第六話 変化
ストックがなくなったので、ここからは僕の書くスピードと毎日の戦いです!
頑張ります!
無理矢理中断された深呼吸を行うと同時に俺は視線を地面に空いている穴に目を向ける。
敵は最後の最後、今際の際まで俺を殺せる方法を探していた。
残された力で一丁の銃を顕現させ、背後から浮遊させた銃で俺を射殺しようとしていた。
その執念の深さに嫌な汗が背中を伝り落ちていくのを感じた。
背後を見ても、銃は浮いておらず、敵が死亡し魔眼の能力が解除されたことを証明していた。
そして、俺が動揺している理由はもう一つある。
俺は『螺旋』を使い、敵の頭を潰した。当然、敵の頭から上は何も残らないはずである。
しかし、そこには一ついや、一対だけ残っているものがあった。
魔眼。それだけは無傷でそこにあった。
虹彩には銃のスコープのような模様が描かれており、まるで人体とは別の物質だとは言わんばかりに全く血で汚れていなかった。
その状態に不気味さを覚えるには十分だった。
なのに、俺はそれを手に取っていた。
不気味さ以上に俺の本能が訴えかけてきていた。
ーーーこれはこの先の魔眼戦争を生き抜く上で必ず必要になる。と。
初めて手に持った魔眼は、なんとも異質な物体だった。
重さは感じられないほど軽いのに、指越しに絶対に壊れないと思えるほどの硬さを感じた。
俺は手に持った魔眼をポケットにしまった。
* * *
家に帰ると、去時音は無事に帰れていたようで、俺のことを出迎えてくれてた。
「おかえり」
その一言で俺の中から温かい気持ちが溢れ出てきた。
勝てるなんて確証は全くない中、綱渡りの連続の果てに、やっと生存を勝ち取った。
ここに来て、初めて戦い抜いたという実感が湧き、戦いの緊張が解れた。
「…ただいま」
「無事に、って怪我してるじゃない!すぐに治すからじっとしてて」
俺は言われて自分の体をよく見てみる。
銃弾が直撃することはなかったものの、銃弾が掠めた頬の傷と防ぎきれなかった爆風による無数のかすり傷が身体中にできていた。
去時音に俺の体を過去に戻してもらい、傷を塞ぐ。
魔力を消費するだけで、体から全ての傷が消え、戦う前の状態へと戻る。
本当に魔眼の能力は見る度に驚かされる。
「それで、相手はちゃんと殺したの?」
「ああ、殺した………」
去時音の質問に素直に答え、自分の口から出た言葉の意味を考え、俺の思考は硬直する。
俺は人を殺したのだ。
戦っている間はそんなことを考える暇はなかった。そんなことを考えていたら、公園で死んでいたのは俺だっただろう。
でも、改めて自分のしたことを考える。
自分が生き残るためとはいえ、人を一人殺したのだ。それがルールに仕向けられたものだったとしても、俺のしたことは変わらない。
急に気分が悪くなる。
腹に入っているものが一気に逆流し、上ってくる。
俺はそれを咄嗟に抑え、口に手を当てる。
「お、俺は人を殺したのか?」
誰に投げかけたわけでもない質問をして、自分のしたことを振り返っていると、急に頭が抱きしめられる。
「確かに、あなたは今日人を殺した。でも、戦わなかったらあなたの方が殺されていた。違う?」
「………そうだ」
去時音から伝わってくる温かさに包まれる。それがただの体温なのか、感情なのか俺には分からない。
「だからって、何の罪もないとは言えないけど、あなたが一方的に責められることはないわ」
去時音のかけてくれた言葉が心に染み渡る。
先程まで感じていた不快感が少し軽くなる。
「ありがとう」
「お礼を言うのはこちらの方よ。あなたが戦ってくれなかったら、私は今日死んでいただろうから」
二人で結んだ共闘関係。
何も知らないが、戦える俺。
知識はあるが、戦えない去時音。
最初は補うだけだった関係は、いつの間にか支え合うようになっていた。
俺に残された最後の繋がりを簡単に放してはいけない。俺はそう思った。
そして、俺たちは買ってきた食材で料理を作り、腹を満たす。
非現実が流れていく中でも学校はある。
腹を満たし、満足感を得た俺たちは眠りにつくのだった。
* * *
翌日、いつも通りに学校に登校してきた。
去時音とは教室が違うので別れ、自分の教室に入る。
教室に入った俺の視線は自然とある人に向いていた。
「おはよう、斥本」
昨日、様子がおかしかった斥本だ。
昨日は色々あって、深く考えることが出来なかったが、様子を見るに普段通りではなかった。
「今」「普段通りではない」というところに、俺は微かに引っ掛かりを感じていた。
「……おはよう、伊崎君。昨日よりは寝れたみたいね」
返事をするためにこちらを見た斥本の顔は酷いものだった。
昨日より深くなったクマ。
明らかに体調が悪そうな顔色をしている。
しまいには、目から生気を感じられなかった。
これは看過していい状態ではないと思い、俺は強く踏み込むことを決意する。
「斥本、何かあったのか?」
「何もないわ。昨日も言ったでしょ、少し体調が悪いだけよ」
斥本は目線を逸らして話している。
何かを隠しているように感じる。
「だとしても、様子がおかしいだろ。明らかにただの体調不良って感じじゃないぞ」
「………余計なお世話よ、放っておいて」
頑なだった。
大きな溝があるような感じで、とりつく島もない。
でも、踏み込むと決めている。
「じゃあ、せめて手伝えることとかないか?家行ってーーー
「「やめて!」」
斥本が急に大きい声を出す。
急なことで俺は黙ってしまう。周りにいるやつらも何事かと視線をこちらに送ってくる。
「ほ、本当に大丈夫だから。なにもしなくていいから」
「そ、そうか。でも、助けて欲しかったらいつでも言えよ」
流石にあんなに拒絶をされては、これ以上踏み込めなかった。
俺は席に座ってからも、斥本を見ていたが何かを悩むようにして、苦しんでいるようにしか見えなかった。
全ての授業が終わり、俺は帰りの支度をする。
すると、斥本が近付いてきて、話しかけてきた。
「伊崎君、やっぱり助けてもらってもいい?」
朝とは打って代わっての態度に俺は動揺する。
「あ、ああ。何か困ってるなら助けるぞ。斥本がもし居なくなったりしたら悲しいからな」
でも、頼ってくれたという事実に俺は少し嬉しさを感じる。
困っているのに助けてもあげられないなんて、友達じゃなくて他人みたいだからな。
それに、ここで何も出来ずに、斥本まで居なくなるのは耐えられないだろうから。
「よかった!じゃあ、私の家まで一緒に来てくれる?頼みたいことがあるの」
斥本はまるで憑き物が堕ちたように、満面の笑みで笑っていた。
俺はその表情に安堵しながらも、まだ取れない微かな違和感を感じていた。
今回も読んでいただきありがとうございました。
引き続きよろしくお願いします。




