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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


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第十六話 半歩の合わせ方を知っている


翌朝。


制服に腕を通し、鏡の前。


男型の琴葉は、前髪を指で整える。


――す、と指が止まる。


少しだけ、目を伏せる。


次の瞬間、何事もなかったみたいに肩を回した。



玄関を出る。


門の前に、敦がいた。


敦「おはよう」


琴葉「……おはよう」


一拍。


視線が合って、すぐに外れる。


歩き出す。


朝の空気は爽やか。


数歩。


琴葉「……昨日さ」


間。


琴葉「ありがとな」


敦は一瞬だけ口を開きかけて、閉じる。


それから肩をすくめた。


敦「別に」


敦「いつものことだろ」


言い終わる前に、視線を前に戻す。


琴葉は横目で見て、気づいた。


敦の耳が、ほんのり赤い。


何も言わず、前を向く。


距離も、いつも通り。


足音が、半拍ずれて重なる。


琴葉が、少しだけ歩幅を緩める。


敦は、その半歩に、何も言わず合わせた。


しばらく、無言。


琴葉「……」


敦「……」


言葉は出ないまま、角を曲がる。


校舎の屋根が、遠くに見える。


琴葉、空を一度見上げてから、前を見る。


琴葉(……敦が、いなかったら――)


考えかけて、やめる。


足元に意識を戻す。


敦が、横にいる。


それだけでいい。


二人は何も言わず、通学路を進む。


昨夜の続きを、

言葉にしないまま、並べて。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


並んで歩けるだけで、十分な日もあります。

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