ変わらない。
敦(……自分が自覚したせい……?)
胸の奥に、妙な引っかかり。
敦(……いや……それとは違う気がする⋯)
ふと、二人の時に琴葉が軽く言っていた言葉を思い出す。
琴葉「周期、そろそろだと思うけど⋯」
──女型になる前兆がまだ来ない。
敦(……それだ!)
女型になる前触れのとき、
琴葉は決まって、少しだけ様子が変わる。
声の調子が微妙に浮いたり、
必要以上に明るく振る舞ったり。
あるいは、一瞬だけ――
視線が、どこか遠くに向く癖。
敦
敦は、ほんの少しだけ身を乗り出した。
……そこで初めて、
手の中のペンを置いていないことに気づく。
コト、と机に置く。
敦(来ない、のか)
それとも、
敦(来ない“まま”なのか)
――また、周期が変わったのか?
胸の奥が、
静かにざわつく。
そして――
敦は、ついに我慢できず、
声をかけることになる。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
何も起きていないようで、何かが違います。




