第二十五話 今さらでいい
数日後の昼休み。
学食前の自販機。
琴葉が立ち止まる。
琴葉「ちょっと待って」
ガコン。
ジュースが落ちる。
琴葉「新作」
敦「また変なの買ってる」
琴葉「うまいかも」
キャップを開けて、ひと口。
琴葉「……お」
敦「どう」
琴葉「うまい」
敦「そりゃいいな」
琴葉「飲む?」
敦「おぅ」
琴葉が差し出す。
敦、受け取って普通に飲む。
敦「……ほんとだ」
敦「うまい」
琴葉「だろ」
敦、ボトルを返す。
琴葉、当たり前みたいにそのまま飲む。
敦の視界に、
さっき自分が口をつけた場所が入る。
敦「……」
一瞬、足が止まる。
琴葉「?」
敦「……距離近い」
琴葉「そう?」
敦「そう」
琴葉「昔からこうだろ」
敦「……」
敦「……まぁな」
少し歩く。
琴葉はまたジュース飲んでる。
琴葉「もう一口飲む?」
敦「もらう」
一瞬止まる。
敦
「……」
また飲む。
返す。
琴葉、気にせずそのまま飲む。
敦「……」
琴葉「?」
敦「……やっぱ距離近い」
琴葉「だから昔からだって」
敦「……今更、か」
琴葉「敦」
敦「ん」
琴葉「その“今更”の言葉」
敦「……あ?」
琴葉「前、嫌がってただろ」
敦「……あー」
敦、ぼそっと。
敦「……もういいや」
琴葉「え?」
敦「その通りだった」
琴葉「⋯そうなのか?」
敦「まぁ」
琴葉「敦がいいなら、それでいっか」
風が吹く。
二人の距離は、昔から変わっていない。
敦「昔からだな」
琴葉「うん」
琴葉、ジュースをひと口。
琴葉「……うまいな、これ」
敦「だろうな」
少し間。
敦「……今更だけど」
琴葉「ん?」
敦「それ、いいジュースだな」
琴葉「だろ?」
二人、並んで歩く。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
受け入れた瞬間、少しだけ楽になります。




