山中での闘い
しばらく行くと話し声が聞こえてきたので、喜之助は身を屈めた。
「おい、見つかったか?!」
「まだ、見つかりません!
それよりも、三人の姿が見つかりません!」
左平次と伝右衛門と伊織です!」
「何ィ~、三人もいなくなっただと~?!」
「恐らく、あの喜之助と申す輩に殺されたと推察します!」
賊のやり取りが、聞こえてきた。
静かに這って声のする方向に行くと、木陰から賊五人の姿が見えた。
「三人も殺されてしまったと言うのか~?!」
喜之助は木陰から、相手方を観察した。
五人の内、一人は弓矢を持っている。
村に火を放った時の、弓矢だ。
喜之助の真正面にいる男は、背を向けている。
やるなら、今だ。
出し抜けに木陰から出ると、目の前にいる男の
背中を斬った。
喜之助の突然の襲撃に賊たちは皆、驚いている様子だ。
「おのれ~、よくも!」
賊たちは一斉に刀を抜き、襲ってきた。
最初に襲ってきた男は、正国で刀を弾き
飛ばした。
男は手から刀が無くなって、驚いている。
喜之助は男が刀を拾おうとした隙に、斬った。
戦場でいちいちそんなことに慌てふためいていては、真っ先に斬られるだけだ。
「まとめてかかれいっ!」
一人ずつでは勝ち目がないと分かると、三人の男は固まって喜之助に詰め寄った。
喜之助はどんどん後退して行き、ついに背中を大木にぶつけた。
その途端、三人の男は一斉に襲いかかってきた。
喜之助は素早く大木の後ろに回って、すぐ飛び出した。
一番右にいた男を、斬る。
残る二人が、同時にきた。
喜之助はまた、木の陰に隠れた。
男の刀は喜之助ではなく木を斬りつけ、刃先は木にめり込んでしまった。
喜之助は木の左側から出ると、もう一人の男を斬った。
最後の一人となった男は、木に刺さった刀を抜こうと必死になっている。
喜之助はもがいている男に言った。
「心安く眠れい」
そう言うと、斬った。
男は最後まで、刀を引き抜く事が出来ずに死んだ。
喜之助はしゃがむと、男が肩にかけていた弓矢を頂戴した。
弓矢があれば、敵に接近せずとも闘える。
「後、三人」
そうつぶやくと、山中を走って消えてしまった。




