第24話「SURPRISE GIFT」
映画館で笑ったり泣いたり驚いたりするのは良いんだけど、別にそういうシーンでも無いのに無意味なリアクション取ったりずっと喋ってたりする輩は、控えめに言って金属バットで太陽までホームランされればいいと思います。
「はぁ〜…」
僕、アピアスは部屋で一人溜め息を吐いていた。
今日は土曜日の為、学校は休みだ。でも凄く憂鬱だった。
理由は簡単。まだ、リーシャに謝っていないのだ。
お父さんが死んでしまった時、僕はリーシャに酷い事を言ってしまった。
僕はそれを悔やんで、クリントにも話せば分かると言われたけど、どうにも勇気が出せない。
僕はまた溜め息を吐いて、タブレットに保存されていた家族写真を見る。
「お父さん…僕、どうしたらいいのかな…」
そうは訊いてみるものの、答えが返ってくる訳が無い。
僕は考えても仕方ないと割り切り、テレビを付けた。
テレビでは今ニュースをやっていた。
どうやら、ケンチス王国の首相がここジフォード合衆国にやってくるそうなのだ。
ケンチス王国と言えば、ジフォード合衆国最大の友好国だ。困った事があれば、すぐに互いに助け合うぐらいの関係を持っている。
そんな国の首相がやってくるなんて、別に何ら珍しくない。
確か、ジフォード合衆国のアルゴラが破壊されたから、ケンチス王国がアルゴラの再建の手助けの話し合いをするらしい。
ライブ映像で、ケンチス王国の首相を乗せているのであろう車が街を走るのが映る。
周りには沢山の護衛と、カモフラージュの車が何台も走っており、一見どの車に首相が乗っているのか分からない徹底ぶりだ。
何だか大袈裟な気がするけど、何が起こるか分かったもんじゃないからなぁ。特に最近はソーサラーやらドラゴンやらが何時現れてもおかしくないんだし。
実際、その警備隊の中にはドラゴンスレイヤーの隊員も混ざってると聞く。
今日は何も無ければ良いんだけど…。
と思った矢先、野次馬の人々がいきなり慌て始めたのがテレビで見えた。
そして同時に、中継していたニュースキャスターの声が響く。
「発砲です! 何者かの発砲が起きました!」
どうやら、何者かがケンチス王国の首相を狙ってきたらしい。
僕はすぐに立ち上がり、部屋からリビングに入る。
「お母さん! ちょっと外行ってくる!」
「え? い、行ってらっしゃい」
お母さんに適当な言い訳をして、僕はリビングからそのまま外へ出た。
そして同時に、僕は青空を見上げて空へとテレポートし、僕から俺へと切り替える。
確か、場所はエルバーシャ市の筈だ。
誰かは知らねぇが、他国の首相を襲おうなんて肝が据わってやがる。
俺は翼を広げ、ケンチス王国の首相がいる筈のエルバーシャ市へ向かった。
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当然だが、エルバーシャ市は大混乱だった。
ケンチス王国の首相を守る為に、多くの警護官が辺りを見渡し、犯人の居場所を探っている。
俺はそれを空で見つめており、俺も一緒に犯人を捜す。
でも早く見つけねぇとな。早くしねぇと俺が犯人に間違えられちまう。
「ド、ドラゴンだ! ドラゴンがいるぞ!」
あぁもうほら。一人が俺に気付いて指差しちまったよ。
違うよ? 違うんだよ? 俺は寧ろお前らを助けてやろうと…
バシュッ!
その時、警護官の一人が撃たれて倒れた。
さっきの音…間違いねぇ!
俺は音が聞こえた方角を見る。
ボロボロのマンションの18階。一つだけ窓が開いている。
そこか!
俺は窓の目の前にテレポートし、部屋にいる人物を睨む。
その人物は、黒い衣装に真ん中にスパイクの付いた黒いマスクを被っている男だった。
やっぱりお前か。スパイクギフト。
【また会ったな】
俺は奴にそう思念を送り、豆粒サイズの圧縮弾を放った。
奴はそれをすぐに避け、圧縮弾はボロボロの煉瓦造りの壁を破壊するだけに終わる。
俺はテレポートをして、なんとかそのマンションの部屋に浸入する。
ちょっと天井が低いが、屈めばまぁ大丈夫かな。
「また邪魔をしに来たか。面倒な奴め」
【それはこっちの台詞だ。何故ケンチス王国の首相を狙う!】
「分かっているだろう? 仕事さ」
【なるほど。でも、そろそろ引退の時だ】
「それはどうかな?」
そう言うとスパイクギフトは、隣にあったクローゼットを開けた。
するとそこから、紐に縛られた状態の女性が倒れてきた。口元にはテープが貼られており、声も出せない様にされてある。
「元々は警官達に使うつもりだったんだが、丁度良い」
【ど、どういう事だ…!】
「人質だよ。このマンションに住む人間全員がな。俺を捕まえようとしたら…」
奴はクローゼットの扉の裏側を見つめた。
クローゼットは開けてある状態の為、裏側も簡単に見ることができた。
そして、その裏側には何か長方形型のものがテープで固定されていた。
まさか…これって…!
「この爆弾が爆発する。あと、爆弾はこの一個だけとは限らないかもな」
【て、てめぇ…!】
「俺を逃せば話は別だ。おっと、警察もやってくるな。じゃあ、俺はここで失礼するよ」
奴は窓からロープを落とした。こいつ、窓から脱出する気か。
【人質なんて…卑怯だぞ!】
奴は窓から脱出する直前、俺の思念を受け止めて止まった。
そして、当たり前かの様な口調で話し始めた。
「魔法を使う方が、よっぽど卑怯だろ?」
奴はそう言い、窓からこのマンションを脱出する。
奴が丁度降りたところで、警察が部屋に入ってきた。
警察は一瞬俺にビビったが、何人かに俺を監視させてすぐに窓から逃げたスパイクギフトに気付く。
「逃げたか! 追え!」
【待て!】
奴を追う様に命令した警官に、俺はすぐに奴を止めた。
命令した警官は、驚いた様に俺を見る。
【マンションに何個か爆弾がある。奴を逃せば爆発はしないと言われている】
「爆弾だと…?」
未だに信じてなさそうだったので、俺はクローゼットの裏を見る様にジェスチャーで知らせた。
それを理解してくれたのか、何人かの警官がクローゼットの裏の爆弾を発見する。
「た、確かに爆弾らしき物が!」
「クソッ! おい! 早く爆発物処理班を呼べ!」
「りょ、了解しました!」
これは、俺がいない方が良さそうだな。
爆弾を見つける能力も爆弾を処理する能力もねぇし。
しかし、スパイクギフトめ…。また倒せなかった。
いやまぁ、どうせ戦ったところで勝てなかった可能性が充分あるんだが。
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「スパイクギフトの用意していた爆弾は一個だけだった。それに、その一個も大した破壊力も無いものだ。つまり、ハッタリだったという訳だ」
僕はマンハッタンおじさんの事務所にいた。
おじさんは、何かの書類を見ながらそう言う。
「そんな…。僕が気付いてれば…」
「自分を責める事は無いよアピアス君。それより、奴のこれからが不安だ。恐らく奴は、依頼された仕事が終わるまで続けるだろう」
「仕事って…ケンチス王国の首相の暗殺…ですよね? でも、スパイクギフトは今までソーサラーを殺してた筈…。まさか! 首相がソーサラー!?」
「いや、多分それは違うだろう」
おじさんは書類を読み終わったのか、ようやく僕の方を向いた。
さっきから、一体何の書類を読んでたんだろ。
「確かに、今までのソーサラー暗殺は奴の仕業だと思う。だからこそ違うんじゃないかな? きっと、ソーサラー暗殺を依頼したのは政府だろうし、今やその政府は、その暗殺の関与疑惑によって不信感が高まってしまっている。
多分、その日から依頼は取り下げられたんだ。また暗殺なんてしたら、支持率が下がる一方だからね」
「じゃあ…依頼人は別の…」
「あぁ、理由は分からないが、誰かがケンチス王国首相の暗殺を依頼した」
政府以外の別の依頼人か…。
こんな大変な時に、一体誰がそんな事を…。
それより…
「おじさん、さっきから見てるそれって…」
そうだ。僕はおじさんのテーブルに置いてある書類が気になった。
「あ、いや…別に大したものじゃ…」
おじさんが隠そうとして掴んだ書類を、僕も右手に取った。
そしてすぐに僕は、その書類だけを左手の中にテレポートしておじさんからそれを奪い取る。
「アンリミテッドコープの調査結果…?」
僕はそれを見て、再びおじさんの方を向く。
おじさんはバツが悪そうに、僕から目を逸らした。
「おじさん、この会社って確か…ダン・ノーマックの…」
「あぁそうだ。この会社を調べれば、ダン・ノーマックの居場所が分かるかもしれない。そうすれば…」
「お父さんへの復讐ができる…ですか?」
「そうじゃない! ただ…」
おじさんはようやく僕の方を見たかと思うと、また俯いてしまう。
「ただ…何でもない…」
「何でもない訳ないでしょ!? おじさん、ダン・ノーマックは危険です! そんな相手を、何で僕に内緒で…」
「内緒にするのは当然だろ!!! キミが死んでしまったら、俺はジオになんて顔をすればいい!!!」
「僕は死なない!!!」
僕は、立ち上がったおじさんの目をしっかりと見てそう言った。
そうだ。僕は死ぬ気は無い。死んで、リーシャやお父さんの為に戦うと決めたんだ。
「僕にはドラゴンの力がある! 少なくとも、ただの人間のあなたよりは強い!!!」
「アピアス君…」
おじさんは、僕の名を言いながら苦い顔をする。
そして椅子にドサっと座ったかと思うと、椅子ごと僕に背中を見せてきた。
「……一人にしてくれ。しばらくは、一人になりたい」
「……分かりました。でも決して、妙な真似はしないでください?」
そう言い僕は、事務所を出て行こうとした。
だがその直前、僕は振り返って口を開く。
「自分を責めるな。さっき、あなたが僕に言った言葉です。僕は、ちゃんと胸に刻んでおきますから」
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翌日
「面白かったね〜」
「なぁ〜、特に最後のシーンとか迫力あってさ〜」
「うんうん! あの爆発は凄かったよ!」
僕はリーシャとクリントの二人と一緒に、アベンズ市の映画館を歩いていた。
本当にとても面白かった。
一昨日公開されたアクション映画。もう七作目になるらしいが、相変わらず迫力満点でスクリーンで観る価値がある映画だった。
特に最後の爆発のシーン。あれは映画館で観ないと迫力が半減してしまう。
「あ、そうだ! 僕パンフレット買ってくる!」
そう言い、僕はパンフレットのダウンロードカードが置いてある売店へと向かった。
だがその時、大きな衝撃が映画館全体を揺らした。
まさか!
僕は映画館にある窓を眺めた。
予想通り、映画館の外にはベージュに黒い縞模様の入った雌のドラゴンがいた。
クソッ! こんな時にドラゴンかよ!
「ア、アピアス君! 一体何…が…」
リーシャもドラゴンの存在に気付き、腰を抜かした。
元気になったとはいえ、やっぱりドラゴンはまだ苦手みたいだ。
「おいリーシャ! 大丈夫か!?」
クリントもすぐに駆けつけ、リーシャを立たせる。
ドラゴンもすぐ近くにいるし、このままじゃ巻き込まれる。
「クリント! とにかく逃げよう!」
「あ、あぁ! ほらリーシャ!」
クリントはリーシャに肩を貸して走っていった。
日曜なので逃げている人も多い。これなら、ダン・ノーマック暗殺事件の時みたいに人混みに紛れて転送もできるだろう。
僕はすぐに窓の外を見ながらテレポートをする。
僕から俺へと切り替わった俺は、暴れるドラゴンの真上に現れた。
リーシャに刺激を与える訳にはいかねぇ。さっさと片付ける!
俺は豆粒サイズの圧縮弾を作り、それをドラゴンに放った。
だがドラゴンは、すぐにそれに気付いて正方形の金属の壁を作る。
壁? でも悪りぃな。そんな壁、俺の圧縮弾で押されてお前がペッチャンコになるだけだ。
しかし、その壁は圧縮弾に当たっても全く押されはしなかった。寧ろ、俺の方に近づいている。
まさかこの壁…! 攻撃が効かないのか!?
俺が驚いていると、俺の背中にも同じ様な壁が現れた。
そして二つの壁は、端から鉄の棒の様なものを発射する。
これってまさか…牢獄か!?
俺が気付いた時には、既に牢獄が完成し、俺はその中に閉じ込められちまった。宙を浮いた牢獄は地面に降り、俺は牢の中からそのドラゴンを睨む。
クソッ、どうやらこれが奴の魔法か! だが、動きを封じる系の魔法なら無意味だ。また転送してしまえば……ん? あれ…? い、意識が…。
「グゥ…」
俺は立ってられなくなり、思わず片膝をつく。
何でだ…。意識を保つのに精一杯で、魔法を使う余裕が出ねぇ…。この牢獄、ニーべニウムって訳じゃ無さそうなのに…。
【かかったわね】
薄れゆく意識の中、ドラゴンのテレパシーが聞こえる。
【良いのよ。寝てなさい? あなたは、このまま永遠に眠るの】
ふ、ふざけんな…。ここで…終わって…
【最後に覚えておきなさい。私の名は監獄。あなたを倒したドラゴンの名よ】
そこで俺は、完全に意識を失った。
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アベンズ市でドラゴンの襲撃事件か…。困ったな。
俺、リベッジはタブレットに表示されるニュースを読んで頭を掻いた。
今、俺はエルバーシャ市の官邸の前にいる。
官邸にケンチス王国の首相が訪問する為、官邸の周りにはマスコミや野次馬で一杯だった。
昨日未遂に終わったケンチス王国首相暗殺事件。恐らく犯人のスパイクギフトは、まだ諦めていない筈だ。
本当は俺もアベンズ市に行ってアンリミテッドコープを調べたいところだが、今回だけは仕方がない。何せ首相の暗殺が企てられているのだから。
にしても、誰がスパイクギフトにケンチス王国首相の暗殺などを依頼しに来たのだろう。
官邸に、首相を乗せているのであろう車が、何台も入って来た。
昨日の銃撃事件の事もあり、警備は今まで以上に厳重だ。
だが、暗殺者はあのスパイクギフトだ。そう簡単に諦める様な相手じゃない。
そんな時、地面に何かが投げられた。
「ガスだ! みんな逃げろ!」
俺はそれの正体に気付き、周りの人々に大声で伝えた。それは何者かが投げてきた催涙剤だった。
催涙ガスが辺りに充満し、俺も体調を崩してしまう。間違いない。この催涙剤、スパイクギフトの仕業だ。
ケンチス王国の首相は、護衛六人と一緒に官邸に向かう。
しかし、俺は見た。ガスに紛れてスパイクギフトが首相に近づいて来たのを。
「左にいるぞ!」
俺は懸命に声を上げ、奴の存在を護衛に伝える。
だが、護衛がそれに気付いた時には彼等は奴のナイフや銃で簡単に殺されてしまった。そして奴は、首相は胸に銃を突きつける。
「依頼完了だ」
奴は短くそう言うと、無慈悲にも引き金を引いた。
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「グ…グゥ…」
強烈な光を感じ、俺は目を覚ます。
まず目に入ったのは、真っ白な天井。
ここは…一体何処だ…?
確か俺は…アベンズ市でクリント達と映画を観に行って、そしたらその後ドラゴンが現れて…
そうだ。俺は奴が作った牢獄に閉じ込められたんだ。
確か奴の名前は、ループって言ってたか。
しかしそうだとしたら、マジでここ何処だ?
俺は牢に入れられてた筈だろ? なのに何でこんな…いや、まず立ち上がって周りを見ないと状況は掴めん。
俺は立ち上がり、その空間を見渡す。
思ってた通り真っ白だ。
下手したらこれ、床と壁と天井の区別がつかんぞ。
ん? 誰か倒れてる。人間だな。誰だ?
俺はこの空間にいた人間に近づいてみる。
反対方向を向いているから顔は見えんが、どっかで見た事がある気がする。あと性別は男っぽい。
どうすっかなぁ…起こすとパニクるよなぁ…。そうだ。ドラゴンが駄目なら人間になれば…
「ん…んん…」
げっ、起きやがった。
にしても、やっぱりどっかで会った気がする…。声にも聞き覚えがある様な…。
そんな事を考えていると、人間が起き上がって俺を見つけた。
人間はもちろん、俺もその顔を見て思わず固まる。
え? 何でかって? んなもん簡単だ。だってその人間…
【ア、アピアス…?】
「バ、バニッシュ…?」
そう、俺と融合した筈のアピアスだったのだ。
「……え?」
【……え?】
「【ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!????】」
真っ白な謎の空間に、同一人物だけど同一人物じゃない二つの声が重なった。
正直、全く意味が分かんねぇ…。
僕は映画のパンフレットって、映画を観たら絶対そのパンフレットを買うって決めてるんですが、皆さんはどうなんですかね。少なくとも僕の周りはあまり買いません。まぁそんな話する人が少ないk(ry
因みにアピアスは気に入った映画のパンフレットのみ買う派の様です。




