第四話 回転と銃器
今回もよろしくお願いします。
いよいよ長い戦闘です!考えた能力などを吐き出せるのは楽しかったです!
道を歩いている。
感覚が薄れ、世界が曖昧に感じる。
こうなってしまったのは何故なのか、思い出せない。
魔眼を持つ者を殺し、願いを叶える。
そうすれば、全てが解決する。漠然とそう感じていた。
街中を探し、歩き回ったが、所有者は見つからない。
僕に絡んできた人達を殺してみたけど、その人達は所有者ではなかった。
でも、今日はついに見つけた。
まだ顔を見たわけでも、能力を見たわけでもない。でも、分かる。
全身が、何よりもこの眼が、そこに所有者がいると伝えてきた。
気配を辿り、歩いていくと、公園に辿り着いた。
普通の公園だ。大きく開けた場所が中央にあり、端の方にはいくつかの遊具がある。
その遊具の内の一つから気配を感じる。
僕は魔眼に願う。
相手を殺す力が欲しい。
魔眼は僕の意思に反応するかのように熱を持ち、まるで意識があるかのように感じる。
何もないところから一丁の銃が出てくる。
僕はそれを掴み、銃口を気配がする方に向ける。
ちゃんと遠くからでも狙えるようにスコープ付きの狙撃銃を出した。
引き金に指をかけ、僕は指に力を入れた。
「待ってて、母さん」
* * *
ーーーパァン!
耳が痛くなりそうな音が静かな夜に響き渡った。
何が起きたのか分からず、俺はいつまでもうるさい心臓を静かにさせようとしたまま、周囲の様子を伺う。
ふと頬に熱いものが伝うのを感じる。
頬を手で拭ってみると、暗くてよく分からないが、赤色の液体が手に付いていた。
ーーー血だ。
今では見慣れてしまった新鮮な血が俺の頬から垂れている。
隠れている遊具ーーードーム型の金属にいくつか穴が空いたものーーーを見てみると、ちょうど俺の頬近くのところに小さな穴が空いていた。
ここまで情報が揃えば、俺でも分かる。
撃たれたんだ。
そこまで状況が悪化して、俺は先程の地名に見覚えがあったのか思い出す。
最近あった銃による殺人事件。その報道されていた時の地名がここだ。
それに、今の大きい音と金属に空いた穴。
相手は殺人事件の犯人であり、おそらく銃に関係する魔眼なんだろう。
しかも、壁越しにこちらを狙える程の腕前を持っているとなるとーーー
本能が危険信号を全力で出し、俺は即座にその場を離れる。
予感は的中していた。
俺がさっきまでいたところには、大量の銃弾の雨が降り注いでいた。
少しでも避けるのが遅かったら、俺は死んでいただろう。
「あ、」
銃弾の雨を避けたのはよかった。しかし、避けたということは移動したということで、俺は隠れていた遊具から出てしまい、敵の前に無防備なまま姿を晒してしまった。
後悔や焦燥が頭の中を光の速度で駆け抜けるが、思考は一点へと集約する。
自分へと向けられた銃口。
どうする
どうすればいい
また隠れるか
銃弾って避けられるのか
あいつは誰だ
体勢を立て直さなきゃ
死ぬのか
もっと考えろ!
頭を回せ!
諦めるな!
動いていれば当たらないかもしれない
もっと頭の回転を上げろ!
最後まで諦めるな!
ーーーパァン!
俺が思っているより弾丸は遅かった。
いや、遅くなったのかもしれない。
おぼろ気に感じていた魔眼の使い方の一つが土壇場の俺の思考と重なり、魔眼を発動させた。
考えるのが速い人のことを頭の回転が速いとか言ったりする。俺はそれを思い出しながら、自分の魔眼が「回転の魔眼」であることを考えていた。
俺の魔眼が効果を適用されるのは物理的な回転だけじゃなくて、こういう概念的な回転もなんじゃないかと。
考えは当たっていた。
本来は瞬き一つの間に飛んでくる銃弾も眼で追えている。
崩れた体勢から無理矢理体勢を変え、紙一重で銃弾を避ける。
一瞬の安堵と共に、思考を次の行動へと向ける。
いかに相手の銃弾を避けるかを考えていたが、すぐにその考えは捨てる。
今の俺は銃弾を避けることができる。ならば、ここですることは逃げではなく、攻めだ。
体勢を立て直し、足に力を込める。そして、前に足を踏み出す。
走りながらゆっくりと流れる風景から情報を集める。
相手は狙撃銃のようなものを持って、銃口をこちらに向けている。今次弾を発砲した。
やはり銃を作り出すのが相手の魔眼の能力だろう。
俺から相手までの距離は五十メートルほど。
先程発射された弾を避け、相手への距離を詰め続ける。
すると、相手の手元の狙撃銃以外に所謂アサルトライフルのようなものが現れた。
しかも、手で持っているわけではなく、相手の右上と左上に一丁ずつ浮遊している。
俺はここに来て自分が常識の外で戦っていることを理解する。
ーーーガガガッ!!!
狙撃銃とは違い連続して銃弾が発射される。
一瞬にして十何発もの銃弾がこちらに向かって飛来する。
しかし、一発一発が俺を捉えているわけではない。
俺は俺当たりそうなものだけを避けながら、距離を詰める。
そして、拳の間合いに入った。
「くらえ、『螺旋腕』!」
渾身の一撃を放つ。
放った拳は完全に相手を捉え、決着………のはずだった。
俺の拳は固い感触に阻まれ、俺は痛みに顔を歪める。
拳を防いだのは二丁のアサルトライフル。二丁の銃は空中に浮き、交差して俺の拳を受け止めている。
浮遊していた銃を防御に使ったのだ。銃を防御に使うという思考は自由に銃を作れるからこそ出てくる発想であり、またしても常識の外の行動である。
しかし、俺もただ殴っただけではない。
あの夜とは違い、俺は魔眼を使えるようになった。だから、拳には魔眼の力が乗せられている。
空手などでは拳を放つ時、回転を加え相手の体に捩じ込むようにすることで、威力を高める。
俺はこれを魔眼で強化し、さらに周りの空気も回転させ纏わせることにより腕を保護する上、威力を高めた。
それにより、手前の銃はひしゃげている。しかし、二丁目の銃により威力は完全に殺され、相手に拳は届かなかった。
拳を放ち無防備になっている俺へ相手の手に持っている銃が向けられる。
いつの間にか相手の手に持っている銃は狙撃銃からアサルトライフルに変わっている。
俺はすぐさま思考を加速させ、射線から外れる。
一秒前まで居たところに銃弾が降り注ぐ。
俺は地面の土を手で掴み、相手へと投げかける。
それにより、相手の眼が潰れた隙にできるだけ距離を取る。
今度は公園に植えられている木の裏側に隠れている。
息が切れている。
全力で走っただけが理由ではない。魔眼を行使しすぎたのだ。
魔眼の行使には魔力を使う。しかし、俺の魔力量は少ない。
去時音によると先祖が魔術師で俺の体に魔力は流れているのだが、魔術師だったのが遠い先祖すぎて流れる魔力は少ないらしい。
だから、魔眼を使うタイミングは絞らなくてはいけなかった。
しかし、銃弾を避け相手に近付くまでの間の『思考加速』『螺旋腕』と、これだけで俺の魔力は半分程消費されてしまっていた。
なるべく木から身を出さないようにして相手の様子を伺う。
相手は眼を擦っていて、やっと視界を取り戻したようだった。
周囲に浮遊している二丁、手元に一丁。合計三丁の銃を顕現させていて、隙なく周囲を警戒している。
浮遊している二丁は元通りになっていて、直したのか、新しく出したのだろう。
そんな警戒網を突破して相手に近付く策が必要だ。
まず、近付くのは『思考加速』を使えば、三丁分の弾幕でもギリギリ可能だろう。しかし、それを行うといよいよ魔力切れが心配になってくる。
『螺旋腕』は初見なのに、防がれている。
代わりの方法を考えなくてはいけないが、これ以外に攻撃手段は思い付いていない。
思い付くのは『螺旋腕』を打つフリをして、二丁で防がせ、そこに別の腕での『螺旋腕』をブチ込むくらいだ。
相手もさっきので『螺旋腕』の威力を知っているので、二丁使って防ぐだろう。
しかし、この策には穴がある。
まずはこの攻撃で仕留められないと魔力切れになる。そして、相手が出せる銃が三丁しかないという確証がない。
この二つの不安要素がーーー
「「「全て焼き尽くしてやる!!!」」」
賭けに出るか出ないかを迷っていると、突然の大声が聞こえ、体が無意識にビクッとする。
再び相手の様子を盗み見ると、右手を空へ掲げていた。
次の瞬間、相手の背後にゆっくりと巨大な大砲が現れ出す。
まるで戦艦にでも付いているかのような大きさの大砲だった。
ーーーバンッ!!!!!
今までとは比べ物にならない程の音が公園に響き渡る。
離れているのに鼓膜が破れるかと思うほどの音だった。
夜なのに仄かに明るくなった気がして、空を見上げる。
空に太陽が昇ったわけではない。代わりに夜を照らすのに十分な光量を持った無数の砲撃が空一面に広がっていた。
この状況を見て、先程抜けていた三つ目の穴を見つけた。
俺は相手が銃器の魔眼だと断定し、決めつけていた。だから、それ以上の威力がある重火器や兵器を想定に入れていなかった。
今回も読んでいただきありがとうございました。
大ピンチというところで次回へと続きます!
次の話も楽しみにしていただけたら嬉しいです。




