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河原での決闘

大分、金が底をついてきた。

今度はどこの家を襲おうか。

そんな事を思いふけりながら、喜之助は鴨川の河原に寝っ転がった。

満月が輝いて見える。

父母を殺され、姉を奪われた夜も月だけは美しかった。

美代はどうしているのだろうか。

生きているか、死んでいるかも分からないなんて。

喜之助の目から、涙がこぼれ落ちた。 

もう、やめよう。

美代の事を考えるのは。

いくら考えた所で、最後には悲しくなるだけだ。

さあ、寝るぞ。

喜之助は安い木賃宿に泊まる金すらも、持っていなかった。

ウトウトとしかけた時に三、四人の足音がこちらに近づいてきたのが聞こえた。

そいつらもわしと同じで、河原に涼みにきたのか。

いや、それは違う。

直感で危険だと察知した喜之助は、横に置いていた正国に、手を伸ばした。

近づいてきた連中の一人が、喜之助を指差して言った。

「こいつです。間違いありません」

「この野郎か。

我が師匠、時玄流開祖である大江安直様を打ち負かしたというのは」

形相の悪い男が、喜之助をジロリと見て言った。

全部で五人。

五人共、喜之助を目の仇のように見ている。

今にも、襲いかからんばかりだ。

やれやれ、逆恨みとは正にこの事か。

喜之助は正国を持つと、地面に立った。

「わしに何か恨みでもあるのならば、かかってくるが良かろう。

しかし殺されても、一切文句は言うな」

そう言い切ると、正国を抜いた。

月光に照らされ、暗い中で真剣の刃が不気味に光った。

それを見た五人は一瞬、たじろいだ。

だが五人の頭領らしき男が、喝(かつ)を入れた。

「ひるむな!我らの師匠の仇を取るのだ!」

五人は一斉に、喜之助に向かった。

手には五人共、木刀を持っている。

喜之助は背を向け、逃げた。

敵の数を、分散させるためである。

鴨川の中を走って向こう岸までたどり着くと、振り返った。

五人共、走ってる間隔が離れてある。

よし、一人ずつぶった斬ってやろう。

まず、最初の一人目だ。

そいつは木刀を、振り上げてきた。

喜之助は自分の頭上に飛んできた木刀を、正国で叩き割った。

男は木刀を簡単に割りばしのように割られて、驚いている。

驚く隙を与えず、喜之助は男を斬った。

男は鴨川の水中に、倒れた。

次は男二人が、同時に向かってきた。

喜之助に対し、右側と左側から木刀を振り上げた。

左側の奴の方が、二歩早かった。

喜之助は身をかがめると左側の男の木刀をかわし、背後に回り込んだ。

男と喜之助は背中合わせに、立つ格好になった。

右側の男が、喜之助に木刀を振り下ろした。

喜之助は素早く離れ、男は喜之助の頭ではなく、背後の仲間の男の頭を思い切り木刀で殴ってしまった。

殴られた男は脳震盪を起こし、川の中に倒れてしまった。

殴り損じた男と喜之助は、対峙した。

早く斬らないと、残りの二人にも追いつかれる。

喜之助は男に向かった。

男は下から、喜之助の脇腹を叩くつもりだった。

だがそれは予測されてたかのように、刀でガードされた。

喜之助は刀を持っていない左手で、男の肩を押した。

男はバランスを崩して、よろけた。

その一瞬の隙に、男の胸を正国でバッサリと、えぐった。

男は水中に倒れた。

鴨川は死体から流れる血で、赤い川に染まっている。

三人の男を殺すのに、三つ数える間しか経ってない。

最後尾を走っていた二人が、バシャバシャと水しぶきを立てながらきた。

初めの男は木刀で喜之助の頭を殴りつけるつもりだったが、横によけてかわされてしまった。

喜之助は木刀を左手でガッチリとつかみ、右手で正国を男の胸に突き刺した。

背中から、刃が突き抜けて出た。

喜之助はそのまま刀を抜かずに、男の体を盾代わりにして、最後の男に突進した。

刃が背中から出た状態で、男の胸に刃の先を突き刺した。

最後尾の男は木刀を手から落とすと、ひっくり返って川の中で死んだ。

喜之助は正国を抜くと、貫通させた男の死体を川へ捨てた。

辺りを見回すと、一息ついた。

死ぬ覚悟でわしに刃向かってきたんだから、これで本望だろう。

しかし、えらい事になった。

翌朝には死体が見つかって、一騒動が起きるはずだ。

早くこの場から、離れなければ。

長居は無用だ。

喜之助は殺害現場からずらかろうとしたが、ふと足を止めた。

待てよ。このままズラかってしまっては、もったいない。

この五人の愚か者どもは、何か金銭を持っていないのだろうか。

喜之助は川まで引き返し、死体を調べ始めた。

一人目の男から、財布が見つかった。

すぐ中身を調べると、当分食っていけるだけの額はあった。

急いで、次の男の財布も抜き取った。

五人分合わせると、当分の間は金の心配をする必要がない。

これは儲け物だ。

わざわざ死ににきてくれて、土産まで残してくれるとは。

喜之助は意気揚々として、現場から立ち去った。


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