第11話「APPROPRIATE PENALTY」
今日は葬式を開こう。うんそうだ。そうしよう。
二つの意味でテストが終わった僕は、学校で頭が真っ白になっていた。
もう駄目だ。テスト死んだ。僕死んだ。もう駄目。生きていける自信無い。
「アピアス…お前落ち込みすぎ」
クリントが呆れた様子で僕にそう言ってきた。
「で、でも…まさかあそこまで出来ないなんて…もうほとんどテスト用紙真っ白だったし…」
「3週間も入院してたんだからしゃあねぇって。あ、そうだ。今日帰って一緒にゲームしねぇ? たまにはバーンっと息抜きしなくちゃダメだろ?」
「う、うん…ありがと…」
僕は少し涙目になりながら頷いた。
そうだ。結果はどうであれ、今日でテストは終わりなのだ。たまにはバーンっと人間らしい息抜きも必要だ……と思う。
「うし! じゃあ帰りのホームルーム終わったらマッハで帰るぞ!」
「お、おー!」
僕は無理矢理にでもそう言って元気を出した。
もうそうでもしないと、僕は生きていける自信がありません。
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若者が賑わう小さなカフェで、ブロンドのロングヘアーの女性が辺りを見渡していた。
スピーカーからは今流行りの音楽が流れており、女性はそのスピーカーを見つめ続ける。
「これからは…私達の時代…」
女性はそう呟いたかと思うと突然立ち上がった。
そしてスピーカーの方を見ると、なんと女性は一瞬で姿を消す。
それを偶然見ていた人々は、突然の人間の消失に騒めき始める。
だが、その騒めきもすぐに別のものへと変わる。
いきなりスピーカーから大音量の音が流れたと思うと、カフェの中のものが次々と壊れ始めた。
カフェは突然、地獄へと変わったのだった。
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「よし! 行ける! よし!」
僕はクリントの家にお邪魔して、クリントと一緒に据え置きの格闘ゲームをやって遊んでいた。
今、お互いにライフは同じくらいでかなりの接戦だ。とはいえ、今は僕の方が優勢なんだけどね。
「へっへ〜ん。これで僕の勝ちだね」
「ほぉ〜…そう油断していいのかなぁ?」
「へ?」
僕が調子乗って攻撃してると、クリントはカウンター攻撃をしてきた。
「あっ!」
カウンター攻撃をされてから、流れは一気に僕からクリントに変わった。
クリントは続け様にコンボを放ち、どんどん僕のキャラのライフを減らしていく。
そして…
「K.O!」
テレビ画面から、敗北のメッセージが流れた。
負けた。僕の完敗だ。
「油断大敵って奴だよ。残念だったな〜」
「うぅ…まさかそこでカウンターが来るなんて…」
悔しがる僕を見て、クリントは得意げに笑う。本当は悔しいのに、そんな楽しそうなクリントを見るとこっちも楽しくなってしまう。
でも、そんな楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもので、時間はもう6時を指していた。
「あ、もうこんな時間。クリント、ありがとうね」
「おう! じゃあまた明日な!」
僕はそう言ってクリントに別れを告げ、そのままクリントの家を出た。
すると外で、ある人物が僕を待っていた。
「アピアス君」
「ん?おじさん?」
そう、マンハッタンおじさんだ。
おじさんは辺りをキョロキョロと見渡し始めた。この反応で、僕は俺に関する話なんだと理解する。
「昨日の件なんだが」
「バルタスの事ですか?」
僕がそう言うと、おじさんは何も言わずに頷いた。
そして、意外な言葉を言い放つ。
「そのキミが車内で捉えてたバルタスだが…警察が来てた頃には、塵になってたらしい」
「え?」
僕はおじさんの報告に驚愕した。
塵になった…と言うことはあのバルタスも…
「偽物…だったんですか?」
「あぁ、だろうな。きっと本物は、もう既にあの場にいなかったんだろう」
クソッ、まさかアレも偽物だったなんて。見事に騙されてしまった。
「本物のバルタスはまだ見つかってないが、恐らくキミが言ってた『ネオプロローグ』と接触した可能性が高いだろうね。そうだとしたら、かなり厄介だ。奴は、幾つかのドラゴンスレイヤーの武器を盗んでいったらしいからな」
それは確かに、かなり危険な状況だ。
バルタスの「自身の複製を作る魔法」は、自分が持っているものもコピーできる。つまり、武器を無限に製造する事ができるという訳だ。
魔法が使えるというだけでも厄介なのに、そんな兵器まで使われたら、下手すればドラゴンより脅威かもしれない。
「あと…2時間ほど前に事件があった。メイダーツ市のカフェで、次々と物が破壊されたらしい。死傷者も何名も出てる」
「それも…ソーサラーですか?」
「恐らく。監視カメラには、姿を消したり現れたりしている女の姿が確認されている。きっとこの女がソーサラーだ」
姿を消したり現れたりする…確かに、間違いなくその女がソーサラーだな。
問題はその魔法だけど。
「魔法はどんなものか分かりますか?」
「さぁね。ただ分かってる事は…物が壊される直前、スピーカーの音量がいきなり大きくなったらしい」
「音量が…」
その女の魔法の影響で、スピーカーが壊れたのか?それともまた別の何か…。
「……こうやって私は、キミに情報を渡しているが、勘違いはしないで欲しい」
突然、おじさんが話を変えてそんな事を言ってきた。
僕は少し驚いて考えるのをやめる。
「キミには傷ついて欲しくない。だから、できればキミには戦って欲しくない。でも、それは無理な相談なんだろ?」
「えぇ、僕にも僕の都合がありますから」
「だよな。ジオもそんな奴だ。キミを止めるのは無理だって事は、最初っから分かってるよ。だから私は、キミに情報を渡している。出来る限り、キミが対策を取れる様に」
「ありがとうございます。おかげで助かってます」
「礼は良い。だが、これだけは約束してくれ」
おじさんの真剣な目に、僕は背筋をピンとさせた。
そしておじさんは、僕に言い聞かせる様にゆっくりと口を開く。
「決して、無茶をするな。キミには、大切な家族があるんだからな」
「……はい」
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メイダーツ駅付近
夜中のメイダーツ市は、全く眠りそうになかった。
高層ビルのモニターからは何らかのバラエティー番組や、化粧品のCMなどが延々と流されている。
そんな中、一人のブロンドのロングヘアーの女が歩く。
「……私は…『ネオプロローグ』に認めてもらう…」
女がそう呟くと、彼女の姿が消えた。
そして次の瞬間、一つのモニターの音がいきなり大音量で鳴り響いた。
それと同時に、ビルのガラスなどがいきなり割れ始める。
逃げ惑う人々の中、その女は再び姿を現し一人で笑みを浮かべていた。
「ふふふ…うふふふふ…」
女は一人不気味な笑い声をあげる。
その笑い声は、遠くから聞いても気持ち悪いことこの上ない。
この女は、こうやってしばらく街を破壊しようとしていたのだろう。
だが、この女は運が悪かった。
何故なら…今この場に「俺」がいたからだ。
俺は女の前に着地する。
突然現れた黒いドラゴンに、女は少し驚いた表情を見せた。
悪ぃな。今日おじさんから話は聴いてたんだ。丁度お母さんはお父さんの見舞いでいなかったから、一足早くメイダーツ市に行って様子を見ていたって訳だったんだが、まさかこんなに簡単に見つけるとはな。
「あなたは…人助けをする変なドラゴン…」
【まぁな。俺の事が分かるなら、俺がしようとしてる事も分かるよな?】
俺はそう女にテレパシーを送る。
女はすぐに俺の考えを理解したのか、明らかに敵意を向けた目をし始める。
「私の邪魔をするの…? そんなの…絶対に許さない…」
そう言うと、女は消えた。
来た。これが奴の魔法だ。確かその後起きるのは…
と思ったらとあるビルのモニターの音が突然大音量で鳴り響いた。
俺はその時警戒したが、大音量で音が鳴った瞬間に俺の頬に激痛が走る。
いってぇ!!! クソッ! 何だよこの魔法!
俺が痛みに苦しんでると、女が笑みを浮かべて立っていた。
こいつ…一体何処から出て来やがった…。本当に何なんだよこいつの魔法は…。
「その程度? ドラゴンも大したこと無さそうね…?」
てめぇ…人間如きが偉そうに…。
俺はイライラし、女のすぐ目の前にテレポートをして尻尾で叩き飛ばそうした。
あれ?
でも、それは失敗に終わった。
何故なら、また女が姿を消していたからだ。
そしてそれと同時に、モニターの音が大音量になり、俺の腹に激痛が走り俺はそのまま吹き飛ばされた。
吹き飛ばされた俺に巻き込まれた車は、その強い衝撃で無意味にも防犯用アラームを鳴らしまくる。
いてて…まるで殴られたみてぇだ…。案の定あの女もさっきまで俺のいたところに立ってやがる…。
ん? 待てよ? この感じの魔法…前にも体験した記憶が…。
俺が何か閃きそうな時、吹き飛ばされた俺に巻き込まれた車の防犯用アラームに気が付いた。
あ、あれ何かヤバそう。
そう思ったも束の間、防犯用アラームの音がより一層うるさくなり、俺の頬に再び激痛が走り吹き飛んだ。
あぁもう! だから嫌な予感したんだよ! ってかまたあの女移動してるし!
ん? あそこ…俺がさっきまでいた場所じゃ…っていうか、ついさっきもそうだった気が…。
……まさか!
【お前の魔法…「自身を音に変換する魔法」か!】
「へぇ…よく分かったじゃない」
やっぱりそうか!
こいつ、何時ぞやのトルネードと同じ肉体変化タイプの魔法を使ってたんだな! いや、肉体変化タイプとか今さっき付けた適当なアレなんだけど。
つまり、あいつは自分自身が音になる事で「音を放つ媒体」を出入り口にしてたんだ。
あの激痛は、あの女のパンチかキックか…まぁ見えないのでよく分からんが、そういう体術だ。
あいつは媒体を通して、音から普段の肉体に戻って俺に攻撃してたんだ。ドラゴンの俺がそれを目視できない上に無駄に威力が高いのは、奴が音速で迫ってくるから。
あの大音量はきっと、あいつが媒体から出た合図ってところか。
「でもドラゴンさん…それが分かったところで、どうするの…?」
魔法が分かってちょっと喜んでいた俺だったが、すぐに我に帰った。
確かにそうだ。まだ辺りを見ると、音を放つ媒体は沢山ある。ビルのモニターに、俺らの戦いの所為で色んな場所で鳴り響く車の防犯用アラーム。これら全てが、この女の武器になるのだ。
俺が少し焦り始めると、また女の姿が消えた。
そしてそれと同時に、俺の目の先にあった車の防犯用アラームの音が途切れ途切れで大きくなった。
ここで防御の姿勢を取ろうとするも、音の速さで迫り来るもの相手にそんなものは間に合わなかった。
今までの大きな一撃とは違い、ドンッドンッと何段階も続けて衝撃が走る。
その衝撃は、まるで俺の体を貫いていく様で、多分俺の後ろでは、徐々にあの女の体が形成されている筈だ。
こいつ…途切れ途切れで飛ばす事も出来んのかよ…。これはこれで結構体に来るぞ…。
ようやくアラームの音が元に戻り、俺は背後にいるであろう女に攻撃する為に振り返ろうとする。
だがその前に背後のアラームが大音量で鳴り、俺は体を遠くへ吹き飛ばされた。
「あらあら…ドラゴンが、こんなひ弱な女性に負けるなんて…。ドラゴンも落ちぶれたものね…」
女が勝ち誇った様にそう言っているのが聞こえる。
めちゃくちゃ腹立つが、一度冷静になって分かった。
奴の魔法が分かった事で生まれる弱点。その弱点に賭けるしかねぇ!
俺はすぐに立ち上がり、手始めに近くにあったアラームがうるさい車を叩き潰した。
もちろんアラームごとぶっ壊され、その車はただの静かな鉄くずになった。車の持ち主には悪いが、まぁこの戦場にある時点で壊れた様なもんだ。もう持ち主も諦めてるだろう。
「グオオォォォォ!!!」
俺は咆哮を上げ、口から炎を吐いて周りの車ごと爆発させたり、圧縮弾を飛ばして車を粉々に破壊したりした。
それを、例の女は怪訝な表情で見つめる。
「突然どうしたの…? やっぱり、ケダモノはケダモノってこと…?」
うるせぇバーカ。訳分かんないならそのままボーッとしてろ。
俺はビルのモニターも全て圧縮弾で破壊した。
そして俺はそのまま、その女に飛びかかる。
「!」
女は突然姿を消した。それと同時に、俺の左にいた車のアラームが大音量になる。
もちろん俺の左脇腹にも衝撃が走り、俺はそのまま吹っ飛んだ。
だが、これでいい。もう無事な車はあの一台だけだ。
「グアァァァァ!!!」
俺はすぐに圧縮弾を女に向けて飛ばした。
女はそれを走って避け、後ろにあったアラームを鳴らし続ける唯一の車に当たる。
車は爆発炎上し、アラームの音も消え去った。
「! しまった!」
女はようやく事の重大さに気が付いた。
そう、音を放つ媒体が無くなったのだ。
「くっ…! でも、これだけで終わりじゃない…!」
そう言って女は、ポケットからスティック型の小さな機械を取り出した。女はその機械を作動させると、そこから何処かのグループの音楽が流れる。
オーディオプレイヤーか。
まぁでも、それぐらい持ってると思ったぜ。
女はオーディオプレイヤーを俺に向けて投げ姿を消した。姿を消したと言っても、出てくる場所は知っている。俺は女がオーディオプレイヤーを出した瞬間から準備はしていた。
オーディオプレイヤーの音楽がいきなり大音量となった。
それと同時に、俺の腹に強い衝撃が……走らなかった。
「なっ…!」
女は、何もない空間を殴っていた。
そしてそれに女が気付いた瞬間に、俺はその女を尻尾で叩き飛ばした。
叩き飛ばした方角にテレポートし、俺はその女をキャッチする。手加減はしたから死んではいないが、人間にしては強い衝撃だった筈だ。女は完全に気を失っていた。
悪ぃな。カウンターって奴だよ。
今頃「音楽を聴く媒体」を持っていない人間なんて滅多にいない。
だから俺は、オーディオプレイヤーの可能性も考えていた。もし奴がオーディオプレイヤーなどを持っていなくても、周りに音が無ければ奴は魔法を使う事ができず、何方にしても積んだ筈だ。
そして奴がオーディオプレイヤーを持っていれば、話は簡単。
音が無い状況を作ってやれば、奴の出入り口はオーディオプレイヤーだけになる。そうなれば、動きを読むのは簡単だ。
だから俺は、オーディオプレイヤーから奴が出てくるタイミングを見計らって背後にテレポートしたのだ。
まぁタイミングを間違えたらヤバかったけど、どっちにしても奴も出入り口が一つになる訳だから、タイミング間違えても何とかなっただろう。オーディオプレイヤー壊せば、それこそ奴は何もできなくなる訳だしな。
にしても、こいつどうしようかな。
音を放つ媒体があれば、こいつすぐ逃げるよな?
音を放つ媒体なら何でもいい筈だから、パトカーのサイレンとか奴にとっては最高の逃亡手段だろうし。
う〜む…
バシュッ!
「グオォ!?」
痛ぇ!!!
俺は突然の痛みに、抱いていた女を落とした。
激痛が走った右手を見ると、何かに撃たれたかの様に抉れていた。
この痕…どっかで見たぞ? そうだ! 最初のソーサラーの時!
『キミを撃った人物だが…多分そいつはスパイクギフトと呼ばれる殺し屋だ』
俺の脳裏に、昨日のおじさんの言葉が過った。
スパイクギフト…また出やがったのか!
しかしヤバい。以前奴が出た時、奴はソーサラーを一発で仕留めた。
多分、奴の狙いは最初っからソーサラーで、俺は所謂とばっちりなんだろう。
って事は今回も…
バシュッ!
銃声が聞こえた気がした。空耳かもしれないが、俺はそう考える前に女の前にテレポートし、女ごとテレポートした。
とりあえず安全そうな場所として、女を俺の住処の洞窟に置いておく。
本当は僕以外の人間を招待したくはねぇが、今回は特別だぞ。有り難く思いやがれ。
俺は女を置くと、すぐにまたメイダーツ市に戻る。
確か、弾が飛んできたのはあっちの方面の筈だ。
スパイクギフト…放って置いたらヤバい気がする。
俺は目に見える場所に次々とテレポートしていき、スパイクギフトがいるであろう場所へ近づいていく。
見えた。高層ビルの屋上で、一人の男がいる。
バシュッ!
うお危ねっ! 俺が近づいてきた事に気付いて撃ってきやがった! でも、こっちもそんな事で諦める訳にはいかねぇんだよ!
俺はテレポートを続け、遂にスパイクギフトの背後にテレポートした。
それに気付いたのか、スパイクギフトはゆっくりと振り返る。
スパイクギフトは全身真っ黒の衣服を着ており、顔には真ん中に縦にスパイクの付いたこれまた黒いマスクをしている。
何だか見るからに悪そうな見た目だ。
【お前がスパイクギフトか!】
「まぁな」
スパイクギフトは特に動揺する様子を見せず、俺にそう返答する。
っていうか、俺に驚かない人間多すぎね? 何か悲しくなってくるぞおい。
【何故ソーサラーを狙う! 目的は何だ!】
「俺は依頼人に頼まれた仕事をするだけだ。そして…俺の仕事を邪魔する者は、容赦しない」
そう言うと、スパイクギフトは小型銃を取り出して俺に撃ってきた。
俺はそれを右にテレポートして避ける。
しかし危なかった。銃を取り出す瞬間を全く反応できなかった。こいつ、かなりの凄腕だ。
「あの女は俺の獲物だ。さっさとあの女を寄越せ」
【断る! どうせ殺すつもりだろ!】
「当然だ。奴の心臓を撃ち抜く。それが俺の仕事だからな」
俺は話しながら、こいつの隙を伺う。
だが、こいつ全く隙がねぇ。
【仕事仕事って…仕事なら命奪っていいのかよ! んなもんふざけてる!】
「命を奪うのが仕事なんだよ。それぐらい分かれ。それに、ソーサラーの命なんて誰が気にする?」
【てめぇ…!】
「何故お前が怒る? ドラゴンと話すのは初めてだが、よく分からん生き物だな」
【分かんねぇのはあんただよ!!! あんたみたいな殺し屋…放って置く訳にはいかない!!!】
もう我慢できねぇ。
俺は奴の背後にテレポートした。
だが奴はそれを予測していたのか、狙撃銃を肩に担いだ。
狙撃銃の銃口が、見事に俺の左目を狙う。
「黙ってろドラゴン」
奴はそう言って引き金を引いた。
俺は何とかテレポートして、その場から逃げ出した。
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俺は住処の洞窟に行き、肩で息をしていた。
危なかった。テレポートが一瞬でも遅れていれば、左目が潰されていた。
少し目に掠ってはいるが、何とか失明は免れただけ良かっただろう。
スパイクギフト…思っていたよりヤバい奴だ。
あ、それと…この女どうしようか。
【バニッシュさん?】
うわお!!!
俺はびっくりしてそのテレパシーが聞こえた方を見る。
そこにいたのは宙に浮く目玉…フェアリーの視覚だった。
【な、何だよフェアリーかよ…。驚かすなよ…】
【別に驚かしてはいないんですけど…大丈夫ですか? 怪我してますけど…あと、その人間は…】
【まぁ、色々あってな…】
俺はフェアリーと話をする中、一つの案を思いついた。
そうだ。フェアリーがこの前キューピッドにしたみたいに、奴の聴覚を封じてやればこいつは魔法を使えないんじゃないか?
しかし、聴覚を封じるのは流石に酷だよな。
やっぱり音が無い場所が必要だ。というか、音を放つ媒体が無い場所…。
待てよ? あるかもしれないぞ? 音を封じる場所…。
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「なぁ…これどういう事だ?」
一人のドラゴンスレイヤーが、もう一人の相棒の方に聞いてきた。
「さぁ? 何だかマンハッタンさんがこうしろってよ」
「マンハッタンさんって、前の第一防衛隊隊長の人だよな? その人が何で…」
「だから知らねぇよ」
二人のドラゴンスレイヤーが話している先にあったのは、ドラゴン用の巨大なガラスケースだった。
その中に、あのソーサラーの女が椅子に縛り付けられていた。
このガラスは防音性で、外部からの音は一切遮断される。ドラゴンの無意味な咆哮を聞かない為の作りだ。
そしてこの女にとって、この上ない最高の牢獄でもある。
女はこれから、音の無い広い空間で孤独に耐えるしかないのだ。
それが、彼女に課せられた罰だった。




