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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


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第百四話 変わるたびに確かになる



玄関前。


寝癖ふわふわ、目とろん。


琴葉「……あ。敦……きた……」


敦「おはよ」


その声を聞いた瞬間。


――空気が揺れる。


琴葉「……あ」


淡い光がにじむ。


やばい


考える前に動いてた。


ぐいっと琴葉を抱き寄せ、

そのまま玄関へ転がり込む。


――ドン。


扉が閉まる。


光が、強まる。


腕の中の体が、

すっと変わる。


重さが、違う。


呼吸の位置が、違う。


敦はゆっくり顔を上げる。


……女型。


すぐ横から、声。


母「……敦くん?」


敦「……あ」


母「なるほど」


責めない声。


ただ理解した声。


母、しゃがみ込む。


母「朝から派手ね」


琴葉「……」


まだ敦の服を掴んでる。


母「離してあげなさい。潰れるわよ」


琴葉「……はっ」


慌てて離れる。


敦「……大丈夫です」


母「そう。ならよかった」


それだけ。


母、スリッパを差し出す。


母「とりあえず中。玄関寒いから」


敦と琴葉、もそもそ立ち上がる。


◆ソファ


並んで座る。


さっきまでの甘さはない。


琴葉、膝を見つめる。


琴葉「……朝、何も考えてなかった」


敦「うん」


琴葉「声聞いた瞬間……勝手に」


敦「……うん」


琴葉「……なんかさ」


言葉が詰まる。


琴葉「……前は、ちょっとドキッとするだけだったのに」


指が、きゅっと握られる。


琴葉「最近……止まらねぇ」


敦、何も言わない。


琴葉「嬉しいとかじゃなくて」


琴葉「……勝手に変わるの、ちょっと怖い」


敦の喉が、かすかに動く。


敦「……俺がいる」


短い。


それだけ。


琴葉、顔を上げる。


敦「勝手に変わっても、俺がいる」


琴葉「……」


敦「それじゃ、足りないか?」


琴葉、少しだけ息が抜ける。


琴葉「……ずるい」


敦「何が」


琴葉「そういう言い方」


敦、視線逸らす。


敦「思ったこと言っただけ」


母、キッチンから声。


母「難しい顔する前に糖分よー」


ココアの香り。


母「“制御”とか後回し」


母「心は理屈で止まらないの」


琴葉「雑っ!!」


母「雑じゃない。経験」


琴葉、カップを両手で持つ。


湯気が上がる。


琴葉「……敦」


敦「ん」


琴葉「俺さ」


一瞬迷う。


琴葉「……お前の声で変わるの、嫌じゃない」


敦の指先が止まる。


琴葉「……怖いけど」


敦「うん」


琴葉「でも……嫌じゃない」


敦、ゆっくり息を吐く。


敦「お前は変わってもいい」


琴葉「は?」


敦「俺は変わらない」


琴葉「なにその理論」


敦「知らん」


母「青春だわねぇ」


琴葉「うるせぇ!!」


母「……今日は、学校は様子見ね」


相談じゃない。

でも押しつけでもない。


母「今は“戻す”こと考えなくていい」


母「落ち着く方が先」


琴葉「……」


母「勝手に変わる日もあるわよ」


母「人間だもの」


敦が小さく笑いそうになって堪える。


母「大丈夫」


母「ココア飲んだら半分は落ち着く」


琴葉「半分!?雑!!」


母「残り半分は敦くん担当」


敦「え」


琴葉「巻き込むな!!」


母「もう巻き込まれてるでしょ」


空気が、ふっと緩む。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


怖さごと、受け取る時があります。

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