第七話 衝撃
今回もよろしくお願いします。
これからは毎日更新ではなくなるかもしれないのですが、読み続けていただけると嬉しいです。
「ここが私の家だよ」
斥本に連れられて、俺は斥本の家の前まで来ていた。
斥本の家は一軒の平屋で、周りにはまばらに家があるくらいで、俺の家よりは住宅街ではなさそうだった。
「さあ、上がって上がって」
斥本は既に玄関の中に立っていて、俺のことを手招きしている。
斥本は笑顔なのに、俺はその笑顔から寒気しか感じられなかった。
しかし、ここで退くことはできない。
今朝の斥本の状態は見ていられるものではなかった。ならば、ここでその原因を解決しなければならない。
俺は意を決して、斥本の家に足を踏み入れた。
斥本の家の中は一言で言うならゴミ屋敷だった。
床のいたる所にゴミ袋が置いてあり、微かに異臭も感じられた。
そんな廊下を通りながらも斥本の笑顔は崩れていなかった。
「ここが私の部屋だよ」
扉が開かれ、斥本の部屋に入る。
斥本の部屋は綺麗だった。
片付いていて、いい匂いがした。
「お茶とか持ってくるから、ここ座って待ってて」
斥本は部屋にある小さな机と座布団を指差して、部屋を出ていった。
俺は斥本の部屋に一人取り残され、手持ち無沙汰になり、部屋の中を見回す。
部屋にはベッド、本棚………他に特別なものはない。
スマホをイジっていると、斥本が部屋に戻ってくる。
「お待たせ~。はいこれ、お茶とお菓子ね」
斥本はそう言って机に持ってきたものを置いていく。
「ありがとう。ところで、頼みたいことって何なんだ?」
「ああ、それはねーーー
「いらっしゃい、お友達?」
斥本は向かいの座布団に座りながら、質問に答えようとする。しかし、それは別の方向から聞こえた声に遮られる。
部屋の奥に座っている斥本の反対。俺の背後にある部屋の入り口から声はした。
振り返ると二人の大人が入り口から覗き込んでいた。
「お、お邪魔しています」
俺は咄嗟に挨拶する。
状況的に斥本の両親だろう。
「茜の友達?友達なんて連れてきたことなかったから、なんだか嬉しいわ」
母親と思われる女性が嬉しそうに笑う。
「いやいや、前にあっただろ。ええっと、あれはいつだったけなぁ」
父親の方も嬉しそうに話をしている。
「何か食べる?うちに何かをあったかしら」
「大丈夫ですよ、もうお菓子とか出してもらってますから」
俺は何かを探しに行く斥本の両親を止めるために立ち、二人に寄っていく。
そして、二人を本格的に止めようとした時、背中に激痛が走る。
俺は激痛の原因を確かめるためにゆっくりと後ろを振り返る。
「せ、斥本?」
俺の背中には包丁が突き刺さっていた。
そして、その包丁の柄を持っていたのは斥本だった。
「ありがとう、伊崎君。すごく助かるよ」
斥本は相変わらずの笑顔で俺の方に顔を向けていた。
* * *
スマホが鳴ったのを感じ、スマホの通知を確認する。
友達の話に付き合っていたら、すっかり帰るのが遅れてしまった。
おおかた、心配した彼からの連絡だろう。
「え、」
連絡は予想通り、この魔眼戦争で共に戦っている伊崎廻人からだった。
しかし、その内容が私を驚かせた。
「あのバカ、このタイミングで怪しいとか思わないの!?」
内容は、斥本の様子がおかしく、自分に助けを求めてきたから斥本の家に行くというものだった。
廻人は昨日も斥本茜の様子がおかしいと言っていた。
普段なら心配するのもいいが、今は状況が状況なだけに警戒するに越したことはない。
それなのに、それなのにあいつはーーー
「去時音ちゃん、大丈夫?」
さっきまで話していた友達が帰り際に話しかけてくる。
私は誤魔化すために笑顔を作り、返事をする。
「だ、大丈夫だよ。また明日ね!」
少し強引だったかもしれないが、友達はそのまま帰っていく。
私は教室に一人になったことを確認して、思考を問題に集中させる。
このタイミングで様子のおかしい斥本茜はかなり所有者として怪しい。
これが私の疑いすぎで済めばいいが、その可能性は低いだろう。
廻人は魔眼を隠せない。ならば、斥本茜が所有者だった場合、廻人が所有者なのは一目瞭然だ。
そんな彼を自分の家、つまりテリトリーに引き込んだということはーーー
「廻人が殺される」
私は荷物を持ち、教室を駆け出た。
「お願いだから、間に合って」
学校の敷地から出て、斥本茜の家に直行する。
廻人も抜けてるのか抜けてないのかよく分からないが、ご丁寧に斥本茜の家の座標も連絡してきていた。
ありがたいが、そこに気を配れるなら、まず付いていかないで欲しかった。
「次の角を右」
私はスマホで、道を確認しながら、全速力で走る。
最低限の減速で曲がり角を曲がる。
しかし、私は角を曲がった先で完全に静止する。
最悪の状況だ。
「よォ、また会ったな。今日は一人かァ」
角を曲がった先には血洗が立っていた。
あの日と違い今日は雨合羽のフードを被っておらず、顔が見える。
奴の凶悪な眼が私を捉えている。
「こんなところで会うなんで奇遇ね」
「強がっちゃってかわいいねェ」
血洗がニヤニヤ笑っていたが、スンッと真顔になる。
「でも、忘れてねェか。お前は俺に一回ボコされたってな」
嫌な汗が頬を伝う。
あの夜私は為す術なく、血洗にやられた。
殺さずに連れ去れる程、私と奴との実力はかけ離れている。
でも、あの時とは状況が違う。
場所の話じゃない。心の話だ。
魔眼は自分の体の一部であり、その力は所有者の意思に引っ張られる。
あの時の私は戦うことを諦めていた。
両親は殺され、さらには関係のない廻人の両親までも犠牲にしてしまった。
こんなことになるならば、私は死んだ方がいいと、そう思っていた。
だが、今は戦う理由がある。希望がある。
廻人という戦い抜くための協力者が現れ、私の味方をしてくれている。
実際に彼は私を守り、あまつさえ所有者を一人殺して見せた。
ならば、私も全力で戦おう。そう思ったんだ。
「あんまり調子乗らないでよ、イカレ野郎。私はもう死ぬ訳にはいかないの」
「いい眼をするじゃねェか」
私は魔眼の隠蔽を解き、魔眼を構える。
魔眼は過去を捉え、その過去が頭の中に入り込んでくる。
しかし、頭では先のことを考える。この窮地を乗り越えるために。
こいつに教えてやろう。強すぎて三つに分けられた『時間の魔眼』の力の一端を。
今回も読んでいただきありがとうございました。
引き続きよろしくお願いします。
ここから大きく場面が動くので、書いていて楽しいです。




