見つかった喜之助
もう完全に太陽は東の山から昇りきり、橙色に染まっていた。
喜之助たちは村の方角から、煙が空高く舞い上がっているのを見た。
「どうなっとるんじゃあ・・・?」
「わしの家があぁぁぁ、わしの家族がぁぁぁ!」
「およね!茂吉!」
皆、誰もが動揺している。
喜之助も茜と子供の事が、気になった。
ひょっとすると、逃げ遅れたかも知れない。
そんな事を考えると、居ても立ってもいられなくなった。
喜之助たちは急いで畑から、村へ引き返した。
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刑部の軍団は徐々に、村人たちを村の中央に集めていった。
その中には、幼き子供を抱えた親が大勢いた。
浪人たちは村人が逃げ出さぬよう、しきりに刀で威嚇している。
「静かにしねえと、ブッた斬るぞ!」
そんな怒号が、あちらこちらから聞こえてきた。
生き残った村人たちはなす術もなく、ただ黙って言いなりにならざるを得なかった。
怯え切った村人たちの顔を一人ずつ見て行って、刑部は段々と腹が立ってきた。
何故喜之助は、この場にいない?
もしかすると、殺してしまったのか?
いや、そんなに簡単に死ぬ男ではない。
奴はこの村のどこかに、必ずいる。
何処に隠れようが、ムダな事だ。
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喜之助たちは、ほとんどの家屋が燃えている場所に着き、棒立ちになった。
皆、心神喪失と言った感じである。
地面のあちこちには、焦げた焼死体が転がっていた。
ある者はガックリと地面に両膝をつき、下を見つめた。
「どうしてこんな事に・・・?」
喜之助はこれは単なる火事ではない事が、すぐに分かった。
何軒かの家屋の屋根には途中で火が消えてしまった矢が、突き刺さっていたからだ。
新手の盗賊の仕業か?
まだ近くにいるのだろうか?
そんな事を考えていると、武器を持った数人の浪人が現れた。
「あ~、見つけたぞぉ。
こんな所にも、いやがったのかあ。
貴様らも大人しく、人質と一緒になれ」
浪人の一人が言った。
喜之助の隣にいる村人は、怒りで拳が震えた。
「お前らかぁ、わしらの村をこんなにしやがったのはぁ?!」
村人は浪人に殴りかかろうとしたが、あっさりと斬られて倒れてしまった。
「どうしたあ、威勢のいいのはさっきの男だけか?!
もっと骨のある奴はおらんのかあ?!」
挑発する浪人たち。
さらに喜之助の後ろから、二人の村人が前に進み出た。
喜之助はすかさず両手で、二人の袖をつかんだ。
「よせ。死を恐れない勇気は必要だが、不必要に死ぬ事はない。
ここは怒りを静めて、言う事に従うんだ。
必ず、活路は開ける」
喜之助は、二人を説得しようとした。
バカな事で、命を落とすんじゃない。
村人の二人は喜之助の言葉の真意を汲み、後ろに引き下がった。
「そうそう、その方が賢明だ。
さあ、大人しくついてきてもらおうか。
お仲間たちが首を長くして、待っとるぜよ」
浪人たちはまた刀で威嚇して、喜之助らを村の中央まで連行した。
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村人たちが一ヵ所に集められている場所に、喜之助らは連れてこられた。
泣き叫ぶ子供たちの声で、耳を塞ぎたくなるほどやかましい。
辺りでは家々が燃え、白煙を空にたなびかせている。
不意に喜之助は、背後から声をかけられた。
「久し振りじゃのう、喜之助」
聞き覚えのある声に、ギョッとなり後ろを振り返った。
そこには、刑部が立っていた。




