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ダブルイメージ  作者: ナメゐクジ
第2章
12/29

第12話「CHILDREN'S HAPPINESS」

ブックマークが3件も…ありがたやありがたや…

「ドラゴンスレイヤーは、ソーサラーを拘束する手段を考える様だ」


「そんなの、本当にできるんですか?」


僕はマンハッタンおじさんと一緒に、路地裏で話していた。


「まぁな。ドラゴン用のものを人間サイズに変えれば良いだけだ。何とか出来るだろう。それに、流石に同じ人間だからドラゴンの時みたいに野蛮な実験の様な事はしないと…」


そこまで言って、おじさんは咳払いをする。


「いや、何でもない」


僕は怪訝な顔でおじさんを見つめる。

まさかこいつ、ドラゴンに変なことしてないよな? 実験ってそれ、拷問の事じゃないよな?


「と、とにかく! これで少しはソーサラー対策もし易い筈だ」


「なるほど。まぁその実験とやらは置いといて…大丈夫なんですか? ソーサラーの事件にドラゴンスレイヤーは関わらないんじゃ?」


「総長はそう言っているが、実際問題ソーサラーはドラゴンと同じく魔法を使う。ならばドラゴンスレイヤーに任せるのが適任だろう。あと総長も、断れないだろうしな」


おじさんのその言葉に、僕は首を傾げる。


「弱みを握らせてもらったんだ。私は探偵だからね。それぐらい楽勝さ」


マジか。探偵こわっ。


「ただ、政府にとやかく言われてるらしいから、大きくは動けないらしい。加勢は期待しない方が良いだろうな」


「加勢なんて最初っから期待してません」


僕はそう言って、路地裏に出ようと歩を進める。

おじさんは特にそんな僕を止めようとせず、おじさんも反対側の方へ歩いて行った。


路地裏を出て、僕は沢山歩く人達の中からクリントを見つける。僕はすぐにクリントの方へ駆け寄った。


「ごめんクリント! 待った?」


「ん? いや大丈夫だけど…お前何処まで行ったんだよ。トイレあそこのコンビニの方が近いぞ?」


「え? あ、あーホントだ! ぜ、全然気付かなかったー!」


僕はクリントの言葉に、動揺しながらそう答えた。

クリントは何故か眉を細めているが、僕は気にしない振りをする。


「ま、まぁいいや。ほら、リーシャんち行くぞ」


「うん!」


僕はそう返事をして、クリントと一緒にリーシャの家へ向かった。

リーシャは最近、かなり元気になったそうだ。そして僕らも昨日テストが終わり、少しだけ重荷が無くなった。

だからそんな重荷が無くなった今日の帰りに、リーシャに会いに行こうという話になったのだ。

本当は昨日会いに行けば良い話だったんだけど、あの時は僕がテストボロボロでそういうメンタルじゃなかったから…。


しかし、リーシャとは久し振りに会う。あの動物園の事件から僕は入院して会っていないから、もう3週間も会っていない。


早く、リーシャに会いたいなぁ。


……ん?


突然吹いた強い風に、僕は少し違和感を感じた。


何ださっきの。何か…懐かしい感じがしたけど…。


「気のせい…かな?」


「おいアピアスー? 置いてくぞー!」


「あ! ちょ、ちょっと待って!」


僕は少し不思議に思ったけど、すぐにそんな事は忘れて走って行った。


そしてその風は、そのまま飛んで行き大きな壁を超えて、人間の管区外にまで飛んで行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



人間の管区外は、何処も整備されていない自然そのものの姿を保っていた。


人間の街を見てきたが、やはりここが落ち着く。


俺は風となっていた自分を一つに纏めて元の肉体に戻った。


肉体が戻った事を確認する為に、俺は自分の腕を見る。


紺色の鱗がびっしりと生えた腕を。


うん、今回も通常通り平気だな。


俺はそう確認し終えると、人間の管区内だと知らせる為の巨大な壁を見つめた。

この壁は魔断石で出来ており、この壁に触れると魔法が使えなくなってしまう。

飛んでしまえば問題無いのだが、最近は何やら人間の兵器が強化されたのか警備が厳しいらしい。まぁ俺には関係無いんだがな。


【おいそこのお前!】


突然背後からテレパシーが送られてきた。


振り返ると、そこにはえんじ色をしたドラゴンがいた。


【お前まさか人間の街に来たのか! おい! 俺も一緒に連れてってくれよ!】


はぁ?


俺はそのドラゴンの言っている事が分からず、「ガアァ?」と思わず間抜けな声を出した。

テレパシーは使わなかったが、俺が混乱しているのは通じた様で、そのドラゴンは少し笑いながら言葉を付け足す。


【俺もよぉ、あの腐った人間共に思い知らせてやりてぇのさ。俺の魔法なら噂に聞く裏切り者も殺せるんだが…生憎、人間の野郎守りを強くしやがったろ? どうしても入れねぇんだよ。入ったら人間なんてイチコロなんだがよぉ】


あの守りを突破できない時点で実力は知れてる気がするが、こいつはよっぽど馬鹿なのか?


【悪いが、それは無理だ。それにその裏切り者だが…例え入れてもあいつには勝てねぇよ。お前には】


【んだと!?】


【奴はかなり強いぜ? その点あんたは、自分の力に酔ってるだけだろ? 丸見えなんだよそういうの】


【てめぇ言わせておけば…! そんなに言うなら決闘だ! 俺の名はエッジ! てめぇは!】


決闘か。そりゃあ良い。

俺は自然に笑みをこぼしてしまう。


【トルネード】



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「そんでさ〜! こいつテストボロボロだったんだぜ〜!」


「や、やめてよクリント!」


クリントと僕の話を聴いて、リーシャは小さく笑っている。

僕は恥ずかしかったが、リーシャが笑っているのは素直に嬉しかった。


「でも、大丈夫だったのアピアス君。手、怪我したんでしょ?」


「え? あぁもうこの通り大丈夫だよ! 僕、治り早くてさ!」


「そ、そっか…良かった…」


リーシャは、僕の怪我の治った手を見てホッとしていた。

クリントの話によると、僕が入院中はずっと僕の事を気にしてくれていた様だ。

その話は入院中に聴いていたので、僕はその時クリントに「心配しないで」と伝言を残したのだ。

伝言はちゃんと伝わっていた様だが、それでもリーシャは僕の事を心配してくれたらしい。


「ずっと気にしてたんだぜお前の怪我。それなのにあっさり治って、何か拍子抜けだよな〜」


「悪かったね拍子抜けで」


僕がそう言った直後に、僕らはこのいつもの雰囲気を感じて自然と笑顔になった。


やっぱり、こういう普通の日常も良い。


学校帰りだからそう長くはいられないけど、それでもこの時間はとても充実なものだと思える。


僕と俺が融合してから、自分の人生はどうなるかと不安な面はあったが、こんな日をまだ過ごせるのだ。


僕の人生、まだ捨てたものじゃないのかもしれないな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



青空に、赤い血が飛び散った。


なるほど。こいつ、捨てたもんじゃねぇな。


俺…トルネードは、怪我をした左腕を抑えながらエッジから距離を取る。


エッジの爪は、異常なほどに伸びていた。


これが、エッジの魔法。

「自身の爪を伸ばす魔法」だ。


とても単純な魔法だが、ドラゴンの鋭利な爪が伸び、それを武器として扱うのだ。危険な魔法である事に変わりはねぇ。


【その程度かぁ? やっぱりこのエッジ様には、誰も勝てねぇみてぇだなぁ?】


俺に怪我与えたぐらいで調子乗りやがって…。イライラするなこいつ…。


俺は少々ムカつき、自身の体を徐々に風に変換させていく。

だがまだ俺の体に見た目の変化は特に無く、素人目にはまるで風が俺に集まっている様に見えている筈だ。


【お? 何だ? またその「風を操る魔法」で何かする気かぁ?】


どうやらこいつも、俺の真の魔法について気付いてねぇみてぇだ。

そっちの方が都合が良いから、俺は嬉しいがな。


【無駄だって言いてぇのか?】


【あぁその通りだ】


【なら確かめてみろ】


俺は魔法を一気に発動し、自身を巨大な竜巻に変えた。もちろん鱗は残してだ。


「グアッ!?」


エッジの奴は、俺が竜巻の中に消えたと思って困惑しているんだろう。

だがな、その一瞬の困惑が命取りなんだよ。


俺は竜巻の状態でエッジに向かっていく。

エッジは突然の出来事に驚き、両手を交差させて守りの態勢を取った。

しかし、それは一瞬で無駄に終わる。


「グアアァァァァァァァァァァァァ!!!」


竜巻に包まれたエッジが悲鳴を上げる。

俺の鱗で、体がどんどん切り刻まれているんだ。


【畜生! 何だこの竜巻はぁ! 何処にいる! てめぇ何処にいやがるぅ!!!】


エッジは訳が分からず、その長い爪を振り回す。

だが、俺は風になっている為そんな物理攻撃は通じない。通じるとすれば、あの黒いドラゴンがやってたみたいな衝撃波だが…奴の魔法を見る限り、そんな事できる技術は無さそうだ。


【く、クソッ! 何処にいる! 隠れてないで出てこいぃ!!!】


隠れるもなにも、俺はお前の周りをぐるぐる回っている。お前がそれに気付けないくらい馬鹿なだけだ。


【クソ…この竜巻め…邪魔だぁ!!!】


エッジはそう言うと、翼を思いっきり広げて竜巻の内側から風を放った。

俺はそれに少し押され、その所為で竜巻に少しの隙間ができ、エッジはそこから抜け出してしまう。

俺は仕方なく、竜巻から元の肉体に戻り奴を睨む。


【チッ…理屈は分からんが、妙な魔法だ…】


ほう、まだ俺の魔法を分かってないか。こいつ余程の馬鹿らしい。


【だが俺は負けん! 勝ってやる…! こんなところで負けてられん! 俺は人間を殲滅する! そして英雄となるのだぁ!!!】


やはり人間の街に行くのはそれが目的か。分からなくはない。俺も似た様な理由だ。人間を守る裏切り者を許せなかったから人間の街にやってきた。ただそれだけの理由だ。


【トルネード…貴様には悪いが、死んでもらおう! それが決闘というものだぁ!!!】


エッジは爪を伸ばし、俺に接近してきた。

だが甘いな。俺は自身を風に変え、奴の接近をすり抜けた。そしてすぐ様、右手を鱗付きの風に変えてそれを渦巻き状に回す。


【そうか。だが死ぬのはお前だ】


俺はそうエッジにテレパシーを送り、奴の背中に風のドリルを突き刺した。


「グオォォォォォォォォォォォ!!!」


エッジはその攻撃をモロに受け、痛みのあまり咆哮を上げた。

しかし、それで弱くするほど俺は甘くない。俺はドリルの回転を速めてよりエッジの体を抉る。


そしてしばらくすると、奴は咆哮は止まった。俺はすぐにドリルを抜き、右手を元に戻す。

エッジはその場で倒れた。息はしていない。完全に死んだ。


しかし、やはりこいつ実力は大した事無かったな。何故こういう奴に限って強がるのだろうか。馬鹿の考える事はよく分からんな。


……さて、それよりも…


【おい。何さっきからずっと見てるんだ?】


俺は背後にある岩に向かって念を飛ばした。

エッジはどうだったかは知らないが、ずっとその岩に隠れて見ていたのはお見通しだ。

俺は振り返り、その岩を見つめる。そして岩の陰から、一匹の小さなドラゴンが現れた。

まだ俺の足ほどの大きさしかない子供の黄色いドラゴンだった。


【やっぱり子供か。見世物じゃねぇぞ。さっさと帰れ】


「……グゥ…ガァ」


ん? 何だ?


「ガァ…グゥ…」


こいつ…テレパシーが使えないのか?

理由は分からんが、俺が奴の考えてる事を受け取るしかねぇみてぇだな。


【おい。伝えたい事があるならそれを頭の中で思え。テレパシーが使えなくてもそれぐらい出来るだろ】


「………」


子ドラゴンは俺の言ったことが分かったのか、一度頷いて目を閉じた。

何もそこまで集中しなくても…。


【僕のこと、知りませんか?】


ん?


今、奴の思った事を受信できた。


だが、一体どういう意味だ?


【お前のこと? どういう事だ】


俺がそう訊くと、また子ドラゴンは目を閉じる。

だからそこまでしなくても良いんだが…。


【僕、思い出せない。何も】


【何?】


子ドラゴンの言葉に、俺は驚愕した。

まさかこの子ドラゴン…いわゆる記憶喪失って奴か?


【思い出せないだと? 親の事もか?】


【親…分からない…】


親も分からないとは…こいつはかなり重症だな。


【僕、ずっと一匹…。でも、貴方いた。僕、安心した】


うぐっ。そんな目でそんな事言われると何か胸が苦しくなりやがる。

ってか安心って…俺、他のドラゴンと殺し合い中だったんだが…。


【お願い。僕、また一匹嫌。一緒にいて。お願い】


子ドラゴンは俺に近づき、俺の足を何度も揺する様に触ってきた。


あぁもう! そんな純粋な目で俺を見るな! 俺だって最近色々悩んでんだよ!


【あ、あのさ…俺にも俺の都合ってもんが…】


【いや! 一匹嫌! 怖い!】


うぐぐ…こいつ中々しつこいな…。


【無理なもんは無理だ! 俺にはそんな余裕ねぇんだよ!!!】


俺は心を鬼にして、その子ドラゴンを軽く蹴飛ばした。

フン。少し心は痛むが、これで奴も諦めるだろう。俺は奴がいない方へ振り返り、足を進める。


「ガァ! ガァ!」


しかし人間の街を見てみたが、やはり分からん。


「ガァ!ガァ!」


あの黒いドラゴン…何故そこまでして人間を守る。


「ガァ!!!」


俺には全く分からん。しかもあの黒いドラゴン、どうにもドラゴンを全滅させたい訳じゃねぇみたいだったし…。


「ク、クゥゥン…」


………あぁもう…。


【何で俺に着いてくるんだ!!! 無理だって言ったろ!!!】


俺は振り返って、悲しそうな顔をしながらも俺に着いてくる子ドラゴンにそう伝えた。

だがそれでも、子ドラゴンはまだ俺から離れようとはしない。


【クソ…。いいか? 俺だって暇じゃねぇ。子育てなんてした事ねぇし、するつもりもねぇ。他の奴に頼みな】


「クゥゥン…」


だからそんな顔すんなよ!!! あぁもう! 何だよ何が言いたいんだよ! こっちが意識してやんねぇと分かんねぇのすげぇ不便なんだよ!!!


【一匹…嫌…。強い貴方と…一緒いたい…】


強いって…。嫌な気はしないんだが、こいつエッジとの戦いを見て俺を強い認定しやがったな。多分だが、他のドラゴンと会った事もねぇのに。


しかし、こいつは妥協しそうにない。面倒だが、これはこっちが妥協するしかなさそうだ。


【……分かった。だが、何時までもそうだと思うな】


俺がそう伝えるや否や、子ドラゴンは一気に笑顔になった。


クソ、これはまんまと踊らされた気がする。俺は一体、これからどうすれば良いのだろうか。


【良し。一先ずは俺の住処に行くぞ。こんなところにいたら、また変な奴に絡まれる】


俺はそう言って自身を風へと変換し、子ドラゴンを風力で飛ばしながら住処に向かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



俺の住処は、森林の中にある。


緑が生い茂り、近くに川があるこの森林にある大きな洞窟だ。

周りは苔や草で隠されており、中々見つからないので、隠れ場所としても最適な場所。正に最高の住処だ。


……まさかこの住処に、子供を招き入れる事が来るとは思わなかったがな。


風と化している俺は、子ドラゴンを洞窟の中に入れると、体を風から肉体に戻して俺自身も洞窟に入っていった。

子ドラゴンは洞窟がそんなに珍しいのか走り回って壁や天井を見渡す。


【そんなに見ても面白いものは無い。悪いな】


俺はそう言って、洞窟の奥へ進んだ。


洞窟の奥は、闇夜に光る苔を床に敷いたり、壁にくっ付けたりして明かりを灯している。


子ドラゴンはそんな光景が気に入ったらしく、しばらく呆然と苔を見つめていた。


そんなに珍しいものでも無いんだが、記憶喪失らしいしこういうのも忘れるのも仕方ないか。


しかし、こいつ本当にどうしようか。


歳は…まだ産まれてそんなに経ってなさそうだな。下手すると一年経ってないかもしれん。あと性別は…雄か。


にしても、テレパシーが使えないとは奇妙なものだ。テレパシーなんて、使えて当然だと思うんだが…まさか、魔力が無いのか? となると、魔法も使えない?


魔力を持たないドラゴンか…。これは育児放棄という線も出てくるな。まぁ、魔力を持たないドラゴンなんて捨てられてしまうか…。悲しい話だが、それが現実だろうな。

いやでも、流石に魔力を持たないドラゴンなんて…。


「ガァ! ガァ!」


クソッ…こっちが考え事してるっていうのに…。


【何だ?】


【お腹、空いた】


こいつ…何か図々しくないか? 住処にまで入れてやってるってのに、今度は食料かよ…。


「ク、クゥゥン…」


あぁもう! そんな目で見るな! 調子が狂う!


【分かった! 食い物取ってきてやるから、そこで待ってろ!】


俺はイライラしながら、住処から出ようとする。

だがそこで、子ドラゴンが俺の尻尾を掴んだ。


【何だよ! 尻尾掴むな!】


【一匹…嫌…】


………こいつ正気か。


【あのなぁ。飯が欲しいんだろ? だったらそこで待ってろ。すぐ戻る】


【嫌…嫌…】


あぁ〜イライラする…。これだと俺ずっとここから出れねぇじゃねぇか…。


【あぁもう分かった! じゃあ一緒に行こう! それで良いだろ!?】


俺がそう伝えるや否や、子ドラゴンの表情は一気に明るくなりはしゃぎ出した。


クソ…だから子供は嫌いなんだ…。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



俺は死んだ鹿一匹を住処に投げ入れ、息を切らした。

そんな俺を気にせず、あの子ドラゴンは死んだ鹿に飛びつく。


クソ…こいつが一緒にいるから魔法も使えずらかったし、挙げ句の果てにはこいつ空が飛べないと来てる。

確かにこの歳だとまだ飛べなくても不思議じゃないが、おかげで俺は普段の狩りをする事ができなかった。


俺は普段、鱗付きの風になって一気に動物を仕留める方法を取っている。

だが今回は子ドラゴンがいる為、鱗付きの風になる訳にもいかず、さらにしがみ付く子ドラゴンが何処かに飛んでいかない様に、速度を落として飛ぶ事しかできなかった。


その所為で、普段はもっと捕まえられた筈なのに捕まえられたのは鹿一匹だけと来た。

これ、子ドラゴンは腹が足りるだろうが、俺の腹は満たされるのか?


俺が行く末に不安を覚えているというのに、あいつは夢中に鹿を食っている。

これでこいつが大食感とかだったらどうしようかと思ったが、そろそろ食べるペースも落ち着いてきた。どうやら食欲は平均的らしい。助かった。


「ふあ〜…」


満腹になった子ドラゴンが、大きな欠伸をしてきた。そろそろ寝るのか。これで少しは静かになる。

俺は安堵して、残りの鹿の肉を食い始める。


この鹿はこの辺りだと一番肉が柔らかいし、捕まえやすいと良いところ尽くしの獲物だ。

今回の鹿も、いつも通り肉が柔らかく血の味が舌に広がる。今回は苦労したが、やはりこの美味さは変わらないな。


……にしても、何か尻尾に当たってる様な…。


俺は鹿を食べるのを一時中断し、尻尾の方を見る。

するとなんと、あの子ドラゴンが俺の尻尾を枕がわりにして眠っていた。


こ、こいつ…次々と面倒なことを…。


尻尾を動かしたいところだが、あいつぐっすり眠っている。

何だか起こすと罪悪感か湧くというか…そもそも泣き出したりしたらもっと面倒だ。


クソ…しばらくはこのままにするしか無いか…。


「グ…グアァ……」


何か寝言を言いながら、俺の尻尾に顔を擦り付けている。ちょっとこそばい。

しかし寝言か。何を言っているんだ? どれ、少し聴いてやるか。子供だから、読み取るのは簡単だろう。


どれどれ…?


【……パパ…大好き…】


…………

………

……


パ、パパぁ!?

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