表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅する先生と、世界の教室  作者: 最後に残った形


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/204

第3章 第2話:野球の授業――三振を怖がる四番


 夏のグラウンドには、逃げ場のない音があった。


 金属バットがボールを弾く音。


 スパイクが乾いた土を削る音。


 白球がミットに収まる音。


 外野から響く掛け声。


 そして、バックネット裏の木陰で鳴く蝉の声。


 地方高校の野球部は、朝から練習を始めていた。夏の大会を一週間後に控え、グラウンドには張りつめた空気が漂っている。


「悠真、次!」


 監督の佐伯が声を張った。


 四番打者の悠真は、ヘルメットをかぶり直して打席に入った。


 背は高く、肩幅もある。春までは、誰もが彼の打球を見て目を輝かせた。外野の頭を越す長打。フェンス直撃の二塁打。芯で捉えた時の音は、ほかの部員とは違っていた。


 だが今、そのバットは重そうに見えた。


 悠真は構える。


 以前より、バットを少し短く持っていた。


 本人は無意識だった。だが、短く持つことで確実に当てようとしているのは明らかだった。


 投手が振りかぶる。


 一球目。


 外角低め。


 悠真の目はボールを捉えていた。


 けれど、バットは出ない。


「ストライク!」


 捕手のミットが乾いた音を立てる。


 佐伯監督が腕を組んだ。


「今のは見えていただろ」


「はい」


「なら振れ」


「はい」


 二球目。


 内角高め。


 悠真の体がわずかに引ける。


 バットは半分だけ出て、止まった。


「ストライク!」


 ベンチの空気が少し重くなる。


 悠真は唇を噛んだ。


 振ろうとしている。


 振らなければならないことは、わかっている。


 でも、最後の瞬間に体が止まる。


 三球目。


 外角低め。


 スライダー。


 悠真は見た。


 見えた。


 去年の夏、最後に見逃した球と同じ軌道に見えた。


 バットが出ない。


「ストライク、バッターアウト!」


 練習なのに、胸の奥が冷たくなった。


 三振。


 まただ。


「悠真!」


 佐伯監督の声が飛ぶ。


「振らなきゃ何も起きないぞ!」


「はい!」


「思い切って振れ!」


「はい!」


 悠真は打席を出た。


 返事だけは大きかった。


 だが、胸の中では何も動いていない。


 思い切って振れ。


 何度も言われた。


 自分でもそう思う。


 それなのに、ボールが来ると体が止まる。


 怖いのだ。


 三振が。


 空振りも怖い。


 見逃しも怖い。


 振っても当たらないかもしれない。


 振らなければ、また見逃し三振だ。


 どちらにしても、あの夏へ戻される。


 部室の壁には、去年の大会の写真が貼られている。


 最終回。


 二死満塁。


 一点差。


 打席には四番の悠真。


 スコアボードには相手校の名前と、自分たちの学校の名前。


 その写真を見るたび、悠真は喉の奥が詰まる。


 最後の球は外角低めだった。


 見逃した。


 審判の右手が上がった。


 試合が終わった。


 仲間たちは泣いた。


 悠真はバットを握ったまま、動けなかった。


 それ以来、彼は三振が怖くなった。


 怖いと言うことすら、怖かった。


 四番だから。


 主将だから。


 打たなければならないから。


 午前練習の途中、グラウンドの入口に一人の先生が立っていた。


 黒い上着に、使い込まれた革の鞄。


 白いラインの引かれた野球場には少し不思議な姿だったが、その人はバックネット越しに打撃練習をじっと見ていた。


「白瀬先生」


 佐伯監督が気づいて歩み寄る。


「遠いところをありがとうございます」


「こちらこそ、呼んでいただきありがとうございます」


 その人――白瀬灯理は、軽く頭を下げた。


「今日は少し、授業に混ぜてもらいます」


 部員たちが小さくざわついた。


 旅する先生。


 いろいろな学校を回って、授業をしている先生。


 昨日、佐伯監督から紹介されていた。


 悠真はベンチの端で水を飲みながら、灯理を横目で見た。


 野球の先生ではなさそうだ。


 だが、その目は、ただ珍しがっているだけではなかった。


 彼女は打球の飛距離よりも、打つ前の悠真の手元を見ていた。


 バットを短く持つ指。


 投手が動き始めた瞬間に固まる肩。


 見逃した後、すぐに目を伏せる癖。


 佐伯監督が言った。


「うちの四番です。力はあるんですが、今は迷っている」


 悠真は顔をしかめた。


 迷っている。


 そんな柔らかいものではない。


 もっと重く、体の奥に絡みついているものだ。


 灯理はしばらく打撃練習を見た後、グラウンドの黒板代わりに使っているホワイトボードの前に立った。


「少しだけ、練習を変えてもいいでしょうか」


 佐伯監督が眉を上げる。


「何をしますか」


「三振を記録します」


 部員たちは一斉に顔を上げた。


「三振を?」


「はい」


「それ、反省会ですか?」


 捕手の健太が聞いた。


「反省も含みます。でも、責めるためではありません」


 灯理はホワイトボードに大きく書いた。


『三振の記録』


 その下に、三つの欄を作る。


『見た球』

『振れなかった理由』

『次に確かめること』


 悠真は眉を寄せた。


 三振の記録。


 そんなもの、見たくもない。


 佐伯監督も少し戸惑っていた。


「白瀬先生、三振は確かに振り返るべきですが、彼らは大会前です。あまり失敗を意識させすぎるのも」


「はい」


 灯理は頷いた。


「でも、三振はただの終わりではなく、三つの球を見た記録でもあります」


 悠真の胸が小さく動いた。


 三つの球。


「先生、三振は失敗です」


 悠真は気づけば言っていた。


 部員たちの視線が集まる。


 灯理は悠真を見る。


「うん。失敗かもしれません」


「かもしれないじゃなくて、失敗です。アウトですから」


「では、その失敗の中に、何球分の情報があった?」


 悠真は言葉を止めた。


「……三球」


「なら、三つ学べるかもしれない」


 グラウンドに風が吹いた。


 土埃が白線の上を流れていく。


 悠真はホワイトボードの文字を見つめた。


 三振。


 終わり。


 責任。


 敗北。


 ずっとそう思っていた。


 だが、三つの球を見た記録。


 そんなふうに考えたことはなかった。


 午後の練習では、一人ずつ打席に入り、結果ではなく球ごとの記録を残すことになった。


 打った球も、見逃した球も、空振りした球も書く。


 特に三振した場合は、三球それぞれについて記録する。


 部員たちは最初、不満そうだった。


「打てたら記録しなくていいですか」


「打っても記録します」


「えー」


「面倒くさい」


 佐伯監督が一喝する。


「面倒なことをやれ。試合で面倒な球が来た時に困らないためだ」


 灯理は苦笑した。


 悠真の番が来た。


 投手は二年生の速水。


 速球とスライダーが武器の右投手だ。


 悠真は打席に入る。


 バットを握る。


 また、短く持っていることに気づいた。


 少しだけ握りを直す。


 投手を見る。


 一球目。


 内角ストレート。


 速い。


 体が反応する。


 だが、バットは出ない。


「ストライク!」


 健太がミットを返す。


 悠真は奥歯を噛んだ。


 ベンチに戻ってから記録するのでは遅い、ということで、打席の後ろに控えているマネージャーが球をメモしている。


 二球目。


 外角低め。


 ボール。


 悠真は見送った。


 これはいい。


 見送るべき球だった。


 三球目。


 真ん中寄りのストレート。


 打てる。


 今だ。


 頭ではわかった。


 だが、体がほんの少し遅れた。


 バットは出たが、空を切った。


「ストライク!」


 空振り。


 ミットの音がやけに大きく聞こえた。


 四球目。


 外角低めのスライダー。


 去年の球。


 そう思った瞬間、体が固まった。


 ボールはストライクゾーンへ滑り込む。


「ストライク、バッターアウト!」


 三振。


 悠真はバットを下ろした。


 視界の端が暗くなる。


 まただ。


 去年と同じ。


 体が動かない。


 ベンチへ戻る足が重い。


 佐伯監督が何か言いかけた。


 だが、その前に灯理が記録用紙を差し出した。


「悠真くん。今の三振、書いてみましょう」


「……今ですか」


「はい。今見えたものが、消えないうちに」


 悠真は紙を受け取った。


 手が少し震えている。


 一球目。


『内角ストレート。見えたけど体が出なかった』


 二球目。


『外角低め。ボール。見送った』


 三球目。


『真ん中。振ったけど遅れた』


 四球目。


『外角低めスライダー。怖かった。見逃した』


 最後の行を書いた時、胸の奥が痛んだ。


 怖かった。


 その言葉を、自分で書いた。


 初めてだった。


 灯理が紙を見る。


「最後の球は、振れなかった?」


 悠真はすぐに「はい」と言いかけた。


 でも、紙の文字が目に入った。


 怖かった。


 見逃した。


「……振れなかったんじゃない」


 声が小さくなった。


「振らなかった。怖かったから」


 灯理は頷いた。


「それは、大事な違いですね」


 佐伯監督は黙って聞いていた。


 悠真は紙を握りしめた。


 責められると思った。


 情けないと言われると思った。


 四番が怖がるなと言われると思った。


 だが、灯理はただ問いかけた。


「次に確かめることは?」


 悠真は顔を上げた。


「次?」


「はい。今の記録から、次の打席で何を確かめたいですか」


 悠真は考えた。


 外角低めのスライダー。


 去年の記憶。


 見逃す恐怖。


 振る恐怖。


「最後の球と同じところに来たら、振る準備をする」


「振れるかどうかではなく?」


「はい。まず、準備」


 灯理は微笑んだ。


「いいと思います」


 次の打席では、悠真は初球をファウルにした。


 内角の速球。


 詰まった当たりだった。


 だが、バットは出た。


 ベンチから声が飛ぶ。


「いいぞ!」


「振れてる!」


 二球目はボール。


 三球目、外角低め。


 悠真の体がまた固まりかけた。


 だが、今度は足の親指で地面をつかむように意識した。


 構え直す。


 振る準備。


 スライダーではなく、外へ逃げるストレートだった。


 バットは出た。


 空振り。


 それでも、出た。


 四球目。


 高めのボール球。


 手を出しかけて止める。


 五球目。


 外角低めのスライダー。


 また来た。


 悠真は息を吸った。


 去年の夏が、一瞬だけ重なる。


 審判の声。


 仲間の泣き顔。


 スコアボード。


 だが、今は練習だ。


 今は、次の球を見るための打席だ。


 バットを出す。


 空振り。


「ストライク、バッターアウト!」


 また三振だった。


 だが、ベンチの空気はさっきと少し違った。


 悠真は自分から記録用紙を取った。


『外角低めスライダー。振った。空振り。思ったより落ちた』


 書きながら、少しだけ息が楽になった。


 三振した。


 でも、終わりではなかった。


 見た。


 振った。


 空振りした。


 落ちた。


 その情報が残った。


 夕方、練習試合が行われた。


 相手は近隣校の野球部だった。


 大会前の調整試合。


 グラウンドには、部員の家族やOBが数人見に来ていた。去年の夏と同じような空気が、悠真の背中を冷たくする。


 試合は一点差で進んだ。


 七回裏。


 二死一、二塁。


 打席には悠真。


 四番。


 場面としては、嫌になるほど整っていた。


 去年と似ている。


 ベンチから声が飛ぶ。


「悠真、頼むぞ!」


「一本!」


「思い切っていけ!」


 悠真は打席に入った。


 相手投手は左腕。


 制球がよく、外角低めを丁寧についてくる。


 一球目。


 外角ストレート。


 見送る。


「ストライク!」


 ベンチが少しざわつく。


 悠真は一度バットを外した。


 記録するように、頭の中で言葉にする。


 外角ストレート。少し遠い。でもストライク。


 二球目。


 内角へのボール。


 体は引かなかった。


 見送る。


 三球目。


 外角低め。


 スライダー。


 去年の球。


 悠真の肩が固まりかけた。


 その時、ベンチから佐伯監督の声が飛んだ。


「悠真!」


 いつもの「振れ」ではなかった。


「何を見た!」


 悠真は一瞬、驚いた。


 何を見た。


 その問いが、打席の中に届く。


 投手がセットに入る。


 悠真はバットを握り直した。


 今見たのは、外角低めのスライダー。


 少し早く曲がり始めた。


 捕手はまた外に構えている。


 次も、来るかもしれない。


 四球目。


 外角低め。


 ストレート。


 悠真は手を出さない。


 ボール。


 カウントは二ボール二ストライク。


 次で決まるかもしれない。


 怖い。


 やはり怖い。


 三振したくない。


 また、あの音を聞きたくない。


 だが、怖いことを書いた。


 怖いと認めた。


 怖いまま、準備することはできる。


 五球目。


 投手の指からボールが離れた。


 外角低め。


 スライダー。


 悠真の目には、ボールが途中から少し沈むのが見えた。


 バットを出す。


 芯ではない。


 先に当たった。


 打球は高く上がる。


 ライト方向。


 外野手が下がる。


 フェンスまでは届かない。


 ライトが落下点に入る。


 捕球。


 アウト。


 外野フライだった。


 ホームランではない。


 ヒットでもない。


 試合をひっくり返す一本でもない。


 だが、悠真は一塁へ数歩走った後、足を止めた。


 バットは振り切っていた。


 最後まで。


 ベンチから声が上がった。


「ナイススイング!」


「いいぞ、悠真!」


「次だ、次!」


 悠真はヘルメットのつばを少し下げた。


 涙が出そうになったからだった。


 打てなかった。


 でも、逃げなかった。


 三振ではなかったからではない。


 振ったからだ。


 怖い球に、バットを出したからだ。


 試合はそのまま一点差で負けた。


 整列し、礼をする。


 悔しさはあった。


 勝ちたかった。


 最後に打ちたかった。


 だが、去年のように足が地面に縫いつけられる感じはなかった。


 ベンチに戻ると、悠真は自分からスコアブックを開いた。


 マネージャーが驚いた顔をする。


「悠真?」


「書かせて」


 空欄に、鉛筆で書く。


『外野フライ。外角低めスライダー。怖かった。でも振れた。少し先。次はもう少し引きつける』


 その横に、午前中の記録も書き足す。


『三振。外角低め。怖かった。でも見えた』


 文字はきれいではなかった。


 だが、自分の言葉だった。


 佐伯監督が隣に立った。


「悠真」


「はい」


「最後の打席、何を見た」


 悠真はスコアブックを見た。


「外角低め。曲がり始めが早かったです。少し待てばよかった。でも、振れました」


「そうか」


 佐伯監督は短く言った。


 それから、少しだけ声を柔らかくした。


「次、見よう」


 悠真は顔を上げた。


「はい」


 放課後のグラウンドには、夕日が長い影を落としていた。


 部員たちは片付けをしている。


 ネットを運び、ベースを外し、ボールを数える。


 悠真は一人、バッターボックスのそばに立っていた。


 足元の土は、何度も踏まれて固くなっている。


 去年の夏も、土はこんな色だっただろうか。


 覚えていない。


 覚えているのは、見逃した球の軌道と、審判の声と、終わった瞬間の空の白さだけだった。


 白瀬灯理が近づいてきた。


「お疲れさまでした」


「負けました」


「はい」


「打てませんでした」


「はい」


「でも、前より少しだけ、次がある気がします」


 灯理は頷いた。


「今日の打席から、何を持って帰りますか」


 悠真は少し考えた。


「怖かったこと」


「うん」


「怖くても振れたこと」


「うん」


「あと、外角低めのスライダーは、思ったより早く見切らないといけないこと」


 灯理は微笑んだ。


「とても具体的ですね」


「三振の記録、嫌でした」


「そうでしょうね」


「でも、書いたら、三振がただの黒い塊じゃなくなりました」


「黒い塊?」


「去年から、ずっとそうでした。三振って言葉だけで、全部が固まっていた。でも、一球ずつ書いたら、少し分かれました」


 悠真はバットを見た。


「見逃した球。振れなかった球。振ったけど当たらなかった球。本当は振りたかった球」


 灯理は静かに聞いていた。


「先生」


「はい」


「三振は、なくならないですよね」


「たぶん」


「大会でも、するかもしれない」


「はい」


「それでも、四番でいていいんでしょうか」


 灯理はすぐには答えなかった。


 グラウンドの向こうでは、佐伯監督が部員たちと一緒にネットを片付けている。監督なのに、自分でも土埃をかぶりながら動いていた。


「四番は、三振しない人のことですか」


 灯理が尋ねた。


 悠真は黙った。


「それとも、打席から何かを持ち帰って、次の打席へ立つ人のことかもしれない」


 悠真はバットを握った。


 まだ答えは出ない。


 でも、その問いは胸の中に残った。


 夜、灯理は学校の校門を出た。


 遠くから、グラウンド整備の音が聞こえている。トンボが土をならす音。部員たちの掛け声。ボールを倉庫にしまう音。


 佐伯監督が追いかけてきた。


「白瀬先生」


「はい」


「今日はありがとうございました」


「こちらこそ、いい練習を見せていただきました」


 佐伯は少し困ったように帽子を脱いだ。


「私はずっと、悠真に振れと言っていました」


「はい」


「間違ったことを言ったとは思っていません。打者は振らなければ始まらない」


「そう思います」


「でも、あいつが何を見て、何を怖がっているのかを、聞いていなかった」


 佐伯はグラウンドを振り返った。


 悠真がスコアブックを抱えて、部室へ向かっている。


「明日から、打席の後に聞いてみます。振れたかどうかだけじゃなく、何を見たか」


 灯理は頷いた。


「きっと、打席が少し変わります」


「三振も減りますかね」


「それは、私にはわかりません」


 佐伯は苦笑した。


「そういう答えでしたね」


「でも、三振の後に残るものは増えるかもしれません」


 佐伯は少し黙り、それから深く頷いた。


「それで十分かもしれません」


 校門の外には、夕暮れの田んぼ道が続いていた。


 夏の匂いが濃く、遠くで蛙が鳴き始めている。


 灯理は鞄を持ち直した。


 中には、次の依頼状が入っている。


 高地の陸上クラブから届いたものだった。


 けれど、灯理はすぐには開かなかった。


 今はまだ、グラウンドから聞こえる音を聞いていたかった。


 金属バットがラックに戻される音。


 スコアブックが閉じられる音。


 そして、誰かが小さく呟く声。


「次、見るぞ」


 それはたぶん、悠真の声だった。


 灯理は静かに微笑み、夏の田んぼ道を歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ