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喜之助、村に戻る

だいぶん、走った。

喜之助が木の間から下の土手を見下ろすと、目指す三人はいた。

三人は一列になって、走りながら探している。

喜之助は先頭を走っている男の背中に、狙いをつけた。

弓矢は男の背中に、ドスン!と音を立てて当たった。

後ろを走っていた二人が、驚く。

慌てて何処(どこ)から矢が射(い)られたのか、辺りを見回している。

しかし、シーンと静まり返った森の中、何処から矢が飛んできたのか見当がつかない。

二人の男が躍起になって見つけ出そうとしている最中、喜之助は木陰から二の矢を放った。

矢は、最後尾を走っていた男の背中に命中した。

それを見た残りの男は身をかがめて、木の陰に隠れた。

ここからでは遮蔽物(しゃへいぶつ)が邪魔して、うまく射止める事は出来ない。

喜之助は三の矢を引くのをあきらめると、刀に切り替えた。

今の所、相手は木の陰に隠れたまま、動く気配はない。

良かろう、動かぬのであればこちらから行ってやる。

喜之助は大きく迂回(うかい)しながら、木のそばへと近づいて行った。

すると相手は怖じけずいたらしく、背を向けて全速力で逃げ出した。

そんなに的になりたいか。

喜之助は再び矢を構えると、数十歩離れた相手に狙いを定めた。

逃げる男はさらに速く走り、もうこれだけ離れれば命中させる事は出来まい、と思って後ろを振り返った。

だが、男の考えは甘かった。

振り向いた途端、矢が飛んできて胸に命中し、男はひっくり返って絶命した。

これで、追いかけてきた十人は片付けた。

村に戻らなければならない。

村にはまだ、刑部の手下がわずかだが残っているのだ。

村の方角に駆けて行く喜之助の脳裏には、村人たちの安否で一杯だった。

待っていろ、刑部。

貴様と一戦、交えてやる。


    ――――――――――――――――――――


喜之助は、村にたどり着いた。

相変わらず農家の棟は、炎が音を立てて燃えている。

しかし、そこには人の気配がなかった。

いるのは喜之助だけで、誰の姿も見えない。

村野者たちは、安全な場所に逃げたのだろうか。

だがまだ賊たちは、まだここに残っているはずだ。


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