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十二 道化メイドは何を思う?【弐】

 俺、ユーング・フロイリヒートは『映像』を観るフリをして、イスヴァのことを観察していた。


 この『映像』はもう既に観てるからさー。興味持てないし持ちたくないんだわ。興味があんのはイスヴァの反応。


 それは『映像』を観せた理由の一つでもあるよー。自己(おれ)流精神力試験って奴さぁ。まあ、でもこれはあくまで理由の一つね。


 二つ目はこの『映像』に出てくる襲撃者の顔を覚えてもらいたかったから。俺はあの襲撃者を殺したいんだよねー。きちんと彼にはあいつの顔を覚えておいてもらわないと困っちゃーう。


 イスヴァに言ったシュバーインが死んだことをきちんと知ってほしいってのも嘘じゃないけど、まあ……比較的どうでもいいねー。


 だから、別にシュバーインが死ぬ瞬間まで観てもらわなくていい。死ぬ瞬間って結構キツかった記憶があるし。イスヴァの精神が壊れちゃって、称号再取得がめちゃくちゃ遅れちゃったら最悪。


「……あっ」


 やばー。もうすぐ死ぬところじゃーん。俺は慌て気味に『映像』を一時停止。


 もちろん、突然自分が観ていたものを止められたら憤慨するに決まってる。不満そうだったので、仕方なく……『映像』を観せた理由の二つ目を話して、襲撃者の殺害のお願いもやっちった。言うのが早くなっただけだから、まあいいかなって思ってる。


 ちなみに理由話した後にため息つかれたから、俺もそれに対抗してため息ついてみた。自分ばかりが苦労人です! みたいな態度って俺はくっっそ腹立つんだよね〜。


 その後、「殺してほしいってことは憎んでいるということなの?」みたいなことを聞かれたので否定。ま、好きではないが嫌いでもない。殺したいのはあの襲撃者が俺やツァウの敵対者であり、邪魔者でもあるから……的な感じで説明してみた。


 そんで称号の再取得を始めよー! って思ったところで再びイスヴァが開口。力不足で無理だとか何とか。そんなん知ってるわ。誰も今のままで戦えなんて言ってねぇから、黙っててくれよー。


「ま、今のままなら瞬殺だろうねー。俺はちゃんとそれをわかって言ってるから気にせんでいいよー」


 雑に返答。面倒の極み。


「今のままなら……?」


 イスヴァがそう言って自分の体を抱き寄せつつ、後退し始めたからさすがに怒りが頂点に達した俺はキュンに指で命令。


『強めにつついてやれー』ってね。


「痛っ」と言って頭をさするイスヴァを見て気持ちよくなりつつ、俺はイスヴァの耳へと近寄っていく。


 ちょっと不快にさせる目的で彼の耳へ、俺は自分の口から温かい息を吹きかけてみたよー。


「……っ……っ」


 よし、じゃあ説明すっか。


 【冥土王の使徒】っていう冥土王の血縁だけが得ることのできる特殊な称号……その説明ができるこの時を待っていた。


 だからこそ、俺は先程までとは打って変わってちょい気分高めに説明をしてみるのだった。






 *****






 説明は相変わらず早口でした。もうこの人は興奮すると早口になる人だってことをちゃんと理解してるので、聞き逃さないようにめちゃくちゃ集中して聞くようにしましたよ。


 称号を再取得するための準備というのは少しだけ時間がかかるようなので……


 その間に説明がどんな内容だったか、一度頭の中できちんと整理しておきますか。忘れたら、意味がないですからね。


 【冥土王の使徒】という称号についてですが、これは冥土王の血縁か冥土王が認めた者は必ず手に入る称号らしいです。


 ただ、この称号があると普通の人間として生きていけなくなるので、人間界に転移する際にツァウが自身の能力を譲渡するのと同時に奪い、ユーングさんへとその称号を預けていたようです。


 あ、そういえば、冥土城にいた時に僕が赤子言葉しか出せなかったことにも、質問したら教えていただいたんですが、あれは称号を奪った際に反動でそうなってしまったらしいですね。


 なんか、もう称号を奪われたくないと思いましたね。赤子言葉しか出せないって嫌じゃないですか。日常生活に支障でまくりですし、恥ずかしくもありますし、いいこと全くないですよ。


 はぁ、で……称号の取得の話に戻りますが、この【冥土王の使徒】という称号を再取得するには、黒魔法が使えて、あの本に書いてあった冥土王の魔力が籠った単語を読む必要があるとのこと。


 単語の字体や色が特徴的だったのは、そういうわけなのですね……などと説明された時に驚きつつ、頷いたりしました。


 称号を得たことにより、できるようになることは四つ。


 一つ目は、直接黒の魔力を創り出すことですね。今までは闇の魔力を一度創り出してから、変換させるということをする必要がありましたからね。それをしなくてもよくなるようです。


 二つ目は身体能力の一時的上昇。「一時的じゃなくて、永続的がいいんですけどー!」と悲痛な叫びを口にしたら、ユーングさんは『けっ、うるせぇな』とでも言いたげな感じで顔をしかめていました。どうやら、永続的は無理なようですね。


 三つ目は魔力の血液への変換で四つ目は反対に血液の魔力への変換。血液欠乏になったら三つ目。魔力欠乏になったら、四つ目の力を使っていけばいいですね。血液は知りませんが、魔力量は多いので、これらがあれば瀕死になることはないかもです。


 五つ目は魔力生成の高速化。僕は別に魔力生成速度で困ったことはないのですが、まあ早くなってくれるのは嬉しいですかね。


 六つ目は呪術耐性とのことですが、呪術を使う者など今でも存在するのでしょうか。孤児時代に呪術を使う者はいなくなったと同じ孤児から聞いたことがあるんですけども……


 ……まあ、いいですかね。あって困るものではないので。


 七つ目は魔力纏(まりょくてん)による身体部位の取り外しだそうです。これが一番ヤバいですよね。魔力さえ纏えば、顔すら外せるんですから。まあ、顔がないと体動かせないでそんなことはしませんが。


 その他、色々とあるようですが……取得時点ではまだ使えず、これらの力を使った戦闘の経験を積んでいくことにより、使えるようになっていくとのこと。あまりに多いので、そこの説明は割愛されました。なので、僕はそれしか知りませんね。


「……準備完了っ! じゃ、行くな〜」


「えっ、こちらは具体的に何をすれば?」


「そのままでいーよ」


「そのまま? えっ……」


 困惑しながらも直立不動で待っていると、ユーングさんは僕の目の前に立ってこう言いました。


「……そのままって言ったけど、今から目を逸らすこととまばたきは許さないよ。それをしたら君は称号を取得できねーの」


 そんなことでいいのでしょうか。僕は別に人見知りというわけではないので、基本的に他人に目を見れないということはありません。ま、状況や心境次第では見れないこともありますが。


 ……そうしてユーングさんの目を軽い感覚で見たことで僕は後悔することとなりました。


 全身の毛が粟立ちます。恐ろしい。目の前に立つ人物の……目が、とてつもなく恐ろしく思えてしまうのです。


「今、俺は『収納の魔眼』っていう魔眼から君の称号を取り出してる。取り出すだけならどこを向いていてもいーんだけど、渡すには渡す相手の目をきちんと見なくちゃいけねーの。魔眼っていうわけだから、慣れない君は恐怖を覚えるだろうけど……我慢しろ。そういうもんだ。恐怖への耐性もつけられるし、いいだろ?」


 よくないですよくないです!! 視線を逸らさないことも難しいですが、まばたきをしないのも相当辛い……目が充血して……あまりにも……キツい。なんですか、これ……おか……しい。


「……あ、ずっと無言で見つめ合うのもなんか嫌だね。今、俺が使ってる魔眼の話すっか。これは『収納の魔眼』って言うんだけどさ。物や人しか収納できない『収納』って能力と違って、魔法や能力、称号も収納することができんの。使徒でもなければ、冥土王の血縁でもない俺が君の称号を預かれたのはこの魔眼のおかげ」


「……」


「……んー、そろそろいいかな〜」


 その言葉が発せられたあたりで、ユーングさんの眼は元の状態に戻り、あれほど強かった恐怖感も霧散していきます。


 何とか僕は耐えることができましたが、あまりにも辛くて息も絶え絶えの状態で膝を地面へとつきます。


「よく頑張ったな。俺も魔眼なんて久々に使ったから目が痛てぇ〜。何か、変わった感覚はある?」


「……ありますが、言いたくないです。気持ち悪くて、喋れないんです。本当に。勘弁してください……」


 吐きそう……です。魔眼ってどれもあんな感じなんですか? 


「……ちょっと待ってくれよ〜」


 ユーングさんは鼻でため息をつくと、少しだけガッカリしたような顔で僕の肩を掴んで無理矢理に立たせました。


「……」


「……なんですか?」


 ……気持ちが悪い、です。気分が悪いという意味でもありますが、この目の前にいる人が気持ち悪いという意味でもあります。


 僕が少し目に力をいれると、ユーングさんは「よし」と言った後に僕の肩から手を離します。


「ちょっとそこまで君の気分が悪くなるとは思ってなかったけど、まーいいや。成功は成功だし〜。少し時間があるから、君が知りたいと思っていることについて、答えるとするわ」


 調子に乗っている顔を一発でいいので、平手打ちしたい。そのような衝動に駆られました。ま、やりませんが……


 キュンくんの嘲笑う顔、ユーングさんの調子に乗った顔……それを交互に見ながら僕は口を尖らせるのでした。

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