第百九話 仕様として受け入れ始める
夜。
人の気配のない部屋。
女型の琴葉は、
ソファに座る敦の隣へ来て――
迷いゼロで、ぴたりと寄る。
肩。
腕。
腰。
完全に、夜の距離。
敦、ゆっくり天井を見る。
敦「……なぁ」
琴葉「ん?」
敦「昼のあれ、何なんだ」
琴葉「どれ」
敦「普通に近いのに」
敦「触れないやつ」
琴葉「……ああ」
ちょっと考える。
琴葉「人いるときの話だろ?」
敦「雑だな」
琴葉「でもそうだろ」
敦「まぁ……そうなんだけどよ」
琴葉は、さらに体重を預ける。
ぐい。
敦「増やすな」
琴葉「検証」
敦「何の!?」
琴葉「どこまでで敦が壊れるか」
敦「人体実験やめろ!!」
琴葉、少しだけ間を置く。
琴葉「昼はさ人がいると」
敦「ん」
琴葉「なんか、勝手に止まる」
敦「……止まる?」
琴葉「近づくけど」
琴葉「途中で、こう……」
言葉を探す。
琴葉「……ちょっとだけ、ズレる」
敦
敦「で、夜は?」
琴葉「ズレない」
即答。
くすっと笑って、
琴葉は敦の胸に額を当てる。
琴葉「だから、こうなる」
敦「極端だな」
琴葉「昼はちゃんとしてる」
敦「その“ちゃんと”、信用していいやつか?」
琴葉「多分」
敦「不安しかねぇ」
さらに密着。
ぐい。
敦「待て待て待て」
琴葉「何」
敦「距離、ゼロ通り越してる」
琴葉「安心感ボーナス」
敦「ゲーム用語で現実を侵食するな」
一拍。
琴葉「……敦」
敦「ん」
琴葉「昼、ちょっとだけ気をつける」
敦「……おう」
ほんの少し、静かな声。
――次の瞬間。
ぐい。
完全密着。
琴葉「だから今、いいだろ」
敦「帳尻合わせるな!!」
敦「昼で我慢して夜で回収するな」
敦「誰がそんな仕様にした」
琴葉「俺」
敦「お前か!!」
でも離れない。
腕の中に、
琴葉がいる。
敦「……」
敦、小さく息を吐く。
敦「……これ、当たり前になるな」
琴葉「何が?」
敦「言わん」
琴葉「気になる」
敦「気にするな」
琴葉「じゃあもっと寄る」
敦「交渉が雑!!」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
少しずつ、当たり前に変わります。




