表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダブルイメージ  作者: ナメゐクジ
第2章
19/29

第19話「NOT REACH」

感想も貰って有頂天! でも遅れたね! ごめんなさい! という事で第19話です。

本当は前回とで一つの話にするつもりでしたが、意外とめっちゃ長くなったので分けて正解でした。大体一つの話が長いってそれいつも言ってr(ry

【何が楽しいんだよ。んなもん見て】


俺、トルネードは壁に囲まれた人間の国を遠くから眺めてるマーベリックにそう言った。

奴は首に巻いた布を揺らしながら振り返り、俺とチビを見る。


【あれ? キミも来たんだ】


【来たっていうか…チビが一緒に行くってうるさかったから連れて来ただけだ】


本当にチビはうるさかった。一緒にマーベリックのところに行こうとあの短時間で数えきれない程言われた程だ。

こいつ、初めてマーベリックに会って以降マーベリックにも懐いてるからな。

最初は俺にベタベタだったのに…。べ、別に嫉妬はしてないぞ?


【一体何が楽しそうだよ。人間共の馬鹿騒ぎだぞこんなの】


【そうかなぁ。ここからでもみんなの笑い声が聞こえて、僕は好きだけどなぁ。でもおかしいな…。何かさっきから様子が変だ…】


変わり者(マーベリック)って聞いて何でそんな名前を付けられたのかと疑問だったが、今になってよく分かる。確かにこいつは変わってる。


っていうか、こいつの親友とやらは人間のところに行ってから帰って来てないんだろ? だったら人間は親友の仇の筈じゃあ…。


【な、なぁ…。あまり話したくない話題だと思うんだが、お前の親友は人間の国に行ってっきり帰って来てないんだよな? それなのに何で…】


【あいつは死んでないよ】


いきなりそう言われ、俺は思わず固まる。

そして奴は、今まで見たよりも一番真剣そうな顔で振り返った。


【親友は人間に殺されたかもしれないって言いたいんでしょ? でも大丈夫だよ。あいつは、死んでないから】


【な、何で分かるんだよ】


【勘かな。あいつが、人間程度に負ける訳がないもん】


程度って…。


こいつ人間が好きなのかと思ったが、そういう訳じゃ無いのか? 余計意味が分からん。


大体、いくら親友とはいえ、買い被り過ぎじゃないか? その親友とやらが何時いなくなったのかは知らないが、今の人間の国にはあの黒いドラゴンがいる。

そいつが人間に敗れてなくても、あのドラゴンに敗れてる筈…


ドオォォン…!


突然、壁の向こうから轟音が聞こえた。


俺達はその音に反応し、人間の国を思わず見る。

そこには、驚きの光景が広がっていた。


【お、おい…これ…どうなってんだ…?】



ーーーーーーーーーーーーーー



20分前


俺はお父さんとおじさん、そしてラーリーさんを背中に乗せて、空を飛んでいた。

バルタスが囮だとしたら、本命が何処かにある筈だ。

だとしても、本命は何処にあるんだ? 下手したらエルバーシャ市じゃない可能性だってある。でも、奴等「ネオプロローグ」は政府に追われてる立場だから、やはり政府機関? それか…


「アルゴラは平気か?」


そうだアルゴラだ。アルゴラは人類の守りの砦。これを失うのは人類にとっては大きな深手になる。

俺はお父さんの指示通り、アルゴラの方へ向かう。


アルゴラの上空にはすぐに辿り着いた。

でも、見たところまだ警備のドラゴンスレイヤーがいる。しっかりと警備してるみたいだし、平気そうだ。


「いや待て」


突然、おじさんが飛び去ろうとする俺を声で止めた。何だ? 見たところ何も無さそうだが…。


「何かおかしい」


「え? そうですか? 俺には普通に見えますけど…」


「あぁ、何処がおかしいんだ?」


ラーリーさんとお父さんも分からない様だ。まぁ俺も分からないんだけど。


【二人の言う通りだ。何処もおかしいところはねぇじゃねぇか】


「それだよ。こんな騒ぎなのに、幾ら何でも冷静過ぎる」


「そ、そう言われると…」

「確かに…そんな感じもしますね…」


うむむ…まぁ確かにおじさんの言ってる事も分からなくはない。みんな冷静に警備しているのが、かえって違和感を感じる様になる。

すると、アルゴラの周りに靄がかかった気がした。その靄が晴れると、なんとさっきまで警備していた筈のドラゴンスレイヤーが全員死んでいた。


なっ! これ一体どういう…!


【おい!】


「あぁ! みんな死んでるぞ!」


「ど、どういう事ですか!? 確かにさっきまでは…」


「魔法だ…! 幻覚か何かで、俺達を騙してたんだ!」


何もないところを幻覚で騙す必要なんてねぇ。って事は、奴等の狙いはアルゴラだったのか!


【降りるぞ!】


俺は、背中の三人を落とさない様に気を使いながらも降下して着地した。

周りの警備は、みんな揃いも揃って血を流して死んでいる。

すぐに俺の背中から降りたおじさんとお父さんが、その死体を確認する。


え? ラーリーさんはどうしたって?


「うげえぇぇぇ…」


俺の後ろで吐いてます。


死体でか? それともドラゴン酔いでか? まぁどちらにしろ、よくこんなのが副隊長になれたもんだな。


「鋭利な刀の様なもので斬られている。ジオ、そっちは?」


「こっちもだ。装甲服まで真っ二つになっている。これも奴等の魔法か?」


装甲服まで真っ二つって…それかなりヤバくね? そんな鋭利なものを生み出す魔法って事かよ。

ドラゴンでもあれ斬るの苦労するって話だぞ。おっかねぇ魔法だな。


「魔法の方が嬉しいな。これが魔法じゃなかったら、殺人犯はこの凶器と魔法の二つの武器を持つ事になる」


【装甲服まで斬る様な武器があるってのか? んな馬鹿な…】


「達人なら可能かも。クロサラ刀の」


クロサラ刀って…マジかよ。


テレビで何度か見た事がある。海に浮かぶ島国クロサラ国が昔使っていたとされる伝統武器・クロサラ刀。その斬れ味は抜群で、確か「最も殺傷力がある武器」だとか。


真偽の程は分からんが、見た目も美しくその斬れ味も含めて正にロマンの塊とも言える武器だ。健全な人間男子、一回は使ってみたい武器堂々の第1位だと思う。絶対。


「クロサラ刀の達人のソーサラーか…。本当にそうだとしたら、悪夢だな」


クロサラ刀の達人のソーサラー? え? 普通にカッコいいじゃん。何だよその設定。敵じゃなかったら惚れてたぞ。


「そ、それよりも…犯人はアルゴラに侵入したって事で良いんですか? そんなの…とても無理だと思いますけど…」


吐き終えたのか、ラーリーさんが話に参加してきた。

死体があるってのに平気そうって事は、さっきのはただのドラゴン酔いか? あ、ちょっと死体から目逸らした。やっぱり死体で吐いたのか? ねぇ、どっちなの?


「確かに。自由にアルゴラに入れるのは領域監視部隊の副隊長を含む一部隊員と組織内の隊長以上の階級の者だ。あと、認証バッジを付けてる者も入れるか」


「だが、認証バッジは正式な手続きが必要になる上に、それを付けた監視係は交代の時間以外は外出は厳密禁止だ。交代の時間はまだまだだし…そう簡単には入れないぞ」


流石ドラゴンスレイヤーの隊長と元隊長。アルゴラの警備はしっかりと知っているらしい。

しかし、もしそのセキュリティが本当だとしたら、「ネオプロローグ」の奴等は入ってこれないと思うんだが…。


【まさか、「ネオプロローグ」の中にその隊長格がいたとか?】


「可能性はあるな。バルタスだってソーサラーだった」


「各部隊隊長以上の階級の者と領域監視部隊の副隊長は、ジオと一緒にパレードに参加していたが…魔法によってはそのアリバイも意味は為さないか…。残るは領域監視部隊で自由に出入りが許された一部の隊員だが…」


「よく分かんないですけど、とりあえず入ってみましょう!」


ラーリーさんの言う通り、ここで考えてるだけじゃ埒が明かない。

お父さんはすぐに、アルゴラのセキュリティパネルに触れる。お父さんは防衛第一部隊隊長だ。入る権利はある筈。


「……起動しない?」


は? 起動しない? 認証しないじゃなくて?


「そんな馬鹿な。起動しないなんてあり得ないぞ」


「これじゃあ中に入れませんよ? 一体どうすれば…」


あぁもう焦れったい。


俺は豆粒サイズの圧縮弾を作り、シャッターにそれを放った。

シャッターはあまりの衝撃で轟音を立てながら吹っ飛び、三人は目を丸くして吹っ飛んだシャッターを見た後に俺へと振り返る。


【何だよ。開けてやっただけだぜ?】


俺は三人に伝え、中へ入ろうとする。


「あ、ちょっと待って!」


おっと。え? なに? 何でおじさん、いきなり止めてきたの?


「アピ…バニッシュ」


今アピアスって呼びそうになったよな。さっきまでバニッシュで通してたのに、どうしたよ。


「キミは、ここに残れ」


はぁ? 何で?


「確かに…アルゴラの中はドラゴンでは通れませんしね。俺達三人で行くしか無さそうです」


いやいやいや…俺だって僕の方に切り替えれば……あ、そういう事か。


【ラーリーさんに、バレない様にか】


俺はおじさんにだけ伝わる様に思念を送り、おじさんは無言で頷いた。

ぶっちゃけお父さんとおじさんにはバレているのだから、もう一人ぐらいバレても支障は無いのではと少し思ってしまうが、あれでもラーリーさんはドラゴンスレイヤーの一部隊の副隊長だ。

ドラゴンに対して、そんなに良い印象を持っていないだろう。っていうか、ドラゴンに対して良い印象持ってる人間がいるなら会ってみたいくらいだ。


もし、ここで軽率に正体をラーリーさんにもバラしたら、何が起きるか分からない。

おじさんは、その可能性も考えてそう言ったのか。


【分かった。三人共、無理はするなよ】


「当然だよ」

「あぁ、息子の為にもな」


おじさんとお父さんは、微笑みながらそう言ってアルゴラの入り口の方へ歩いていく。


「え、心配してくれた? ドラゴンが? え、ね、ねぇ隊長! 今、ドラゴンが! ドラゴンが俺達人間を心配して…え? 何で驚かないの!? え!?」


ラーリーさんは、俺の言葉にかなり驚いていた様だ。

いや、今までも協力的だったんだから今更そんなに驚かなくても…。


その時、俺の耳に誰かの足音が聞こえた。

俺は体ごと振り返り、近づいてきた人物を睨む。


バルタスだ。


こいつ、囮がバレて追ってきやがったな。


【バルタスは俺に任せろ。早く行け!】


「分かった!」


おじさんはそう言い、残りの二人を連れてアルゴラに入っていった。

俺はアルゴラの入り口を防ぐ様に前に立ち、バルタスを睨む。


どうせこのバルタスも分身だ。


なら容赦無く倒す事ができる。何人になろうが、一度は倒した相手だ。今回だって、上手くやれるさ。


それに三人は…いや、三人共、腕利きの戦士だ。きっと彼等も上手くやれる筈だ。



ーーーーーーーーーーーーーーー



小さな円の光が、ポツポツと縦に続く廊下。

そこを俺はジオから貰った予備の銃を持ちながら、彼とラーリーと共に歩いていた。

壁も床も天井も、外壁と同じ様な黒地に青いラインが時々走る模様だ。最後に見た時と全く変わっていない。


アルゴラの構造は複雑だ。


そしてその構造を知る者は、アルゴラの警備を担当する領域監視部隊の一員。そして、隊長以上の上官のみだ。


俺がドラゴンスレイヤーを引退してそろそろ五年経つが、アルゴラの構造は変更されていない様だ。

しかし、ここは念の為、現隊長のジオに案内を任せよう。


「リベッジ、見ろ」


俺は、ジオの指差す方向を見上げる。

そこにあったのは、天井に付けられた高性能の監視カメラだ。


「やはり、起動していない」


パネルに続いて、内部のカメラまで起動していないなんてやはり妙だ。まさかこれも、ソーサラーの仕業なのだろうか。


そう言えば、あのパネルは監視カメラとも繋がっていた様な…。


「あのエレベーターだ」


階段を少し登ると、二つのエレベーターが見えた。

その内の左側のエレベーター。あそこが、メインルームに続くエレベーターだ。


俺達がエレベーターのボタンを押すと、既にそれは到着していた様ですぐにドアが開いた。


「なっ!?」


そこで、俺達は驚愕した。


なんとエレベーターの中には、心臓を撃たれて死んでいる一人のドラゴンスレイヤーがいた。

俺はすぐにエレベーターに入り、そのドラゴンスレイヤーの名前をポケットに入っている認識票から確認する。


「領域監視第三部隊隊員…ダニエル・スミス…」


「すまないねぇ。キミ達の仲間を殺してしまって」


突然の声に、俺達三人は振り返って銃を向ける。

背後には二人の男と、一人の女がいた。男の一人はクロサラ刀を腰にぶら下げている。嫌な予感が的中したな。それより、問題はもう一人の男だ。

そのさっき俺達に話しかけてきたもう一人の男、俺は…いや俺達はそいつを良く知っている。


「ダン・ノーマック…! あんた…殺された筈じゃ…!」


ラーリーがその男…ダン・ノーマックを見て驚愕していた。まぁそれも当然だ。世間的には、彼は殺されている。

ジオも、少し信じられない様子で目を大きく開けている。


「僕はソーサラーだよぉ? 仲間と力を合わせれば、偽装なんてお手の物さ。それにしても遅かったね。もうとっくの昔に、準備はできた」


準備だと?


「やはりお前達…このアルゴラに何かしたのか…!」


ジオが、ダンに狙いを定めながらそう言った。

ダンは当たり前かの様に軽く笑い出す。


「当然だろう? じゃないとわざわざ行かないさこんな場所。ダニエル君には助かったよ。おかげで目的の場所まで簡単に行けた」


ダニエルとは、さっきエレベーターで死んでいたドラゴンスレイヤーだ。

なるほど、どうやってアルゴラの複雑な構造が分かったのかと疑問だったが、やはり内通者がいたらしい。


「用済みだから…彼を殺したのか」


俺は、ダニエルの死体を一瞥した後にそう言った。

だが意外にも、ダンは首を横に降る。


「僕も不本意だったんだよ? 彼とは仲良くしたかったからねぇ。でも、彼はクリスタナをずっと見ていてね…」


クリスタナ? 奴の隣にいる女の事か?

スーツ姿の黒髪の女性。彼女がクリスタナなのだろうか。


「おい」


俺がクリスタナに意識を向けてると、ダンが野太い声で俺に声をかけてきた。

奴の方に向くと、奴は怒りの形相で俺を睨んでいた。


「さっきからクリスタナを見てんじゃねぇよ」


そう言うや否や、奴は隠し持っていたレーザー銃で撃ってきた。

俺は間一髪でそれを避け、他の二人と共に撃ってきたダンに狙いを構え直す。


こいつ、ちょっと彼女を見ただけなのに撃ってきた。

この様子だと、ダニエルもさほど彼女を見ていなかったのだろう。恐らく、ダンが彼女の事になると異常に感情的になるだけだ。


「チッ、もういい。話す気が失せた。さっさと帰って、花火でも楽しもう。ねぇ? クリスタナ」


「えぇ、そうね」


俺を撃てなかった事に舌打ちをしたかと思うと、明らかにダンは機嫌を損ねて出口へと向かい始める。

ヤバい。あいつらに逃げられる訳にはいかない。しかし、奴等がアルゴラに何を仕込んだのか探る必要がある。


どうすれば…


「リベッジ! ラーリー!」


俺が考えていると、ジオが俺とラーリーの名を呼んだ。


「俺がアルゴラを調べる! その内に二人はダン達を!」


「いいのか? 任せて」


「あぁ、アルゴラを調べるのは、構造を理解している俺が適任だ。だから早く行け!」


確かに、ジオの言い分は正しい。

俺も一応構造は理解しているが、それは過去のものだ。記憶違いもあるかもしれないし、もし構造が変わっていたら俺はその場で積んでしまう。

俺はジオの判断に従い、頷いた。


「分かった。無理はするな」


「もちろんだ。ラーリー! 今回はリベッジに従え! いいな!」


「了解!」



ーーーーーーーーーーーーーー



ふぅ…ようやくバルタスは全員片付いた。案の定みんな分身だったけど。


分身だから加減はいらないが、幾ら何でも数が多過ぎる。流石に疲れてしまった。


にしても、アルゴラの方は大丈夫かなぁ…。やべぇソーサラーがいなきゃいいんだが…。


あ、誰か出てきた。


……え?


「ほぉ…これが噂の黒いドラゴンか。生で見ると迫力があるねぇ」


アルゴラから出てきたのは、ダン・ノーマックだった。

ダンは男女一人ずつを連れて、まるで何事もなかったかの様な顔をしてやがる。


【ダン・ノーマック…! やっぱり生きてやがったか…!】


「おや? ドラゴンも僕のこと知ってるのかい? いやぁ流石だね。関心したよ」


ふざけやがって。大方、こいつが「ネオプロローグ」のリーダーってところか。なら、話は早ぇな。


【うるせぇこの野郎。「ネオプロローグ」のリーダーのてめぇを倒して、このふざけた戦いを終わらせてやる!】


「リーダー? 僕が? 冗談はよしてくれよ。僕はリーダーじゃない」


あ? じゃあ一体誰が…


「リーダーは彼女だ」


なに?


俺は、ダンと一緒に出てきた女を見る。

スーツ姿の黒髪の女。こいつが「ネオプロローグ」のリーダーだってのか。


「おい」


ん? 何だ? ダンの様子が少し違って…


「低俗のドラゴン如きが、クリスタナを見てんじゃねぇよ」


は? 俺、そんな怒られるぐらい見てました?


「ケンゴ」


ダンが、隣の黒髪の男の名を呼んだ。

あの男、ケンゴって言うのか。クロサラ刀ぶら下げてるし、名前といい顔立ちといい、こいつクロサラ人だな。


クロサラ刀を持つソーサラーとか憧れてしまいそうだが、今のこいつは敵だ。


俺は刀の柄を手にした奴を見て、後方へ飛ぶ。


「殺れ」


ケンゴとかいうクロサラ人が、ダンの命令で刀を抜き俺に向かって振り下ろした。

だけど俺は、もう既に距離を取っている。クロサラ刀はロマンだが、所詮は近距離型の武器だ。


距離を取れば先端にすら当たらな……え?


俺は目を疑った。


何故なら、刀の刀身が伸び俺に迫ってきてたのだから。


「グオォ!?」


俺は驚きながら、左に体を逸らして振り下ろされた伸びた刀を避けた。

俺がケンゴの方へ向くと、刀の長さは通常のものへと戻っており、奴が無表情で俺を睨んでいる。


な、何だ? 幻覚か? いや違う。確かに刀は伸びてた。

まさか、これが奴の魔法か? 「刀身を伸ばす魔法」って事か?


「流石にドラゴンは素早い。が、何処まで持つか…」


奴はそう言って、また刀を抜こうとする。

しかしそこで俺は、奴等の後ろでおじさんとラーリーさんがアルゴラのシャッターから出てきたのが見えた。


「動くな!」


おじさんはすぐに、ダン達に銃を向けた。

彼等は振り返り、おじさんと共に銃を構えたラーリーさんを見つめる。


「やれやれ…本当に今日は邪魔者が多いなぁ。もういいよケンゴ。帰ろう」


「分かった」


「動くなと言っている!」


ダンと女…確かクリスタナと言ってたか。それとケンゴがお互いに手を繋ぐ。


何だ? 何かする気か?


俺が警戒する中、ラーリーさんがダン達にレーザーを放った。

流石にあの距離では、人間は避けられない。


その時、ケンゴがそのレーザーを睨む。


なっ!?


俺はその後に起きた出来事に驚愕した。


俺だけじゃない。おじさんとラーリーさんもだ。


だが、驚くのも無理はねぇ。


だって、ダン達に放った筈のレーザーが、ゆっくり移動したと思うとその場で静止したからだ。


え? どういう事だ? さっき、ケンゴが睨んでたが、これもケンゴの魔法か?

いやでも…ケンゴの魔法は「刀身を伸ばす魔法」とかなんじゃ…。


俺達が困惑してる隙に、ダン達三人は一瞬でその姿を消した。

そして姿が消えた途端にレーザーは動き、思わず先にいた俺に当たりそうになる。


危ねぇ…。だけど、どういう事だ?

結局、三人の魔法は分からなかった。一人でも分かれば少しは気が楽なんだが、三人共よく分からん。

少なくともケンゴは、「刀身を伸ばす」「レーザーの動きを止める」この二点が可能な魔法の筈だが…うむむ…全く分からん。


「大丈夫かい?」


俺が頭を悩ませる中、おじさんが心配そうに声をかけてきた。

そう言えば、お父さんがいないな。何処に行ったんだ?


「あ、そうだ。ジオはアルゴラで調査してるよ。奴等が何かをしたみたいだからね」


なるほど。確かに奴等がアルゴラに向かったのは何か理由がある筈だ。

その調査なら、現隊長のお父さんが適任だよな。


ん? おじさんのインカムから連絡が入ってきた。


おじさんはインカムを取り出し、それをスピーカーモードにして通話に出る。

ラーリーさんもそれに気付き、俺達はドラゴン一匹、人間二人という奇妙な組み合わせで集まる。


「ジオ。何か分かったのか?」


「あぁ…かなり深刻だ」


深刻? 何だ? 一体何が…。


「どういう事だ? 説明してくれ」


「マイクロ波自動遮断プログラムが消えている」


「遮断プログラムが? ま、待ってください! それじゃあ…」


「そうだ。オルフィレンが無限に増殖し続ける」


オルフィレン。

全ての機器が燃料としている人工エネルギーだ。

確か、宇宙から常に放たれているマイクロ波を浴びる事で無限に増殖する半永久機関と聞いた事がある。


環境を汚さない上に、マイクロ波を照射する限り無くならない究極のエネルギーだが、欠点としては先ほど言った「無限に増殖する事」だ。

無限に増え続ける為、そのまま放って置くと機器は過剰な量のオルフィレンにより爆発を起こしてしまう。

それを防ぐ為に、オルフィレンが増え過ぎると自動的にマイクロ波を遮る遮断プログラムが全ての機器に付けられているのだが、それが消えてるって事は…。


「ジオ! 早くその場から逃げろ! 爆発するぞ!」


「もう遅い。既に各機器が限界を超えている。アルゴラが爆発するのも時間の問題だ」


やべぇ…! 早くお父さんを助けねぇと…!


「隊長! 俺もすぐに向かいます! だから…」


「もう無理だラーリー。せめて、お前達だけでも安全なところへ」


無理ってまだ分かんねぇだろうが! 待ってろ!何としてもアルゴラに入ってやる!


俺は、翼を広げてアルゴラへ向かう。


確か外壁はニーベニウム製って話だ。直接触るのは危険だ。

そんで多分、お父さんがいるのはメインルームだろう。

メインルームの場所は知らんが、大方上の階にある筈だ。


大丈夫だ。まだ間に合う。きっと間に合う。きっと。きっときっときっときっときっときっときっときっときっと……


瞬間、俺に大きな衝撃が襲った。


アルゴラは爆音を上げ、ゆっくりと崩れ落ちた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



俺が目を覚ました時、辺りはアルゴラの破片が転がっていた。


所々に黒い煙が上がっており、俺は辺りを見渡す。


何処だ。何処にいる。お父さんは、お父さんは何処にいる。


きっと大丈夫な筈だ。お父さんが、あのお父さんがこんな事で死ぬ筈が無い。


まだ分かり合えたばかりなのに。ようやく秘密を話せたばかりなのに。


嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


俺は込み上げる思いを、どうする事もできずに空へと咆哮を上げた。


この咆哮は、何処までも聞こえたらしい。


遠くの方から、アルゴラの爆発を眺めるダン達からも。


そして、人間の管区外からアルゴラの爆発を呆然と見つめていたトルネード達からも。


俺の咆哮は、何処までも届いた。


だけど俺の咆哮は、一人の人間の耳には届かなかった。


俺の、僕のお父さんには、届かなかった。

Q.ケンゴの刀ってどのくらいまで伸びるの?


A.13kmや(大嘘

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ