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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


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第十五話 ひとりじゃないということ


気持ちが少し落ち着いたころ、

軽いノック。


琴葉「わっ」


まだ顔が赤い。

慌ててベットに潜り込む。


母と敦はそっと琴葉の部屋の扉を開けた。


琴葉母「……琴葉」


その声は、さっきまでの勢いを全部置いてきたみたいに、静かで、やわらかかった。


琴葉は布団を頭から被り丸まったまま、顔を出さない。


琴葉母は丸まったベットに近づく。


琴葉母「ねぇ、敦くんも……聞いてくれる?」


敦は少し戸惑いながらも、小さくうなずいた。


琴葉母「琴葉の体質は……私から受け継がれたものなの」


敦「お母さんから……?」


敦は思わず目を丸くする。


琴葉母は小さく笑う。


琴葉母「ええ。でもね……私は性別の変化はなかったの……。」


少しだけ視線を落とす。


琴葉母「だからね……

“忘れられるかもしれない”って怖さを、

私は本当の意味では分かってあげられてない」


琴葉の指先が、ぎゅっとシーツをつかむ。


琴葉母「それがね……ずっと、悔しかったの」


母は、ゆっくり琴葉の横にしゃがむ。


琴葉母「でも今日、琴葉がちゃんと話して、

ちゃんと受け止めてもらってるのを見て……」


少しだけ、微笑んで。


琴葉母「……やっと、安心できたの」


琴葉の肩が、わずかに揺れる。


頭だけゆっくりと出てきた。


琴葉母「だからね」


そっと、琴葉の頭に手を置く。


琴葉母「琴葉は、ひとりじゃない。

それだけは……ずっと覚えてて」


琴葉は小さく、息を吸って。


琴葉「……ん」


敦は、その横で何も言えず、

ただ静かにその姿を見守っていた。


母は琴葉に微笑みを向け、続けて敦にも振り返る。


琴葉母「……少し休ませてあげましょうか」


敦は一度だけ視線を逸らした。

何か言いかけて、やめる。


敦「……琴葉。明日も……また一緒に学校行こうな」


それだけ告げて、敦はゆっくりと踵を返し、廊下へ出ていく。


琴葉はまだベッドの上で丸まっている。


だけど少しずつ肩の力を抜き、

ベッドに身を沈めながら小さく笑った。


琴葉(敦……明日も来るんだ)


窓を伝う雨粒の向こうで、街の灯りがにじむ。


琴葉は枕に顔を埋めたまま、小さく息を吐く。


明日、たぶん敦は普通の顔で来る。


何もなかったみたいに。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


何もなかったみたいに過ごせることが、いちばんの安心です。

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