第十一話 視界に入る角度を探している
体育館にバッシュの音が響く。
琴葉は軽快にドリブル。
敦が正面に立ちはだかる。
琴葉「もらった!」
低く構え、ひらりと身体をひねる。
敦、完璧にコースを切る。
ボールが跳ねる音だけが規則的に続く。
敦「甘い」
不敵に笑う。
クラス「おー?」
数プレー後。
琴葉が別のやつにパス出す。
敦の方を見てない。
敦の視界に、ふっと入る。
敦「……」
一瞬だけ止まる。
パスカット遅れる。
友人A「⋯え?今の何!?」
敦「今のは不可抗力!!」
琴葉「何が!?」
敦「違う!……角度が!!」
琴葉「角度!?」
敦「知らん!!」
クラス爆笑。
教師「こらー真面目にやれ真面目にー!」
ーーー昼休み。
机をくっつけ、男子数人でランチタイム。
琴葉はパンを2つ勢いよく開けて、
「いただきまーす!」と豪快にかじり始める。
敦は弁当をつつきながら、ちらっと横を見る。
敦「……」
また、視線を戻す。
琴葉は気にせず食べている。
友人Bがボケる。
琴葉、そっち向いて笑う。
その横顔が、
敦の視界の端に入る。
敦「……」
箸、止まる。
友人A「また出た」
敦「出てねぇ!!」
琴葉「何が出た!?」
敦「今の角度反則!!」
琴葉「俺、何もしてない!!」
その通り。
本当に、何もしていない。
だからタチが悪い。
琴葉「お前さっきから角度角度って。
俺、定規か?」
敦「だから違う!!」
友人A「角度って何?琴葉の“こっちの角度”が好きなの?(ニヤニヤ)」
と、ふざけながら琴葉の顔を横から覗く。
敦は慌てて手を伸ばして止める。
敦「やめろ!!変な角度で見るな!!」
一同「???」
琴葉「……今一番変な体の角度してんの、敦だからな」
敦は弁当の箸を握ったまま、机に突っ伏す。
敦 (何やってなんだ⋯俺)
琴葉は優しく(?)2回背中を叩く。
ぽん、ぽん。
琴葉「敦、そんな落ち込むなよ。
次の体育もさ、俺が角度だけは気をつけてやるから」
敦「気をつける意味がわかんねぇよ!!」
友人たちはもう爆笑。
放課後。
廊下。
並んでいるが敦が少し前を歩く。
敦、何気なく横を見る。
見えない。
敦、ちょっとだけ位置ずらす。
少し後ろに下がる。
視界の端に横顔が入る位置へ。
一瞬。
クリティカル角度。
敦「……」
自分で止まる。
敦「……は?」
今、自分で作った。
琴葉「どうした?」
敦「何でもない」
歩幅戻す。
またちょっとずらす。
琴葉の横顔、入る。
敦「……」
友人A(後ろから見てる)
「お前さぁ」
敦「何だ」
友人A「自分で見に行ってない?」
静止。
敦「違う」
友人A「位置調整してたぞ今」
敦「視界確認だ」
友人A「何の」
敦「安全確認」
友人A「どこが危険なんだよ」
敦「……角度が」
琴葉「何の話?」
敦「何でもない!!」
琴葉は本気で分かってない。
友人Aはニヤニヤ。
琴葉「敦」
敦「見るな」
琴葉「見てない」
敦「……」
琴葉「敦?」
敦「その呼び方の角度やめろ!!」
友人A「呼び方にも角度あんのかよ!!」
たまたまのはずなのに。
なんでか最近、
“たまたま”が多い。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
視界に入るものは、無意識の選択です。
少しだけ、いつも通りじゃない日が来ます。




