第17話「TRUE COLORS」
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まさかこんなにアクセスが来るとは嬉しい限りね。ホントにね。書いてる甲斐がありますよマジで
ドラゴンスレイヤーは各国に存在する。そしてその本部は、ジフォード合衆国の首都「エルバーシャ市」にあった。
ジオはそのドラゴンスレイヤー本部のジフォード合衆国防衛第一部隊隊長だ。
彼が仕事の時間の合間を利用し、本部を出ていくと本部の門前にリベッジが待っていた。
「どうしたジオ。いきなり呼び出して」
ジオはいきなり、リベッジの襟元を掴む。
「アピアスはどうした?」
「アピアス君? それはお前、もう見張りは良いって…」
「違う! 俺がウォーディー市でバニッシュといた時、アピアスはどうしてたと訊いているんだ!!!」
ジオの質問の意図を知り、リベッジは彼から目を逸らす。
その反応だけで、ジオには十分だった。
「見失ったんだな…。アピアスを!」
「……厳密には違う」
「なに?」
リベッジの言葉に、ジオは疑問を感じた。
リベッジは周りを見て「話はあそこで」と人気のない路地にジオを連れて行く。
「……何故、その時にアピアスがいなくなったと思ったんだ?」
リベッジは、確信を得るためにジオに質問した。
ジオは、少し信じられない様に口を開く。
「信じられん事だが…奴から…バニッシュから、アピアスの声が聞こえたんだ」
「……なるほど。テレパシーと言えど、届く声はその個体によって違うもんな」
「あぁ、それを聞いてから…頭の中がモヤモヤして…。今日遭遇したドラゴンも、人に化ける魔法を使っていた。もしかしたら、バニッシュも…ずっと俺の息子に化けていたのかも…」
「……それで、もしその仮説が正しかったらバニッシュと会っていた時にアピアス君がいない筈…。それで俺に訊いてきた訳か」
自分で考えた仮説だが、とても信じられないのだろう。
ジオは少しパニックを起こしている様だった。
無理も無い。自分が殺そうとした相手が、自分の一番愛する息子かもしれないのだから。
「考えてみたら、アピアスはバニッシュが現れ始めてから怪我をよくしてくる様になった…。しかも、位置もほとんど一緒だ。そしてアピアスを食ったドラゴン…あれもバニッシュだとしたら、アピアスはその時に殺されて…」
「ジオ」
友に名前を呼ばれ、ジオは下げていた顔を上げる。
するとリベッジは、後ろを向いてそのゴミだらけの景色を小型カメラで撮影した。
「リベッジ? 何を…」
「……お前には、できれば秘密にしておきたかった。お前がパニックを起こさない様にな。だが、今となっては真実を知った方が良い」
「お前…知ってたのか! 俺の息子が、ドラゴンが化けた偽物だって!」
リベッジは、タブレットで誰かにメールを送る。
「偽物かどうかは…本人に訊け」
そう言ってしばらくすると、リベッジの背後に一人の少年が現れた。
「おじさん。一体何の…はな……し…」
その少年を、ジオはよく知っていた。
現れた少年、それは彼の一番愛する者…一人息子のアピアスだったのだ。
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ふぅ。これで宿題は終わった。
僕は今日の宿題を終え、部屋で一息吐いていた。
しかし、あのアクターってドラゴン…まだ人間の姿で街中を彷徨ってるのかな。
そうなると、何時牙を剥くか分からない。すぐに対処したいところだけど、一体何処を探せばいいのか…。
ん? おじさんからメールが来た。
何々? 今から写真のところに来てくれ?
僕はメールと一緒に送られて来た画像を見た。
うわっ、どっかの路地みたいだけどゴミだらけで汚い。
まぁいいや、どういう事かは知らないけど来てみるか。
僕はその画像を見つめながら、テレポートする。
テレポートは成功し、僕は画像にあった路地に着いた。
「おじさん。一体何の…はな……し…」
僕は、おじさんと一緒にいた人間を見て固まった。
なんとそれは、僕のお父さんだったからだ。
お父さんはいきなり、僕に小型のレーザー銃を向けた。
僕も思わず、自衛本能に任せてドラゴンである俺の姿に切り替えて奴に威嚇する。
「待って二人共!」
そんな俺らを止めたのは、俺を呼んだおじさんだった。
「ジオ。銃を仕舞うんだ」
「指図するな! こいつは俺の息子を…」
「違う! まずは彼の話を聴くんだ」
おじさんはそう言うと、次に俺へと顔を向ける。
「キミもだ。その姿より、もう片方の姿でいてくれ」
……チッ、仕方ねぇ。
少し不本意ではあるが、俺は人間である僕の姿に切り替えた。
「ジオ、もう一度言う。銃を仕舞え」
おじさんの言葉に、お父さんは僕とおじさんを交互に見て、銃を懐に仕舞った。
でも、まだ警戒している。それもそうか…。目の前で息子が、魔法を使ってさらにはドラゴンになったんだから…。
「おじさん、何で僕をお父さんのところに…」
「ジオが、バニッシュがキミなんじゃないかって疑い始めたんだ。キミの声のテレパシーが聞こえたってね」
あっ、あの時か。
僕はアクターが人間からドラゴンの姿に戻る時に、咄嗟に僕の方の人格でお父さんにテレパシーを送った事を思い出した。
あの時は必死でそこまで頭が回ってなかったが、何て初歩的な間違いをしてるんだ僕は。
「ジオはバニッシュがアピアス君を殺して、彼に成りすましていると思い込んでいる。説得して、ジオを納得させてくれ」
「で、でも…僕が偽物って疑われてるなら僕の言葉なんか聞かないんじゃ…」
「キミは本物のアピアス君だろう? 大丈夫だ。父親なら、分かるはずだ」
何て無責任なんだ。
僕はそう頭の中で呟きながら、仕方なくお父さんの方を見る。
お父さんは、未だに警戒している。何だか、見てると悲しくなってきちゃうな…。
「お、お父さん? その…」
「俺を父親と呼ぶな! 偽物め!」
お父さんは、今にも僕を殺しそうな目で睨んでくる。
あの…やっぱり説得とか無理だと思うんだけど…。
「ち、違うんだよ! 確かに僕はバニッシュだけど…」
それを聴くや否や、お父さんは再び銃を取り出そうとする。
「話を聴けジオ!」
でもそんなお父さんを、すぐにおじさんが制した。
お父さんはおじさんを睨みながら、ゆっくりと銃から手を離す。
「え、えっと…その…説明し難いんだけど、僕達…融合したんだ」
「融合?」
「そう! 僕が前、ドラゴンに食われた時があったでしょ?」
僕はバニッシュの部分を出さない様に気を付けながら、話を進める。
「その時、理由は分からないけど僕とそのドラゴンは融合したんだ! だからその…僕は僕で、同時にバニッシュで…! そ、その…」
あぁダメだ。上手く話が纏まらない。
というか、自分でも何でこんな事が起きたのか謎なのに、それを説明しろなんて無理な話だ。畜生、おじさんめ…。これで俺が撃たれたら責任持てよな……おぉっとバニッシュが出てた。危ない危ない。
「もっと…分かりやすく説明しろ」
お父さんから辛い指摘が入った。
いや、分かってるよ? 確かに分かりにくいのは分かってるけどさ、これ以上どう説明したらいいのか分からないんだよ本当に。
「だ、だから! えぇと…その…そう! 本物だよ! 僕は僕で! アピアス・ファーナー! お父さんの一人息子だよ! これで分かった!?」
お父さんは、未だに黙って僕を見ていた。
うぅ…流石に話が飛躍し過ぎた…。次は何て言えば…。
「ジオ。父親のキミなら分かるはずだ」
流石にヤバいと思ったのか、おじさんが話に入ってきた。
出来る事なら、これで話は終わって欲しい。
「彼の目が、嘘を言う者の目に見えるか? 本物の息子じゃないと…本当に思うのか?」
おじさんの言葉を聴いても、お父さんは黙ったままだ。
やっぱり…信じてもらえない…のかな…?
「………アピアス…」
しばらくすると、お父さんが僕の名を呼んだ。
「母さんには…絶対にバラすな」
「……最初から…そのつもり…だよ…」
お父さんはそれだけ聴くと、体ごと振り返り路地を出て行った。
え? これ…信じてもらえたの?
「……一応理解はしてくれたみたいだけど、しばらくは距離を置いた方が良さそうかもね」
おじさんは僕に近寄りそう言ってきた。
こいつ…何か他人事の様に…。
「キミは私を恨んでる様だけど、ここで直接話さないとジオは壊れてしまうところだった。それだけは、分かって欲しい」
何だ。恨まれてること理解してたのか。じゃあ殺されても文句は言えねぇな。
「……もし私を殺したら、ジオとの信頼はガタ落ちだね」
仰る通りで。
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午前1時8分
ジオが帰宅してきたのは、家族全員が寝静まった深夜の時間帯だった。
ジオは無言で家に入り、リビングに続く自動ドアを通る。
リビングに入ると、テーブルの前で一人息子のアピアスが椅子に座っていた。
「……お前か」
「う、うん。おかえり」
ジオはアピアスを一瞥するとソファに腰を下ろす。
「おじさんには、しばらく距離を取れって言われたんだけど…」
「リベッジが正しい。お前とは…しばらくどういう顔をしたら良いのか分からない」
実の父の言葉に、アピアスは悲しげな顔をする。
だが、彼にはどうしても訊かなければいけない事があった。
あのアクターが取り憑いたドラゴンスレイヤーだ。彼の身元が分かれば、少しは前進する筈だ。
「お父さん、訊きたい事が…」
「後にしてくれ」
ジオは息子と話したくないのか、それとも着替えたいのか、はたまたその両方か自分の部屋へ移動する。
「今すぐ知らなきゃいけないんだ。今夜襲ってきたドラゴンの事なんだけど…」
「アピアス」
「な、なに…?」
父に名を呼ばれ、アピアスは不安そうに彼の顔を覗き込む。
父の顔は、それはとても疲れ切った顔をしていた。
「俺はドラゴンを殺して人々の安全を守るドラゴンスレイヤーだ。俺にとって、ドラゴンは獲物だ」
ジオは、息子の顔を見つめる。
「言っただろう? お前とは、どういう顔をすれば良いのか分からないと」
父にそう言われても、アピアスは父の顔を見つめ続ける。
ジオは視線を外して溜め息を吐き、再び息子の目を見つめる。
「分からないんだ。本当に。お前とは、どう接すれば良い? ドラゴンとして…獲物として見るべきなのか? それとも、大切な息子として見るべきなのか? 俺には、まだ分からないんだ」
父の言葉にアピアスはしばらく黙るが、アピアスは父の服をぎゅっと掴んだ。
それに気付き、ジオは息子の顔を見る。
「僕だって、同じだよ。お父さんはお父さんだけど、同時に天敵だもん。でも…僕はそれでもお父さんが好きだよ。だって、アピアス・ファーナーのお父さんは、ジオ・ファーナー…お父さんだけだもん」
ジオはそれを聴き、再び息子から目を逸らし着替えを取り始める。
「……それで? 訊きたい事って何だ?」
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午後2時17分
マンハッタン探偵事務所
「ベン・ハインツマン。36歳」
リベッジがタブレットに表示された個人データを見て、そう呟いた。
彼の目の前には、ジオが立っている。
「彼が、昨夜行方不明になったドラゴンスレイヤーか」
「あぁ、同時に深夜のバー襲撃事件の犯人でもある。と言っても、実行犯はドラゴンだがな」
ジオはそう言い、小型タブレットに写る画像をリベッジに見せた。
その画像には、レーザー銃を連射しているベン・ハインツマンの姿が。
「……確か『死者に取り憑く魔法』だったか。体を乗り換えられると面倒だな。誰がそのドラゴンなのか判別できない」
「その判別方法だが…残念ながら考えないといけなさそうだ」
どうやら、リベッジの嫌な予感が当たったらしい。
リベッジはそれを聴き、天井を見上げて深い溜め息を吐く。
「このバーに警察が来た時には、もう誰もいなかったそうだ。そして同時期にドラゴンの目撃情報と行方不明者が続出している」
「なるほど…もう誰がドラゴンなのか分からない状況な訳か…」
「しかも面倒な事に、ベンのレーザー銃は未だ見つかっていない。あのドラゴンが持っている可能性がある。恐らくあのドラゴン、武器を得る事が目的で最初暴れてたんだな…」
ジオの言葉に、リベッジはジオの持っていた小型タブレットを取った。
そして、そこに写る画像を…正確にはさらにそれに写されているレーザー銃を見つめる。
「B&K-D8000…厄介だな」
「あぁ、対ドラゴン用の銃に加え、この銃はコンパクトに折り畳みできる代物だ。すぐに隠せる。誰がドラゴンなのか判別がつかないぞ」
「その判別方法は考えてみるよ。それより、その調子だとアピアス君とは上手くいったみたいだな」
ジオは途端、苦い顔をした。
リベッジはそれを見て、なんとなく彼の心境を読み取る。
「まだ…少し距離があるみたいだな」
「まぁな…。確かにあいつはあいつだ。俺の息子だ。それは分かる。だが、それでも俺には…」
「……無理はしなくていい。さぁ、そろそろ仕事に戻らないと部下が心配するぞ」
「あ、あぁ…分かってる…」
ジオは未だに困惑しながら、リベッジの事務所を出ていった。
一人になったリベッジは、アクターの判別方法を考え始める。
あの親子関係は、自分がどうこうして完結する問題ではない。
それに、彼は信じていた。
あのジオの事だ。
きっと、人助けをするバニッシュの姿を見れば、考えを改める筈だ。あのバニッシュは確かにドラゴンだが、同時にアピアスでもある。
アピアスとドラゴンが同じだと知った今、ジオは真実を正しく見つける事ができる筈だ。
何故なら、アピアスはジオの息子なのだから。ジオはアピアスの父親なのだから。
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午後6時15分
ダイアンド第三中学校
「はい! じゃあ今日の補習はここまで! 明日が最後の補習だから、休まないでよぉ? 休んだらまた補習だからね!」
よ、よし…あと一日…。あと一日で、この補習が終わる…。
僕は補習が終わり、一安心していた。
でも、問題はここからだ。こうやって僕が補習を受けたりしてる中、街中ではアクターが人間の姿で好き放題暴れている筈だ。
お父さんにはアクターの事を伝えてあるから少しは調査とかしてる筈だけど、それでも不安だ。
僕は他の補習をした生徒と一緒にクラスを出て、すぐにトイレの個室に入った。
そしてすぐに、おじさんの事務所へテレポートをする。
「おじさん!」
「来たか。いきなりでビックリしたよ」
そう言うけど、おじさんは言うほどビックリした様には見えない。
僕はすぐにおじさんに駆け寄った。
「おじさん! アクターのこと、何か分かった?」
「アクター? あぁ…例のドラゴンの事か。いや実は…今どうやってアクターを見分けれるか考えているんだ」
アクターと人間の見分け方か。
確かに、それが分からないと話にはならない。う〜む…アクターと人間…一体何が違うんだろうか…。
あ! 一つ見つけた!
「おじさん! 多分奴は、憑依した人間の記憶までは手に入れる事ができないよ!」
「記憶?」
「うん! 記憶があれば、奴は人語を発する筈だ! でもあいつは声を出すとしたら悲鳴だけで、僕に語りかけてきた時はテレパシーを使ってた!」
そうだ。まず最初に奴が女性に憑依した時、悲鳴だけでなく「このドラゴンが人を殺した」的な事を言って、僕に罪をなすりつける事も出来た筈だ。
でもそれをせずに、悲鳴だけ上げたという事は、人の言葉を知らなかったという可能性が高い。
記憶まで手に入れるのなら、言葉の話し方も知る筈だし、それを知らなかったという事は記憶はアクターのみのままだったって事のはず!
「なるほど、だが…それでどう見分ける? 一々人が喋れるかどうかを確認するのか?」
うぅ…確かにおじさんの言う通りだ…。
この見分け方だと幾ら何でも時間がかかる。そうだ。もっと視覚的に分かるもの…。
「うぅん…元は死体だから傷痕…って言っても、見た感じ傷痕も回復するみたいだからなぁ…。う〜ん…」
「ん? アピアス君、キミ今なんて…」
「え? 傷痕も回復するって…」
「そうじゃなくて! その前!」
「前? 元は死体だから…ってところですか?」
一体、おじさんは何が気になったんだろう。僕にはさっぱり…
「……そうだよ! 何で気付かなかったんだ! 奴は歩く死体じゃないか!」
え? うん…そうだけど…。
あ、おじさん誰かに連絡し始めた。
一体どういうこと? 確かに「死者に取り憑く魔法」なんだから歩く死体なのは当たり前だけど…。
「ジオ! 聴こえるか!?」
「あぁ、どうした」
インカムのスタンド台から、お父さんの声が聞こえた。
僕にも聞こえる様に、おじさんはスピーカーにしたみたいだ。
「例のドラゴンの見分け方が分かった! 体温だ!」
「体温? ……そうか! 奴は死体だから…!」
あ、そういう事か!
「そうだ。ドラゴンが憑依しているとしても、元は死体だ。体温が著しく低いかもしれない!サーモグラフィーで見れば一目瞭然だ!」
「分かった。早速試してみる」
そこで通信は切れた。
僕はおじさんと目を合わせる。
「試してみるって…一体何処で…」
「ドラゴンの目撃情報を元に、ある程度の目星は付いている。大丈夫、後はジオに任せよう」
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午後6時48分
ナイトーザ・リビング・センター
ナイトーザ市に建つ五階建ての大型ショピングセンターは、水曜の夜だというのに人々が賑わっていた。私服のドラゴンスレイヤー達はそんな中で密かに見回りをしている。
ここは二階から最上階の五階まで吹き抜けで、隊長であるジオは、順番通りに全階を回る予定で今現在は三階まで上がっている。
ドラゴンの目撃情報からすると、ドラゴンはこのショピングセンターに向かっていた。
恐らく、人が大勢いるところを狙っているのだろう。
そしてそのショピングセンターの外にあるビルの屋上で、一人のドラゴンスレイヤーがサーモグラフィーカメラを使って、内部を観察していた。
「ファーナー隊長」
「どうした」
そろそろ四階に上がろうかとしていたジオに、通信が入る。
「三階の東側エレベーター前のベンチに座ってる男。他の人間より体温が低いです。現在も徐々に低くなっています」
「恐らく死体だな。みんな、気を付けてかかれ」
ジオは部下達に通信をし、東側エレベーターの方へ向かう。
部下の報告通り、ビジネスバッグを持つメガネをかけたサラリーマンがベンチに座っていた。
ジオは、何食わぬ顔でサラリーマンの方に近づいていく。
しかし、後一歩のところでサラリーマンはジオの方を向き、ビジネスバッグから折り畳み式のレーザー銃を取り出した。
「みんな伏せろ!」
それに気付いたジオは、すぐに小型のレーザー銃をそのサラリーマンに放つ。
サラリーマンはレーザーに吹き飛ばされ、体が破裂して中から深緑色のドラゴン・アクターが姿を見せた。
パニックに陥る人々。
アクターは悔しそうに舌打ちをし、ジオを睨む。
【よくもやってくれたねぇ…!】
アクターの思念が、ジオの頭の中に響いた。
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「お母さん! ちょっと買い物行ってくる!」
「え? か、買い物!?」
夜一人で外出するなんて滅多にない事なので、お母さんはかなり困惑していた。
でも、僕はここで足を止める訳にもいかない。
ついさっき、おじさんからメールが来たのだ。
《ナイトーザ・リビング・センターにドラゴンが現れた》
十中八九、アクターだ。
そのショピングセンターなら、何度か家族と一緒に行った事がある。
僕は家を飛び出すと同時に、ナイトーザ・リビング・センターの一階の大広間にテレポートする。
突然大広間に現れた俺だったが、ショピングセンターは既に混乱に陥っていた。
「うわああああああ!!!」
上から叫び声が聞こえてきた。
俺が顔を上げると、吹き抜けになっている三階から一人の男が落ちていた。
俺は咄嗟にその男を両手でキャッチし、床に降ろす。
「く、黒いドラゴン…!」
助けられた男は、俺を見るなりそう言った。
言葉を喋ってるって事は、やっぱりこいつは生者か。
つまり、こいつが落ちてきた三階にアクターがいる訳か。
俺は翼を広げ、三階にまで飛び立つ。
俺が三階に着くと、丁度アクターが柵を飛び越えて飛んできたところだった。
うおっ危ねっ!
俺はアクターと衝突し、そのまま一緒に大広間に落下する。
いてて…こいつ…飛び出すなら飛び出すって言えよ…。
俺は頭を抑えながら立ち上がり、同じく立ち上がったアクターを睨んだ。
アクターも、俺の方を睨み返してきてやがる。
【こんなところにまで現れたのかい? 本当に物好きだねぇ】
【まぁな。お前の魔法の正体は分かったぜ? 一気に蹴りつけてやる!】
こいつの魔法、戦闘中であまり役に立たない。
不意を突くにはぴったりだろうが、カラクリさえ分かっちまえば楽勝だ。
【一気にだと? ボクが魔法だけに頼るドラゴンだとでも?】
アクターはそう言うと、口から炎を吐いてきた。
以前の奴はあくまで牽制用だったらしいが、今回の奴は違う。恐らく奴のフルパワーだ。
炎は相当の熱を持っており、ショピングセンターはいきなり火事に見舞われた。
やべぇ…まだ人が避難し終えてねぇってのに…!
って痛ぇ!
こいつ…! 俺が人間に気を取られてる内に殴りやがった…! しかも相当痛ぇぞ!
【ボクの魔法は確かに戦いには向かない。けどね、そんな事ボクが一番良く分かってるんだよ!】
アクターはどんどん俺にパンチを打ち続ける。
俺は反撃したいところだが、こいつの流れるパンチに手も足も出ねぇ。
【言っただろう? ボクは未来のスーパースターだ! 魔法がバレたところで、負けちゃう二流とは違うんだよお!!!】
奴のアッパーが、俺の顎に炸裂した。
俺の体は宙に浮き、そのまま背中を床に叩きつけられる。
痛ぇ…こいつ、結構やりやがる…。
だが…
再び奴が俺に炎を吐いた瞬間、俺は奴の背後にテレポートした。
俺はすぐに奴の首を絞め、動きを止める。
【誰がスーパースターだ! 死者を冒涜する奴が、スーパースターになれる訳ねぇだろうが!】
俺はこのまま奴を窒息させようとしたが、奴は俺の腹に肘打ちをし、俺に背負い投げをする。
【死者を冒涜ぅ? 死ぬほど弱い奴が悪いだよ! そんな弱者に権利なんてないんだ! 汚らわしい人間なら尚更さ!】
アクターはそう言って、倒れる俺に拳を振り下ろした。
しかし俺は再び姿を消し、奴がさっきまでいたであろう三階にテレポートする。
ここは何度も遊びに来た事がある。そして俺の魔法は「一度来た事がある場所」にテレポートする事ができる。
つまり、この大きな空間全てに、俺の「足跡」があるって事だ。
だから俺は、好きに色んな場所にテレポートできる。
【人間が汚らわしい?】
俺はふと感じた視線の方を振り返る。
そこにいたのは、アクターの攻撃でか左腕に血を流していたお父さんだった。
俺はお父さんを見て、思わず微笑んでもう一度アクターを見る。
【確かにな。人間は汚らわしいってか…面倒くせぇ。細けぇ事でぐだぐだぐだぐだ…体だけじゃなくて心も小せぇ。でもよ…】
俺の頭に、アピアスとしての色んな思い出が蘇る。
学校で送るつまらないけど平和な日常。クリントと交わすしょうもないけど楽しい会話。リーシャの疲れを癒してくれる笑顔。
そして、時に厳しいけど、とても優しくしてくれるお母さんとお父さん。
【人間も…悪くねぇ】
俺はテレポートを続け、消火器を二本ずつ両手で抱え、一本を口に加える。
そして再び大広間にテレポートし、その消火器を叩きつけると同時に安全栓を引き抜き、周りに薬剤を放射させる。
これで、火は少しでも収まる筈だ。
【人間も悪くない? 一体何を訳の分からない事を…!】
アクターが俺に再び迫り来ようとした瞬間、俺は魔法を発動し続けた。
消えたり現れたりする俺に、アクターは困惑し始める。
【クソッ! 何処だ! 出てこい臆病者ぉ!!!】
悪いが、そんな挑発に乗るほど俺は短気じゃねぇんだよ。
【人間を守る変態竜め!】
あ、ムカついた。一発殴る。
「グオォ!」
見事にアクターの歯が何本か飛んでった。
俺は殴るや否や、すぐにテレポートをしてその場から姿を消す。
こいつの遠距離攻撃は口から吐く炎しかねぇ。
炎はそれほど速くねぇから、避ける事なんて簡単だ。
それに、今は消火器の薬剤が放射されて視界が塞がれてる上に、俺はこの中を好きに移動する事ができる。
こんな状況で、負ける事なんてあり得ねぇ。
【ふざけるな…ふざけるなあ!!! ボクは未来のスーパースターだ! ボクがこんなところで負ける訳がないんだあ!!!】
あぁそうかい。でもな、運命ってのは時に残酷なんだよ。この前本で読んだ。
俺は豆粒サイズの圧縮弾を作り、それを奴の背後に向けて発射する。
「ガアァァァァァァ!!!」
圧縮弾は見事に命中し、その衝撃によってアクターは意識を失った。
へっ、どうよ。
アクターがやられた事を確認して、俺は三階の方へ目を向ける。
お父さんが、柵から俺を見下ろしていた。
俺はそんなお父さんを見て、微笑みながら親指を立てる。
ドラゴンの表情が人間に分かるとは思えないが、お父さんはそれを見て微笑んだ気がした。
「グ…グルルル…」
ん? 何か唸り声が聞こえた気が…
「危ない!」
お父さんがそう言った瞬間、俺の頰を横切って一本のレーザーが放たれた。そして、後ろで何かが倒れる音がする。
俺が振り返ると、そこにいたのは頭を撃ち抜かれたアクターの死体があった。
俺はもう一度、そのレーザーが放たれた方向に…お父さんの方を振り返る。
お父さんの隣に、黒人の男がレーザー銃を構えていた。
あの男はよく知っている。確か、お父さんと同じ部隊の副隊長だ。名前はマーカス・ラーリーといったか。
アクターにトドメを刺したラーリーさんは、今度は俺に銃口を向ける。
「待てラーリー!」
「! ファーナー隊長! 何故…」
でも、それをお父さんが止めてくれた。
ラーリーさんは、お父さんの行動が予想外だったのか目を丸くしている。
「バニッシュは、人々を助けてくれた。敵じゃない。俺達の味方だ」
「バニッシュ?」
お父さんは俺の方を見て、一度頷いた。
俺はお父さんに頷き返し、その場から姿を消した。
僕は家の近くの路地に姿を現し、思わず笑顔になっていた。
あの顔、きっとお父さんは僕を認めてくれたのだろう。それが分かっただけで、僕はとても嬉しかった。
「よし! これからも頑張るぞ!」
僕は自分にそう言い聞かして、路地から出て行った。
これからもきっと、とても大変な戦いが起きると思う。
それでも、僕ならきっと大丈夫だ。
ううん、違う。
「僕なら」じゃない。
「僕達なら」だ。




