表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/120

第百十話 触れなかった分だけ意識する

違う日の夕方。


カーテン越しの光が部屋をオレンジに染めている。


床に並んでくつろぐ二人。


女型の琴葉が、何の前触れもなく——


後ろへ体重を預けた。


敦の胸に、背中が当たる。


敦は一瞬だけ止まって、


それから自然に腕を回す。


いつもより、

ほんの少しだけ強く。


琴葉「っ……おい」


敦「ん?」


琴葉「……今の、なんか違う」


敦「そうか?」


琴葉「知ってるやつより深い」


敦「更新された」


琴葉「勝手にアップデートすんな」


敦「仕様です」


琴葉「心の準備って項目ないのかよ」


敦「未実装」


琴葉「クソ仕様!」


でも離れない。


むしろ、


少しだけ力を抜いて体を預ける。


敦はそれに気づいて、

何も言わず呼吸を合わせる。


少し静かになる。


琴葉「……なぁ」


敦「ん」


琴葉「昼と夜、差ありすぎじゃね?」


敦「あるな」


即答。


琴葉「昼、あんな距離だったのに」


敦「昼は昼」


琴葉「雑だな」


敦「仕様だろ?」


琴葉「……まぁな」


一瞬だけ間。


敦が、何か言いかけてやめる。


その沈黙が――近い。


視線が合う。


逸らそうとして、逸らせない。


敦の目が、少しだけ揺れる。


ほんのわずか、距離が縮まった。


琴葉の心臓が跳ねる。


理由は分からないのに、身体が理解してしまう。


来る。


そう思った瞬間、指先が落ち着かなくなる。


逃げるべきか、

待っていいのか、

判断が追いつかない。


敦の視線が、目から唇へ落ちた。


それだけで胸の奥が熱くなる。


琴葉は思わず唇を結び――


少しだけ、顔を近づける。


琴葉(……来る?)


自分でも驚くくらい素直な動きだった。


鼓動がうるさい。


近づくほど、相手の呼吸が分かる。


もう言葉が入る隙間はない。


反射で、目を閉じる。


暗くなった世界の中で、

距離だけがゆっくり消えていく――


——しかし。


触れたのは、


目元の少し横。


軽いキス。


琴葉「っっ!!」


即座に振り返り、

ポカポカ殴る。


琴葉「今のフェイントだろ!!」


敦「痛ぇって」


笑ってる。


琴葉「完全に唇来る流れだっただろ!」


敦「まだ無理そうだった」


琴葉「判断すんな!!」


敦は拳を軽く受け止める。


逃がさない程度に。


敦「ほら」


琴葉「何が」


敦「やっぱ慌ててる」


琴葉、言葉に詰まる。


視線を逸らす。


琴葉「……そりゃ慌てるだろ」


敦「だよな」


それ以上、何もしない。


距離も詰めない。


ただ、

捕まえた手を離すだけ。


沈黙。


琴葉は少しだけ物足りなさを感じて、

でも理由が分からない顔をする。


琴葉「……」


敦「……」


夕方の光だけが動く。



ここまで読んでいただきありがとうございます。


届かなかった方が、残ることもあります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ