第15話「THE COUNTDOWN」
何処か汚らしい内装の倉庫に、数十人の男女が集まっていた。
そして一人のスーツ姿の男が置かれた台の上に勢いよく登る。
「やぁ諸君! 今日この日! 我々の新たな始まりが始まる! 理解されない力を持ち、周りから迫害された者もいるだろう! 静かに暮らしていたのに、政府に追われる身となった者もいるだろう!
だが、それを我々が終わらせよう! 今日は、その目的の第一歩となる! 諸君! 我々の未来の為に、共に戦おうではないか!!!」
スーツ姿の男…ダン・ノーマックは右手に持つグラスを上げる。
そのグラスには、ウイスキーが入っていた。
「乾杯!!!」
ダンが合図を送ると、集まっていた男女も「乾杯!」と声を上げ、ウイスキーの入ったグラスを上げる。
一致団結した彼等を見て、ダンは心の底から笑顔を浮かべた。
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明日の月曜、リーシャは久しぶりに学校に行く事になった。
だから僕は、明日がすごく楽しみだ。
でも、今は今を楽しもう。
だって…
「ほら、早く行こう!」
リーシャが、今とても元気なのだ。
僕は目をキラキラさせるリーシャを見て、とても幸せな気分になった。
これなら本当に、明日学校に行けそうだ。
「クソッ…ああ元気になるのは良いけどよ…。何が良いんだよこれ…」
隣でクリントが愚痴を零していた。
まぁ、その気持ちは分からなくはない。正直、僕も何故あそこまでリーシャのテンションが高いのかが分からない。
僕達は今、アベンズ市にやってきていた。
アベンズ市には何でもある。首都ではないけど、僕達の住むジフォード合衆国で一番活気のある都市だ。
そして今日、このアベンズ市にある一つの巨大企業「アンリミテッドコープ」が、全世界にある重大発表を行う様なのだ。
「アンリミテッドコープがすごい会社なのは知ってるぜ? この会社、確か色んな事やってるんだよな?」
「えぇと確か…医療開発部門に科学開発部門に兵器開発部門、あと…最近は宇宙開発部門を作り上げたらしいよ。ホント凄い企業だよね」
「お前よく知ってるな…。テスト駄目駄目だったくせに…」
「テストは関係無いだろ!」
実はリーシャがこの企業の発表会を観に行きたいと言ったので、予めこの「アンリミテッドコープ」について調べていたのだ。
と言っても、あまりにこの企業のデータが多過ぎて途中で調べるの飽きたけど…。
僕達二人がリーシャに着いて行くと、既に大きな人混みができていた。
集まっているのはアンリミテッドコープの本社であり、今日はそこから何やら重大発表を行うらしいんだけど…一体何なんだろう。
にしても、本当にこの会社大きいな。一体何メートルあるんだろう…。
ここからじゃ天辺見えないんだけど…。
「あ! ねぇ二人共! 始まるよ!」
本当に今日のリーシャはテンションが高い。
そう言えばリーシャは、いつかアンリミテッドコープの医療開発部門に入るんだって言ってたっけ。憧れの会社の重大発表なら、嫌でも気になるんだろうな。
アンリミテッドコープの本社の前に、巨大なリフトが現れた。
そして、そのリフトはそのまま5メートルほどまで伸びた。そのリフトの上には、一人の人間が立っている。
「あ、あの人って…確かCEOの…」
クリントが指を差して言ってきた。
そうだ。あの人の事はよく知っている。恐らく、世界で知らない人間はいないだろう。
18歳の頃に企業を作り、それを僅か10年でここまで成長させた天才実業家だ。
「皆さん初めまして。アンリミテッドコープCEO、ダン・ノーマックです」
ダンは爽やかな笑顔を見せて、集まった人々にそう言った。
こんな人間が、こんな大企業を作ってしまうなんて、本当に尊敬しちゃうなぁ。
「今年はアンリミテッドコープ設立10周年。皆さんにはある重大発表をしたく、ここに集まって貰いました。
出来る限り、大勢の人に聴いてもらいたく、日曜に開催させて貰いましたが…安心してください。協力してくれた社員達にはちゃんとその分の手当は付けております。だからそんな不機嫌な顔しないでねジョー!」
ダンは何処かで作業しているのであろう、社員のジョーにそう言った。
そうだよなぁ。日曜に準備しないといけないとは大変だ。
「失礼。少し話がズレてしまいました。それでは、本題に入りましょう」
ん?
今、ダンが笑ったぞ?
普通の笑いじゃない。何か良からぬ事を企んでいる様な…。
「皆さん、ソーサラーは知ってますか?」
え? ソーサラー?
突然のダンのその問いに、辺りがざわつく。
「ソーサラーって…あの都市伝説のだよな?」
「でも、最近は本当にそのソーサラーがいるって…」
クリントとリーシャも不思議そうに話をする。
ソーサラーの事は極秘なのだが、大きな被害を起こしたソーサラーがいるのだから隠すのにも限界がある。
だから、ソーサラーは実在するのではと話は広まっているが、それを何故、世界を代表する様な巨大企業が話をするんだ?
「皆さんソーサラーをどうお思いでしょう? ドラゴンと同じ化け物でしょうか? いいえ、違います」
周りの動揺を無視し、彼は話を続ける。
何なんだ? 一体何の話をしてるんだ?
「ソーサラーも、人間なのです。彼等は、人間なのです」
彼は突然、一人の男を指差す。
「あなた。あなたは、ソーサラーですか?」
「ち、違います!」
ダンに指差された男は戸惑う様にそう答える。
だが、ダンはそれを聴き、わざとあまり納得しない様な表情をした。
少なくとも、僕はあの表情はわざとらしいと思う。
「違う? 何故断言できるのです。ソーサラーは魔法を使う人間。魔法を使いさえしなければ、気付かれる事もない」
やっぱり様子がおかしい。まさか重大発表って、ソーサラーの暴露か!?
でも、何でそれをアンリミテッドコープのCEOが?
「皆さん、ソーサラーは実在します! そして、彼等は政府に命を狙われている! 政府は! 同じ人間であるソーサラーを! 人権を無視して殺しているのです! さぁ…この中にソーサラーは何人います? 一体誰が政府に殺され…」
バシュッ!
聞き覚えのある音が聞こえたと思うと、ダンは左胸から血を飛ばして倒れた。
一瞬の静寂。
だが、それは突然悲鳴へと変わる。
有権者の暗殺に、周りの人々は混乱し恐怖に怯える。
もしかしたら今度は自分が撃たれるかもしれない。殺されるかもしれない。そんな恐怖に支配された人混みに、僕達は飲まれ始める。
「うわっ! リーシャ! クリント!」
「アピアス君!」「アピアス!」
僕は人混みに飲まれ、リーシャとクリントから遠ざかっていった。
でも、これで丁度いい。これなら、リーシャ達に僕の魔法を見られずに済む。
僕は人混みに紛れて空を見ながらテレポートする。
僕は俺へと姿を切り替え、上空から弾が来た方角を確認した。
あそこだ。
俺は翼を広げ、その方角へと向かう。あの音、多分スパイクギフトだ。
バシュッ!
うお危ねっ! また撃ってきやがった!
でもこれで確信した。ダン・ノーマックを殺したのは、やっぱりスパイクギフトだ!
奴は案の定、ビルの屋上にいた。
俺は奴の頭上を通り過ぎ、奴の背後に着地する。
「また来たか…」
スパイクギフトは振り返り、俺を見る。
【てめぇ…何でダン・ノーマックを殺した! まさかあいつは…】
「ソーサラーだよ。だから殺せと依頼があった」
やっぱりか。突然あんな事を喋り出すからまさかとは思ったが、まさか巨大企業のCEOまでソーサラーだったなんて。
【ふざけんな…ソーサラーだったら、殺していいって言うのかよ!】
俺は野球ボールサイズの圧縮弾を作り、それを奴に投げた。
しかし奴はそれを避け、さらに避けながら俺に向かって三発も小型銃を撃ちやがった。
「グアァ!」
俺はそれを右に転がって避けたが、最後の一発が左脚に当たってしまった。
俺は走る激痛に、思わず膝をつく。
この銃も威力が桁違いだ。
ってか、今このご時世でレーザーじゃなくて実弾の銃を使うとか何だよ。奴のこだわりってか? クソッ、そのこだわりでめっちゃ痛え…。
「キミには仕事を邪魔してくれた借りがあったな。今こそその借りを、返してやる」
スパイクギフトはそう言い、俺に向けて小型銃を撃った。
俺はさっきまでいた場所とは、左方向の場所にテレポートする事で避けた。
さっき奴の銃弾を避ける前に立っていた場所だ。
「ほう…なるほどな」
あ? 何がなるほどなんだ?
突然奴は、また小型銃を放つ。
俺はすぐにテレポートする場所に目を向け、移動する。
だが…
「グアッ!」
痛え! え? か、体に掠った?
俺、テレポートしたよな!?
俺は場所を確認した。
うん。景色はあまり変わらないが、確かに移動している。それなのに、何で弾が当たったんだ?
「余所見してる場合か?」
また奴が銃を撃ってくる。
俺はテレポートする場所を目視し、テレポートをする。
「グアァ!」
しかし、今回もまた弾が掠った。
な、何でだ!? テレポートしたのに、何故当たる!?
「外したか」
奴はそう言うが、テレポートして避けた筈なのに弾が掠ってるのは十分おかしい。
奴はもう一度銃を撃つ。俺は今度は、この屋上で奴の銃撃を初めて避けて移動した場所へテレポートする。
テレポートを終えた俺はすぐに奴の方を見た。
すると、既に奴がテレポートした俺に銃を向けていた。
なっ!
奴は俺に銃を放つ。
俺は体を反らし、なんとかその弾を避けた。
あり得ない。場所が分かっていない筈なのに、何でこいつ俺にすぐ銃を向けれたんだ?
まるで、俺が移動する先に検討がついてるみたいな…。
まさかこいつ…俺の魔法の弱点に気付いたのか!?
「これ以上魔法を使われると、位置を予測し辛いな…。さっさと死んでもらいたいんだが…」
やはりこいつ、気付いてやがる。
俺のテレポートは、目視できる場所と以前いた場所に限定される。
こいつは、俺が移動する場所を目で見たらそこに移動すると予測し、俺が特に場所を見ていないと判断したら、前いた場所に限定して意識を研ぎ澄ませていたのか。
なんて奴だ…。めちゃくちゃにも程があるぞ…。
いや待てよ? 敢えてそれを逆につけば良いんじゃないか?
俺は頭の中に別の場所を思い浮かべる。
その間に、奴は俺に向けて銃を撃ってきた。
今だ!
俺は敢えて頭に浮かべた場所と別の場所を見て、テレポートをした。
テレポート先は奴のいる屋上の何処かというのは変わらないが、俺がさっき見た場所はフェイクだ。
俺の目を見て奴が動いているのなら、奴は俺のいる場所とは見当違いの場所を撃つはず。その内に、こいつを捕らえる!
俺はテレポートを終え、すぐに奴へ翼を広げて突っ込んだ。
俺が見た奴は、なんと俺に銃口を向けていた。
え?
バシュッ!
「グアァァァァ!!!」
俺の右肩に、銃弾が命中した。
あまりの痛さに、俺はそのまま倒れてしまう。
「騙したつもりか? バレバレだぞ」
ま、マジかよ…。こいつ、本当にめちゃくちゃだ…。
「さぁ、終わりだ」
倒れた俺に近づいて、奴は銃を構える。
畜生…まさか、またこんな事になるなんてな…。
俺は悔しさを押し殺して、俺の住処へテレポートした。
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僕はアベンズ市に戻り、インカムで通話を開始した。
相手はもちろんクリントだ。
「クリント! ねぇクリント大丈夫!?」
「アピアス! お前無事だったのか! 良かったぁ…」
「クリント! リーシャは!?」
「リーシャも無事だ。お前、今何処にいるんだ!」
「えぇと…アベンズ駅前のゲームセンター!」
ここは、よく三人で遊んでいた場所だ。
ここならクリント達も場所が分かるだろう。
「分かった! あそこだな!」
クリントはそう言って、通話を切った。
僕は二人が無事なのにホッとしたが、すぐに右肩に痛みが走る。
俺の状態のまま、だいぶ時間を置いたので回復はしているけど、まだまだ痛い。
左脚も動かせばまだちょっと痛みが残るし、分かってはいたけどスパイクギフトは強敵だ。
それに、問題はダン・ノーマック。
ニュースによると彼は死亡したらしいが、僕は何故かそれが嘘な気がした。
政府に狙われていると知りながら、あんな堂々と姿を見せるのだろうか? あれでは、どうぞ撃ってくれと言っているかの様だ。
もしかして、それが狙いだった…とか?
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倉庫内でダンが、映像投影装置から映し出された映像でニュースを見ていた。
そこには大きく「アンリミテッドコープCEO ダン・ノーマック暗殺される」と書かれていた。
「無茶をしますね。ダンさんも」
そんなダンに話しかけてきたのはバルタスだった。
ダンは微笑み、投影装置の電源を切る。
「まぁね。でも、この作戦も仲間がいないと成立しなかった。おかげで殺し屋が僕を殺すタイミングも分かったし、死体も偽造できる」
ダンはテーブルへ移動し、その上に乗っているウイスキーの入ったグラスを持つ。
「小さな一歩だが、確実な一歩だ。これでソーサラーは実在するのではと疑う者が現れる。
無理も無いさ。ソーサラーの存在と、そのソーサラーが政府から命を狙われている事を公表した瞬間に、僕が殺されたんだ。人々は因果関係を考え始めるだろう」
「それに騒ぎを起こしたソーサラーだっている」
突然奥から、一人の男が現れた。
黒髪の男・ケンゴだ。
「彼等の起こした騒ぎを見た者達の証言から、元々ソーサラーの存在は浮き彫りになっていた。今回の件で、ソーサラーの存在を確信する人間も現れる」
ケンゴはそう言った後、バルタスを一瞥する。
「お前が起こした事件も、無駄じゃない」
「なるほど。全部計画通りって訳ですね」
「その通り!」
ダンは空のグラスをテーブルに置き、テンションを高くする。
「発明も一緒さ! 何事も小さな一歩から。この小さな積み重ねが、やがて巨大で偉大なものになる! ソーサラーが、生き生きと暮らせる世界にね!」
ダンのその演説を聴き、バルタスは鼻で笑った。
別に馬鹿にしてる訳ではない。テンションの上がるダンが、少し可笑しく見えたのだ。
「それで? 次の一歩は」
バルタスの問いに、ダンは笑みを見せて振り返る。
「次の一歩は…それに相応しい日に行うべきだ。それで? ケンゴ、何かよう?」
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僕は頭をもやもやとさせながら、お父さんの病室に向かった。
リーシャは、目の前で人が殺されてショックを受けていたが、明日の学校には行くという。
それは良かったけど、それでもリーシャには気の毒な話だよね…。だって尊敬してた人が死んだ訳だし。
僕は死んだとはどうしても思えないけど。でも、同時にスパイクギフトが殺し損ねたとは思えないんだよね…。まさかグルとか? それとも…。
僕が考え事をしながら病室のドアを開けると、いつも通りお見舞いに来ていたお母さんとベッドの上にいるお父さんがいた。
一つ違うのは、お父さんが目を開けてお母さんと話していた事だ。
「お父さん!」
「アピアス!」
僕はすぐにお父さんに駆け寄り、その元気そうな顔を見る。
「目が覚めたの!?」
「あぁ、迷惑かけてごめんな」
お父さんは優しく僕の頭を撫でてくれた。
お母さんが近くでいてちょっと恥ずかしかったけど、僕はそれよりも元気になってくれたお父さんを見て嬉しくなる。
「お父さんったら、明日にでも仕事に復帰するって言うの。お母さんだけじゃ無理だから、アピアスも止めてあげて」
「え!? もう復帰する気なの!?」
「当然だ。リベッジから聴いたが、ドラゴンスレイヤーも最近忙しいみたいだからな」
あぁ、ソーサラーの事か。
いやでも、流石に明日に復帰は早過ぎる。
「明日は幾ら何でも無茶過ぎるよ。もうちょっと休もう?」
「だが…」
「だってドラゴンスレイヤーは優秀なんでしょ? お父さんがちょっとぐらい休んでも平気だって! それより、お父さんの怪我が悪くなる方がよっぽど迷惑かかるよ!」
「う…うぅ…そ、そうか…」
僕の押しに負け、お父さんは少し納得しない様にそう言った。
そんなにお父さんは仕事がしたいのだろうか。正直、戦いとか面倒だしお父さんもいつも疲れてるから意味が分からない。
「でもせめて、独立記念日までには退院しないとな」
「独立記念日までって…それ再来週じゃん…」
「平気だよ。もうピンピンだしな」
「もう…そんな事言って無茶するくせに…」
笑って言うお父さんに、お母さんは心配する様に、それでいて呆れる様に愚痴をこぼす。
確か、独立記念日は再来週の金曜だったはずだ。本当にそれまでに退院するつもりなのかな。いや、お父さんならしかねないか…。
とにかく、今日はもやもやする事もあったけど、お父さんが元気になってくれたのなら一安心だ。
明日、リーシャも元気に登校できれば良いんだけど…。
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袋を取られ、椅子に縛られた男の視界にようやく光が入った。
しかし光と言っても、男が監禁された場所は薄暗い倉庫で、目を細めてしまうほどの強烈な光は襲ってこない。
「ダニエル・スミス。名前はこれで合ってるのかな?」
その男の方へ、ダンが小型のレーザー銃を持ってケンゴと共に近づいてくる。
「まさかあの発表会に、ドラゴンスレイヤーの人間がいたとはねぇ…。今日はどうしたの? もしかして、僕の発表が気になっちゃった?」
「ダ、ダン・ノーマック…。何で…あんたが…」
「あれケンゴ? この人、僕がソーサラーって事知らないの?」
「調べたが…そこまで上位の者ではない様だ。だが、それでも十分役には立つ」
「そっか。それもそうだね!」
ダンとケンゴの会話に、縛られた男・ダニエルは訳が分からなさそうに二人を交互に見る。
そして、ダニエルは一つの確信に迫る。
「ま、まさか…本当に…ソーサラーなのか…! ダン・ノーマックが…?」
「そうに決まってるだろ? じゃなきゃ、こんな事しないって」
ダンは突然指を鳴らした。
するとケンゴが刀を左腰の鞘から抜き出し、ダニエルの右脚を軽く切る。
「ああああああああ!!!」
軽く切られたとはいえ、ダニエルの体には激痛が走った。
ダニエルは肩で息をし、痛みを我慢する。
「もっと痛くなりたい? そういう趣味があるなら責めはしないけど…」
「も、目的は…な、何だ…!」
ダニエルの震えた声に、ダンは不気味に微笑む。
「ちょっと知りたい事があるんだよ。まずキミ…何処の部隊?」
「りょ、領域監視…第三部隊…」
「え? 本当? そりゃあ良かった! 実は僕の訊きたい事ってさ…」
ダンはダニエルの方に顔を寄せた。
「アルゴラの構造なんだけど…」
「ア、アルゴラの…? だ、駄目だ! 何を考えてるか知らんが、お前らみたいな異常者に教えられるか!」
「……そっか…」
ダンは腕時計を操作し始めた。
そして、腕時計にセットされた「10」の文字と小型のレーザー銃をダニエルに分かる様に見せる。
「今から10秒あげる。それを越したらこの銃でババババーン! ……だから、その間に話してくれないかな?」
「い、嫌だ…」
「10」
「あれは」
「9」
「人類を」
「8」
「ドラゴンから」
「7」
「守るものだ!」
「6」
「何をするか」
「5」
「知らないが」
「4」
「お前らに」
「3」
「教えるもんか!」
「2」
「例え…」
「1」
「死んだって…」
「なら死ねよ」
ダンはタイマーが終わるや否や、小型銃で何度もダニエルを撃ち続ける。
何度も撃たれたダニエルはそのまま息絶え、縛られた椅子は真っ赤に染まった。
「……さて、次に期待するとしますか」




