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鉱山からの脱出

そこで耳を手でふさぎ、目を閉じた。

その時、耳をつんざくような轟音が、坑内に響き渡った。

地面が、揺れまくっている。

爆薬が、爆発したのだ。

頼む、ここの天井だけは何とか持ちこたえてくれ。

そうでなければ、崩れ落ちた天井の重みで、押し潰されてしまうだろう。

しばしの悪夢の後、坑内は静まり返った。

喜之助は、目を開けた。 

果たして、自分以外に生き残っている者がいるだろうか?

しかしそんな事を考えてみても、どうしようもない。

そんな事よりも、この地獄から抜け出る事が大事だ。

喜之助は窪みから出ると、脱出路を探しに行った。

強制労働の最中、喜之助はいつも坑内の脱出ルートを捜索していた。

それが思いも寄らず、こんな時に役立つとは。

この地獄の底から確実に陽光を拝むためには、地下水路を通って地表へ出る事だ。

金を堀る最大の難関は、水との闘いだった。

喜之助も湧水が出ると、水上輪を使って水を出す作業をさせられた。

また洪水で水没した坑道の水を排出するために別の穴を堀り、水を海へ流す作業もよくやった。

問題はその地下水路を、先の爆発で押し潰されていないかだ。

もし潰れれていれば、永遠にこの地獄からは出れないだろう。

地下水の流れている場所までたどり着区のに、火はもつだろうか。

ダメなら、手探りでも行ってやる。

喜之助は一本の明かりの元、暗闇の中を進んで行った。

少しばかり行くと、水の流れる音が聞こえてきた。

かなり近くなったのが分かる。

だが残念な事に、板切れの火は消えてしまった。

後一歩だと言うのに!

真っ暗になってしまって、視界は全く見えない。

後は耳を頼りに、地下水までたどり着くしかない。

もしこのまま、出られなかったら?

喜之助の脳裏に、不安が襲いかかった。

もしそうなればなったで、構わない。

元々、わしのような人殺しが生き延びる事自体、間違っている。

そんな事を考えている内に、水の音が大きくなった。

後、ほんのわずかだ。

今、水流の上に自分はいる。

一歩進むごとに、水しぶきが音を立てる。

わしは地下水が流れている所まで、たどり着く事が出来たのだ。

徐々に水深は、深くなっていく。

それに連れて、水位もどんどん高くなっていく。

水の深さは、喜之助の首筋までになってきた。

それに地下水は、段々と冷たくなり、身を刺すような感覚になった。

このまま長時間冷水に浸っていたら、低体温で死んでしまう。

水深はついに、喜之助の背より高くなった。

水と天井の間に、わずかに隙間があった。

喜之助は首を上に上げると、隙間の間で息をした。

このままで、地表に出る事は出来るのだろうか?

手探りだけで進んで行くと、急に水の流れが早くなった。

必死に壁の岩にしがみついたが、水の流れには逆らえない。

喜之助はどんどん、流されていく。

流される途中で息をしに、天井近くに浮上した。

それを何度か繰り返す内に、天井に頭を思い切りぶつけてしまった。

喜之助は水中で頭を抱え込んで、もがいた。

水中で四苦八苦している最中に、前方が明るくなっているのに気づいた。

あれは太陽の光か、あの世への光か。

喜之助は、宙を浮いている感覚を覚えた。

その途端、喜之助の体は水面に叩きつけられた。

そのまま、体は水中に沈んでいく。

だがそこは、真っ暗闇の世界ではなかった。

水面上から、太陽の光が差し込んでいるのが見えた。


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