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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


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第百十一話 戻したはずの距離が戻らない

朝。


琴葉は自分の席に座りながら、妙にそわそわしていた。


ノートを開く。閉じる。開く。


ペンを持つ。置く。


琴葉……なんだこれ


特に何も起きていない。


なのに落ち着かない。


隣を見る。


敦、普通。


めちゃくちゃ普通に友達モード。


敦「昨日の課題出した?」


琴葉「出した」


即答。


声がちょっと速い。


敦「……早ぇな」


琴葉「普通だろ」


普通じゃない。


心拍だけが昨日の夜を引きずっている。


休み時間。


琴葉は無意識に敦の近くへ行きかけて――止まる。


(……いや別に)


別に用はない。


なのに戻ると、なんか変。


机に戻る。


落ち着かない。


また立つ。


クラスメイト「お前さっきから徘徊してね?」


琴葉「してない」


してる。


昼。


敦が立ち上がる。


その瞬間。


琴葉も立つ。


敦「……なんで?」


琴葉「……いや?」


理由、ゼロ。


本人が一番分かってない。


敦は少しだけ目を細める。


(……あ)


気づく。


昨日、止めた距離。


戻したはずなのに――


こいつだけ、戻れてない。


放課後。


帰り道。


並んで歩く距離が、微妙に近い。


琴葉は気づいていない。


敦だけが気づいている。


敦(……慣れてねぇな、これ)


小さく息を吐く。


少しだけ離れる。


その瞬間。


琴葉の歩幅が乱れる。


一歩、詰め直す。


無意識。


完全に無意識。


……あー……


確信する。



ここまで読んでいただきありがとうございます。


戻したつもりでも、戻ってない時があります。

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