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双鏡の君へー姿を変える幼馴染との恋と、残したい記憶ー  作者: ゆら。


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第百二話 平気って言うほど平気じゃない


翌朝


目覚めと同時に、布団の中で暴れる。


(待て待て待て待て待て!!

 昨日俺……女で……敦に……抱きついて……)


枕に顔を埋める。


琴葉「ぎゃあああああああああ!!!」


(覚えてる!!全部覚えてる!!

 スロー再生で覚えてる!!)


スマホが震える。


恐る恐る見る。


【敦:おはよう。昨日、大丈夫だったか】


琴葉「うわああああああああ!!!」


布団にスマホ投げる。


琴葉「やめろ!!優しくするな!!

俺のメンタルが保たん!!!」


一階から声が届く。


琴葉母「……朝から青春だねぇ♪」


琴葉父「敦くんにちゃんと責任取ってもらわんとな」


琴葉「そっとしておいてくれ!!!」


再びスマホが震える。


追撃。


【敦:風邪ひいてないか】


琴葉「過保護やめろ!!!」


顔が熱い。


でも、返信は打つ。


【琴葉:平気】


送信。


即既読。


琴葉(早ぇよ!!)


ーーー


玄関の前で敦を待つ琴葉。


(無理だ……顔見たら昨日が出てくる……)


額タッチ。


距離ゼロ。


「ほんとにするぞ」


(思い出すな!!!)


遠くから足音。


敦。


琴葉、電柱の後ろに隠れる。


敦「……丸見え」


琴葉「精神的に刺さる!!」


敦「何してんだ」


琴葉「戦術的待機」


敦「不審者」


琴葉「否定できない」


敦、隣に立つ。


近い。


触れない。


敦「……眠れたか」


琴葉「……それなりに」


敦「それなりって何だ」


琴葉「ノーカット上映会が開催された」


敦、吹き出す。


敦「俺も」


一瞬だけ、目が合う。


逸らすのは同時。


沈黙。


でも、離れない。


歩き出す。


自然に、並ぶ。


琴葉(……逃げないんだ)


敦(……逃げねぇのか)



◆下駄箱


敦、視線逸らし気味にぽつり。


敦「……猫」


琴葉「何」


敦「邪魔、入らなかったら……」


間。


敦、言葉を飲み込む。


敦「……いや」


琴葉「いや何だよ」


敦「……出来た」


言った瞬間、固まる敦。


敦「……今の無し」


琴葉「無しになるか!!」


敦「忘れろ」


琴葉「忘れられる情報量か!?」


敦「だから言いたくなかった」


琴葉「じゃあ言うな!!」


敦「お前が聞くからだろ」


琴葉「聞いてねぇ!!」


敦、耳赤い。


視線泳ぐ。


敦「……近かった」


琴葉「距離の話じゃねぇだろ!!」


敦「距離だ」


琴葉「誤魔化すな!!」


敦「じゃあ五分五分だな」


琴葉「何の比率だよ」


敦「理性 vs 本能」


琴葉「勝ったのは?」


敦「猫」


琴葉「結局猫かよ」


敦、ほんの少しだけ笑う。


敦「……だから」


言いかけて、やめる。


琴葉「だから何だよ」


敦「……朝から言わせんな」


琴葉「言い逃げするな!!」


敦、咳払い。


敦「公共」


琴葉「今更か!!」


敦「お前、声でかい」


琴葉「お前が爆弾落としたんだろ!!」


下駄箱、静か。


敦、ほんの少しだけ笑う。


敦「……昨日、来たのはお前だ」


琴葉「うっ」


敦「嬉しかった」


小さい声。


琴葉「……それは」


敦「それは?」


琴葉「ずるい」


敦「何が」


琴葉「そういうの、小声で言うの」


敦「大声で言えと?」


琴葉「言うな!!」


敦「だから別に」


琴葉「別に?」


敦「……コントロールぐちゃぐちゃだったけど」


一瞬、視線が絡む。


敦「後悔はしてない」


琴葉、黙る。


敦「猫は恨んでる」


琴葉「そこは恨むのかよ!」


柔らかい沈黙。


敦「……次は」


ほぼ独り言。


琴葉「聞こえた」


敦「聞くな」


琴葉「無理」


敦「忘れろ」


琴葉「出来るか」


チャイム。


敦、離れる。


歩き出す。


数歩進んで、振り返らずに。


敦「……顔、赤い」


琴葉「見んな!!」


敦「見える」


琴葉「視界から消えろ!!」


敦「無理」


琴葉、発狂寸前。


琴葉「俺のメンタル返せ!!」


敦、小さく笑う。


敦「昨日返しただろ」


琴葉「何を!?」


敦「心臓」


琴葉「返すな!!!」



敦、先に教室へ


琴葉、数秒固まる。


琴葉(……無理だろこれ)


耳まで真っ赤。


でも。


ちゃんと追いかける。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


朝になると、現実が追いつきます。

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