二十五 土竜活屍(マオルゾンビ)
昨日は投稿を忘れてしまい、申し訳ございませんでした。
「さっき彼は生き返ったから、多分……大丈夫」
私はゾンマーに向かって……自信なさげにそう言った。
ゾンマーは壁にイスヴァをもたれさせると、私に向かって話しかけてきた。顔はイスヴァの方に向けたままだけどね。
「あいつは本当に一度生き返ったのか……? 【終焉皇】」
「ああ、そうだ。これが嘘をついていると思うかい?」
「顔が?」
「そう、顔が」
私は『この顔が』ときちんと言ったつもりだったのだが、どうやら言えてなかったようだな。
「いや、お前の顔じゃそんなのわからないって……まあ、別に嘘だと思わないけどさ……信じるよ、信じる」
「えらく態度が軟化したな。やはり、イスヴァの影響かい? あの子はヤバいんだな」
イスヴァの言葉には力があるってこ……
「そうだな。ある意味であいつの影響を受けてるよ」
「……ん? ある意味?」
「あいつの言葉だけで俺の怒りが収まるわけねぇ。あいつの能力か何かの影響だと思ってる。いや、称号か……?」
「わから……」
「それとも、お前のせいか……?」
ゾンマーは私に魔力を込めた手を向けた。敵意がビンビン。友好的になったと思ったらこれか。あと、割り込みすぎ。
「知らないよ……でも、ありえるとは思う」
「……そうか」
「殺さないのか?」
手を下げたので私は驚く。てっきり、思い切り魔法を放ってくるものと思っていたからね。結界を張りそうになってしまった。
「いくつかお前を殺さない理由がある。一つ目は元はイスヴァだけを殺すつもりだったから。二つ目はお前を殺すことで俺に何か起きたら嫌だからだ。【終焉皇】だもんな」
私は周りを見渡しながら、聞く。襲われてもいいように。
「三つ目はな……イスヴァが死んだ今、俺に指図してきたアルッディっていうあの気に入らない馬鹿を殺せるのがお前だけっぽいからだ。四つ目はもう俺も死ぬからだ。イスヴァが死んでしまった以上、もうやりたいことなんてない。ご主人様に会いたい」
イスヴァもゾンマーもご主人様のこと好きすぎだろう。この子たちをそんなに好きにさせるご主人様とやらは一体なんなんだ。別に仲良くなりたくはないけど、一度会ってみたくなるな。
「俺を殺してくれないか? 伝説の力を味わってから死んでみたいと思っているんだよな」
「嫌だと言ったら?」
「あ? なんで? 手を汚したくないってか?」
「違うよ。手なら既に黒く汚れきっているさ。殺したくないのはそれが理由じゃない。生き返った時にイスヴァが悲しむからだ」
イスヴァは必ず帰ってくる……そう思う。何故、そう思うのかはわからないのだけれど。
「は?」
「ん、どうし……」
言い終われなかった……後ろのモグラたちの攻撃をもろに食らってしまったからね。私は吹っ飛ばされてしまう。
「なんだ、このモグラ……まだいたのか…」
先程、イスヴァが全て駆除したと思っていた。どこに潜んでいたんだ。全然、見つけられなかったぞ。
気配隠蔽能力が高いのか、転移してきたのか……どちらにしろ、非常に厄介な魔物であるようだ。先程やっていたように爪を肥大化させる前に私の闇魔法で完全に駆除する。
「【終焉皇】、こいつらさっきの奴らだよ」
「え? さっきの奴ら?」
「ああ、新しく出てきたわけじゃない。生き返ったんだ。間違いない。俺がさっきまで従えていたんだから、総数は理解してる」
生き返った……蘇生能力を有しているということか……?
「多分、勘違いしてると思うから言っとく。こいつらに蘇生能力なんてないぞ。絶対にな。あったら、操術で操ってた俺が把握してないわけないだろ。これは……」
その発言と同時にモグラは何故か……強烈な死の気配がする方へと纏まって駆けていった。
その死の気配の正体を……私もゾンマーも瞬時に理解した。いや、多分後ろに被甲目もいると思うけど、あいつもきっと理解してるはずだ。この洞窟が誰のものであるのかわかるのなら。
モグラの集団はその気配の主を自身の背中に躊躇なく乗せると、王を運ぶ従者が如く……こちらへ歩いてきた。
「……こいつの、せいだ」
念話で話したことがあるだけ……顔なんて見たことない。
……でも、ここまで強烈な死の気配を漂わせている者は他にどこにもいないし、尚且つあのような尊大な態度であることを考えると、あれが私が念話で会話をしたアルッディなのだろうな。
「久しぶりなんだよね、ゾンマー。あと、初めましてなんだよね。【終焉皇】……クロノ」
アルッディはモグラの一匹を指示で少しだけ大きくし、それを枕にして唐突に寝転がった。
舐めているとしか思えない様相だ。ヤバいな。
「君を殺す、アルッディ」
「俺もだ。アルッディ。お前だけは殺す」
「おー、悲しいんだよね。こんなに嫌われてしまうとは思ってなかったんだよね。おいおい泣いてもいいかな?」
泣けないだろ。悲しそうには見えないぞ。
挑発の意図で言ってるのだ。反応を返したら負けだと思っている私とゾンマーはそれに反応を返したりはしない。
「……無視は悲しいんだよね。土竜活屍、あそこの二匹がちゃんと反応してくれるように拘束してくれない?」
マオルゾンビ? まんまだな。マオルヴルフのゾンビだからマオルゾンビ。ゾンマーの言う通り、蘇生していたということなんだな。気持ち悪いが、羨ましい能力だ。腹が立つな。
マオルゾンビは命令が下されて五秒、間合いに入ってきた。アルッディのことを地面に丁寧に降ろして、ここまで来る時間が五秒なのだ。速い……いや、速すぎる。あまりにも。
何か他にもアルッディにされたのだろう。厄介だ。
私もゾンマーも一瞬で後退し、間合いから離れる。集団が全部あの速度。全て捌くのに一分はかかりそうだ。
もっと、便利な方法が……そうだ。
「ゾンマー、君の能力は動物とか魔物を操るものだろう?」
先程のあの様子、そして『操術』という単語を会話の中で使用していたことからの判断である。
「……ああ、だが、ゾンビ化している上にあいつの力が強すぎて弾かれるどころか発動すら不可能だ。悪い」
「いや、謝るな。君の生死には興味がないが、この癇に障る男に君を殺させたくない……私はそう思ったよ」
この男に捕まったら、ゾンマーはきっと残虐な……ヤバい殺され方をする。いや、痛めつけられて、死ぬより辛い目に遭わされる可能性も十二分にあるんじゃないかと私は考えている。
……『老化の呪い』を使うとツヴァイドから聞いてるから、それで醜い状態にされて殺されることもありうるな。最悪だ。
「うーむ……どうする……」
ゾンマーが魔法を使えるかわからない。使えたとして、それがどの程度のものなのかも未把握。
そして、私より確実に彼は弱い。操術とやらが使えるなら、頼ってもよかったが、使えないのなら下がってもらうか。
うーん……ゾンマー守護用の結界を展開しつつ、魔力球を放ってモグラを殺す方法を取りたいのだが……現実的でない。
……正直に言うと、疲れている。六十匹いるから、この数だとまあまあ強めの『強闇球』を生成しないといけない。それの生成と魔力結界の展開……魔法を知らない者にはわからないかもしれないが、これはヤバいほどに集中力と魔力を有する。
……万全時なら、その方法を取っていたが、アルッディだっていることを考えると、今は無理だ。絶対に……無理だ。
……うん、守れない。彼にはやはり、戦ってもらうか。
「……守ってやるとか偉そうな舐めたこと思ってるだろ。あのな、俺はメイドなんだよ。どちらかってーと、守る側なんだ。大人しく守られてたまっかよ。このダホカスが」
「逆だよ。戦ってもらおうかと思っていた」
「嘘つけ。はーぁ」
はぁ……本当に口も態度も悪いな。今から共闘する相手にそれはどうなんだ。本当にそう思わざるを得ない……
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