第10話「DON'T MATTER」
遂に感想貰って有頂天なかり酢です。でも投稿は遅れました。許してください。別に感想送ると投稿遅れる訳じゃ無いので。はい。本当ですよ?本当ですって。本当なんだってば!
「総長!何か言ってください! 何故、出撃命令が出せないのですか!」
ジオは目の前の総長の机を力強く叩いた。
しかし、総長は溜め息を吐いてかけていたメガネをかけ直す。
「政府の命令だ。これは、ドラゴンスレイヤーの仕事ではない」
「……私は…納得が行きません!」
そう言いジオは、扉を勢いよく開けて総長室から出て行った。
現在起きているクロニル市の謎の襲撃事件。
周りのものが、突然潰され始める。こんなの、人間業ではない。ドラゴンの魔法なのは明らかな筈だ。
ついさっき、あの黒いドラゴンが現場に到着したらしい。あまり気が乗らないが、今回はこのドラゴンに全てを一任するしかないのかもしれない。
一体何故、政府はこの大事態にドラゴンスレイヤーを出撃させないのだろうか。
ジオがイラついていると、突然一人の隊員がレーザー銃を持ってオフィスに入ってきた。
「ん? おいバルタス、まだ出撃命令は出てないぞ。気持ちは分かるが、早く武器を仕舞ってこい」
それに気付いたジオは、その隊員…バルタス・プラナードにそう告げた。
だが、バルタスの答えは意外なものだった。
「お前に俺の何が分かる」
バルタスは突然、ジオに向かってレーザー銃を向けた。
「は?」
「退職届だ」
なんとバルタスは、レーザー銃の引き金を引いたのだ。
嫌な予感がしたジオはすぐに体を逸らしたが、それでも右脇腹に掠ってしまう。
「うっ!」
ジオはその場で倒れ、バルタスは気にも止めずレーザーを所構わず撃ち続けた。
「止まれ!」
だがここはドラゴンスレイヤーの基地。
すぐに武装集団が現れ、バルタスに銃を向けた。
バルタスは一瞬止まるが、すぐに笑みを浮かべて今度はその武装集団にレーザーを放った。
予想外の攻撃に一人の武装兵は倒され、武装集団はバルタスに狙いを定める。
「撃て!!!」
その武装集団の隊長だろうか。彼の命令と共にバルタスに向かってレーザーが放たれた。
その無数のレーザーはバルタスに命中し、彼はその場で息絶えた。
ホッとしたのも束の間、一人の職員が窓を見た。
そこには、信じられないものが写っていた。
「バルタスが逃げてる!」
その職員の一言に、全員は驚愕して窓を見る。
確かにそこには、今この場で死んだ筈のバルタスが、無傷で自分の車に乗って逃げていく姿があったのだった。
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僕は今、病院の廊下にある椅子に座っていた。
いや別にまた入院をした訳じゃない。あの弾痕も、まだ跡は残っているが入院する程じゃない。
入院したのは、僕のお父さんだった。
どうやら職場で突然仲間に撃たれたらしい。命に別状は無いが、意識は無い。
一体どうしてこんな事件が起きたのだろう。
「ふぅ…」
さっきまでお父さんの同僚と話をしていたマンハッタンおじさんが、お父さんの入院している部屋から出てきた。僕はすぐに、おじさんに駆け寄った。
「何か分かりました?」
「あぁ、犯人はバルタス・プラナード。26歳のドラゴンスレイヤーだ」
「どうして、お父さんを?」
「ジオはたまたまバルタスの近くにいただけだ。バルタスは、ドラゴンスレイヤーの基地自体を破壊しようとしたらしい。そして、説明不能な奇妙な事が一つ」
「奇妙な事?」
「……自分を囮に使って逃亡したらしい」
「へ?」
自分を囮? 正直言って意味が分からない。
……いや、まさか…
「信じられない話だが、分身したらしい。囮はバルタスのコピーと考えるのが自然だろう。実際、その囮のバルタスは撃たれた後に塵になった」
「やっぱり…そうですか…」
なるほど。そのバルタスって人間は「自身の複製を作る魔法」を持っていたのか。それで自分を囮に使うなんて荒技が出来るんだな。
「昨日のクロニル市の事件…まさかアレも…」
「えぇ、人間が犯人でした。何者かに撃たれちゃいましたけど」
「そうか…。噂には聞いていたが…」
「噂?」
噂と聞いて、僕はあまり良い気がしない。
正直、もう噂には飽き飽きだ。
「あぁ、人間の中には魔法を使う存在が混じっているという噂があるんだ。確か…ソーサラーと言ってたな」
ソーサラー…。
昨日のサラリーマンも、その名前を口にしていた。やはり、あれは魔法を使う人間の総称らしい。
「にしても…何でそのソーサラーが、同じ日に二人も犯罪に走ったんだ? 少なくともバルタスは、今まで真面目に業務を勤めていたらしいのに…」
「多分…『ネオプロローグ』の声明の所為だと思います」
「ネオプロローグ?」
僕は、首を傾げるおじさんを見て頷いた。
「昨日、テレパシーが聞こえたんです。誰のかは分かりませんが、自分達はネオプロローグだって言ってました。政府が攻撃してきたから、こちらもやり返すとか…そんな感じの内容だったと思います」
「そうか…。魔法を使える者にしか聞こえない様にテレパシーを飛ばしたのか…。そして魔法が使える人間…即ちソーサラーだけそれを捉える事ができた…。アピアス君も聞こえたのは、キミがドラゴンという魔法を使える存在だからか」
「えぇ。だから、ソーサラーは行動を開始した。多分…これからも」
そうだ。これからはドラゴンだけでなく、人間さえも魔法を使ってくる。
人間が敵になれば、僕は一体どうすればいいのだろう。
「そう言えば、キミを撃った人物だが…多分そいつはスパイクギフトと呼ばれる殺し屋だ」
「スパイクギフト?」
聞き慣れない名に、僕は訝しげにおじさんの方を向く。
「奴の特徴は、側面に棘の付いた専用の弾丸を使用する事だ。それを回転させて放つ為、その弾痕は他のものよりも抉られた形になる。貫通力も高く、ドラゴンの鱗も貫くという話だ」
「えぇ、見事に貫通しました。まだ跡も残ってますし。他に特徴は?」
僕の質問に、おじさんは肩をすくめた。
「性別は男性…それしか分かってない。犯行を行う際はマスクを被っているからね」
「そう…ですか…」
僕は、そのあまりに少な過ぎる情報に落胆した。
ソーサラーにスパイクギフト。
これは、思っていたより厄介そうな話だ。
「それより、もう帰らなくていいのかい?明日はテストなんだろ?」
「……あぁ! そうだった!!!」
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翌日 午後1時28分
アベンズ市
このアベンズ市には無いものなど無い。
そう言われるほどアベンズ市は栄えた街だった。
一旦外へ出ると、遊びに来た若者や営業中のサラリーマンで溢れかえる。
そんな栄えた街で一人のスーツ姿の男が、一つのビルの前で黒い高級車の後部座席に乗った。
男は窓に映るその一つの巨大なビルを眺める。
そのビルには、大きく「アンリミテッドコープ」と書かれていた。
「それでは発進します」
予め目的地は伝え終わっていたのか、運転手はそのまま車を発進させた。
後部座席の男は、窓からの景色を楽しんだ。
しかし、男はすぐに妙な事に気付く。
車が通っている道が、目的地とは全く違うのだ。
「……止めろ」
男は左腕のデジタル時計を弄りながら、運転手にそう言った。
運転手はあろう事が路地裏に入り、そのままゆっくりと無言で車を止める。
「誰の差し金だ?ライバル会社か?それとも…」
男はデジタル時計をタイマーモードに変更する。
「政府か?」
男がそう言うと、突然運転手は男にレーザー銃を向け始めた。
それと同時に、車を囲むように二人の男がレーザー銃をガラス越しに構えて現れる。
「……なるほど。まさか、僕を捕まえる気かい?」
「あぁ、ダン・ノーマック! お前がソーサラーだという事は分かっている!大人しく着いてきてもらうぞ!」
「それは…無理だ」
男…ダン・ノーマックはタイマーを20秒にセットしながらそう言った直後、まず運転手の腕を掴み無理矢理に腕を折った。
それを見た外の残りの二人は車のガラスを銃で破壊し、車のドアを開けようとする。
「死ね」
ダンは運転手の首の骨を折り、今度はドアを外側から開けてきた男に蹴りを入れる。
蹴りを入れられた男からダンはすぐにレーザー銃を奪い取り、その男の額を撃ち抜いた。
だが、残っていたもう一人がダンに狙いを定める。
ダンはすぐに対応しようとするが、それも虚しく彼は心臓を撃たれてしまった。
「……ふぅ…」
心臓を撃たれ死亡したダンを見て、男は安堵の息を漏らす。
「抵抗する方が悪いんだよ。全く」
男はそう言いながら仲間の死体には目もくれず立ち去ろうとした。
だがその時だ。ダンの時計のタイマーが0になったのは。
ピピピ…ピピピ…
「ん?」
タイマーの音に、男はふと振り返る。
するとなんと、そこには先ほどまでいた筈のダンの死体が無くなっていた。
「なっ…! 一体どういう…」
男はすぐにダンの死体があった場所へ駆け寄った。
その瞬間、男は開いている車のドアから左腕を撃たれる。
「ぐあぁ!」
男が激痛で倒れると、車からなんと死んだ筈のダンが運転手の銃を持って出てきた。
撃った筈の心臓部分にも、血は一滴も付いていない。
「ば、馬鹿な…! お前は…死んだ筈…!」
「あぁそうだな。でも、僕はソーサラーだ。それぐらい、予測しとかないと」
ダンは激痛で倒れる男の上に乗り、銃を心臓の方へ突きつける。
「それにしても…痛かったなぁ。心臓撃たれるのは。どれくらいの痛さか…キミ知ってる?」
「や、やめ…!」
「キミも体験するといい」
ダンは、そのまま引き金を引いた。
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「クリント…僕もう…駄目だ…」
「知ってた」
学校の机に寝そべって落ち込む僕に、クリントは冷たくそう言った。
「まぁ…仕方ねぇよ。勉強時間も少なかった訳だし」
「あぁ〜…でもぉ…でもぉ……」
僕は頭を抱えた。
テストが思ったより上手く行かなかったのだ。
自分でもびっくりするほど空欄だらけになり、何とかして空欄を埋めようとしたのだが、そもそもこの空欄に分からないなりに何を書くべきなのかすら分からず、自己最低得点を出すのは明らかだ。
しかもそれが、今日やった全教科に起きたのだからもう今すぐ死んでしまいたい気分だ。
大体、最近アルゴラが仕事してくれたおかげでドラゴンが出てこないから、テスト勉強はある程度はできると思っていたのに、今度はソーサラーなんて訳の分からない連中が現れた。
父さんは撃たれて意識不明だし、僕は僕で殺し屋に撃たれるし、もう散々だ。
おかげでテスト勉強中もテスト中も、ソーサラーで頭の中が一杯だった。
畜生ソーサラーめ…。人間だからと言って調子乗ってんじゃねぇぞ…。
てめぇら何か、ドラゴンの俺にかかれば一瞬で捻り潰す事もできんだぞ?
まず逃げられない様に手足千切って、ちまちまと肉を食い千切って極限まで苦痛を味わらせて殺す事だって…
「何ボソボソ言ってんだお前?」
「ふぇ!? な、なななな何も!?」
「……ホントお前、最近自分の世界に入るよな? 大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫! いやぁほら! もう最近忙しくて! 自分の世界に入っとかないとやってけないよ〜。ハハハ…」
大体ソーサラーの所為だけどな!
「そ、そっか…。確かにお前の父さん、今入院中なんだよな。まぁ、大変だと思うけど頑張れよ」
「う、うん! ハハハ…」
「……明日もテストあるしな」
「あぁ〜…そうだった…」
今すぐ学校壊してぇ。
「ほら、もう帰るぞ」
「は〜い…」
僕はクリントに誘われて教室を出た。
今日と明日はテストなので、帰る時間が今までよりも早いのだ。
早く帰ってテスト勉強しろって事なんだろうな。僕もそうしたいよ。ソーサラーの野郎共やドラゴンが襲ってこなければ。
その時、僕は廊下の掲示板を見た。
掲示板はモニター式で、緊急ニュースが入るとそれに映る仕組みになっている。
そしてその掲示板には、僕が最も恐れていた事が書いてあった。
《アベンズ市に銃撃事件発生。全校生徒はアベンズ市付近には近づかない様に》
………
いや、これは普通の銃撃事件だ。ソーサラーの筈がない。
でもドラゴンやソーサラーの起こしたものじゃないにしても事件を見過ごす訳には…。
いやでも僕今テストがあるし…いやでも……。
…………
………
……
畜生。
「あぁッ! あ〜!」
僕は迫真の演技で自分のお腹を抑える。
前を歩いていたクリントが怪訝そうに僕を見たが、演技だってバレてない筈だ。うん。そう思う。
「お、お腹痛い! ごめんクリント! さっき帰ってて!」
僕はそう言ってすぐに廊下を走って去っていった。
途中先生に怒られた気がするけど、僕はそんな事気にせず人気がいないところまで走っていった。
「……忘れ物したならそう言えばいいのに…」
一人残されたクリントの一言は、僕の耳には届かなかった。
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殺す。絶対殺す。
俺はそう誓いながら、高層ビルが立ち並ぶアベンズ市の上空を飛んでいた。
ここはクリントとリーシャと一緒に遊びに行った事がよくある。
ゲームセンターや映画館などが沢山あって、一日中遊んでいられる場所だ。
でも、明日俺にはテストがある。本当はこんな所に行ってないでテスト勉強するべきなのだが…。
あ、レーザー見えた。あそこか。
見た所、犯人は複数人で犯行を行なっている様だ。揃いも揃ってみんなお揃いの黒い服を着て、さらに揃いも揃ってお揃いの黒いヘルメットを被って顔を隠してやがる。
あそこまでお揃いにするって、無駄に拘りがあるんだなこいつら。
警察がやって来た直後らしく、犯人達は銃を向ける警官達の前で止まっている。
なんだ。もう終わりそうだな。俺が出る幕も無さそうだ。
そう俺が思っていた直後、犯人達は一斉に警官達に向かってレーザー銃を撃ち始めた。
それを合図に、警官達もレーザー銃を撃ち始める。
大都会で突然、銃撃戦が始まった。マズいな。これは早く止めねぇとヤバい事になるぞ。
仕方ない。これは俺が介入してすぐに済ませてやろう。
「グオオォォォォォォォォォ!!!」
俺は腹から精一杯の咆哮をあげた。
狙い通り、犯人達と警官達は銃撃戦をやめて俺の方に向く。
俺はそれを確認すると、すぐに犯人達の前にテレポートした。
「グルルル…」
【よぉ、生憎今の俺は機嫌が悪いんだ。さっさと降参しろ。人間がドラゴンに勝てると思ってるのか?】
俺はそう犯人達全員にテレパシーを送り、同時に奴等に威嚇をする。
これで大抵の犯罪者共は無様に泣き叫びながら逃げる筈だ。そこで俺がまた通せんぼして逃げ道を塞ぐ。そんなこんなやって、最終的には警官達がこいつらを捕まえる筈だ。
え? アバウト過ぎって? 良いんだよそんなのもう。
……にしてもこいつら、まだ逃げねぇな。犯罪者のくせに肝が座ってやがる。
仕方ねぇ。いっちょ吠えてやるか。
俺がまた腹に空気を入れると、犯人の内一人が俺にレーザーを放った。
まぁレーザーぐらいなら別に…
「グオォ!?」
いってぇ!!! 何? めちゃくちゃ痛ぇんだけどこれ!!! ま、まさかこの銃…対ドラゴン用か!?
【邪魔すんなよドラゴン】
え?
【これは、人間同士の問題だ】
テレパシー?
まさか…あの犯人が送ってるのか? 人間が?
「撃てぇ!!!」
俺が混乱していると、警官達のレーザー銃の発砲が再び始まった。
犯人達は一人一人とそのレーザーに当たり倒れていく。
だが、その死体は残りはしなかった。その死体は、なんと一気に塵となって消え失せてしまったのだ。
塵…。まさか…
俺の頭の中に、昨日のおじさんの言葉が過ぎる。
『信じられない話だが、分身したらしい。囮はバルタスのコピーと考えるのが自然だろう。実際、その囮のバルタスは撃たれた後に塵になった』
……まさかこいつ…
俺はすぐに犯人達の一人…銃こそ持っているが構えずに撃つ気の無さそうな一人にテレパシーを送る。
【お前…バルタス・プラナードか…!】
犯人は少し驚いた様にするが、すぐにヘルメットを脱いだ。
俺は写真を見た事が無いから知らないが、ヘルメットの中から現れたその顔は、20代後半の白人男性だった。
【何故俺の名を知っている?】
【ファンなんだよ。お前のな】
やはり、この男はバルタス・プラナードの様だ。
という事は、この他の犯人達は奴のコピーか。
【なるほど…。前から思っていたが、やはり変なドラゴンだな】
【勝手に言ってろ】
バルタスは笑みを浮かべながら、塵となったコピーが持っていたレーザー銃を取る。
俺はそれを見て、警戒を始める。
【バルタス。もうこんな事はやめろ。お前は以前までドラゴンスレイヤーとして働いていた筈だ!それが何故…】
【魔法が当たり前なドラゴンには分からないさ。俺達、ソーサラーの苦しみがな】
二丁のレーザー銃を持ったバルタスから、もう一人のバルタスが現れた。
これが奴の「自身の複製を作る魔法」らしい。
しかも着ている衣服や、二丁のレーザー銃までコピーしてやがる。
こいつ…自分が持ってる物までコピーできるのか。
「「もう一度言う。これは人間同士の問題だ。ドラゴンであるお前が、邪魔をするな!」」
バルタスはテレパシーではなく、先ほど生み出したコピーと共に声を出してそう言った。
そしてその瞬間、バルタスは次々とコピーを生み出していく。
よく見ると、コピー自身もコピーを生み出してやがる。
バルタスがコピーを作るのにかかる時間は、そう長くはかからなかった。というか、奴は一瞬で一人二人とコピーを作り続ける。
そうしてバルタスは、警官達との銃撃戦を再開し始めた。
警官達の銃撃を受けているというのに、コピーは全く減る気配が無い。
ヤバい…早くなんとかしねぇと…。
俺は考えに考え、周りに無人のバスが数台置いてかれているのを見た。
……やってやるか。
俺は銃撃戦に巻き込まれるのを覚悟で、テレポートして次々とバルタス達を捉え始める。
バルタスのレーザー銃は対ドラゴン用だが、警官達のレーザー銃は対人間用だ。ドラゴンの俺には大したダメージは無い。
とりあえず、バルタスの攻撃に当たらない事を意識していけばいい。
俺は捉えたバルタス達を、どんどんその無人バスの開けっ放しの入り口に放り込んでいく。
もちろん数名かはすぐにバスから出て行くが、もうそこは妥協する。
どんどんとバルタス達を無人バスに放り投げ、何とか一杯になってきたところで俺は、入り口の方にこれまた無人の車を置いて入り口を完全に防いだ。
バスの窓を見ると、同じ顔の男がバスの中で暴れている。何だか気持ち悪い絵面だなぁ。
「おい」
俺が呑気にバスの窓を見ていると、突然背後から声が聞こえた。
しまった。流石に油断しすぎた。
振り返ると、そこにいたのはやはりバルタスだった。本物か偽物かは分からないが、奴は俺に銃を向けている。
「邪魔な奴だ…。どうしても邪魔をすると言うのなら、容赦はしない!」
いつの間にか俺の前には十数人のバルタスが立っており、俺にレーザー銃を放った。
俺はすぐにそのバルタス達のテレポートをし、その無数のレーザーを躱す。
レーザーはバスに命中し、バスは大爆発を起こした。
バスが大爆発してもまだバルタス達がいるって事は、あのバスには本物のバルタスはいなかったって事だな。
ったく、何かさっきまでの苦労が水の泡に終わっちまったみたいで何か悔しい。
そんな事を思っていると、また別のバルタスが俺にレーザーを放った。俺は上空に飛び、またそれを躱した。
そのレーザーは何人かのバルタスに当たったが、塵になって尚且つバルタス達がまだいるので、そのバルタス全員も偽物の様だ。
ちょっと待てこれ…。どれが本物なんだ?
「どうして邪魔をする。そんなに人間が好きなのか?」
一人のバルタスがそう言うと、何人かのバルタスは俺にレーザーを放つ。
俺はそれを次々と躱し、時にはテレポートをしてなんとかその場をしのぐ。だが、レーザーの数があまりにも多過ぎる。これでは、何れ当たるのは確実だ。
因みに他のバルタスは、どんどん警官達を殺していっている。どうやら警官達も、流石のこの数では溜まったもんじゃないらしい。
まぁそりゃそうだ。犯罪者とはいえ、バルタスは訓練を積んだドラゴンスレイヤーだ。しかも分身する訳だから、今の相手は訓練を積んだ兵士達の大群という事になる。しかも現在増殖中の。
こいつをどうにかするには、本物を見つけ出すしかない。
だけど、本物は誰なんだ?ってか、本物と偽物の違いってなんだ?
俺が本物を探している間に、バルタスは再び増殖していく。
そして再び、バルタスは俺に向けて銃を向ける。
……おっと、流石にこの数はヤバい。
バルタス達は同時に銃の引き金を引いた。
細いレーザーだったのが、幾つも集まってまるで一つの極太レーザーの様だった。
俺はすぐに反対側にテレポートするが、それを予測していた他のバルタス達が、再び無数のレーザーを放った。
「グアァァァァァァァ!!!」
流石にこの無数のレーザーは避けきれず、俺の体には幾つものレーザーが命中する。
俺は飛ぶ力を失い、そのままアスファルトの地面に叩きつけられた。
やべぇ…これ、かなりヤバい。マジヤバい。
「愚かなもんだな。ドラゴンのくせに人間同士の問題に介入するからだ。いいか? もう一度言ってやる。これは、俺達人間の問題なんだ。お前の様なドラゴンが、出る幕じゃねぇんだよ!!!」
一人のバルタスが、倒れる俺に向かってそう言った。
ふ、ふざけんなよ…。確かに、これは人間同士の問題かもしれねぇがよぉ…。
【問題って…どんな問題なんだよ…。一体どんな理由で、街をめちゃくちゃにして良いんだよ!!!】
俺は力を振り絞って、一人のバルタスを睨みながらそう返した。
だが、そんな俺の顔をバルタスは踏み潰した。
「お前に何が分かる…。俺はこの魔法の所為で、実の親から捨てられたんだ! それからこの悪しき力は封印したさ! でもな…もう限界なんだよ!
何故優れた種である俺達が、魔法も使えない愚民共に合わせる必要がある! 何故、俺達より劣る奴等に怯えなくちゃいけない! 何故、俺達が迫害されなくてはいけない! 何故、無能な猿と一緒に暮らさなくちゃいけない!!!」
……なるほど…。確かに、こいつの言ってる事は一理あるかもな。でも…
【ふざけんな…。確かに辛ぇかもしれねぇ…。けどな…】
俺はバルタスの足を掴み、そのバルタスを睨み返す。
【それでこの街を…壊していい理由にはならねぇんだよぉ!!!】
俺はそのまま、バルタスを投げて立ち上がった。
投げられたバルタスはそのまま転落し、塵となって消え失せた。
まぁ予想はしてたが、やっぱりこいつも偽物か。
立ち上がった俺に警戒したのか、バルタス達は一斉に俺にレーザー銃を向ける。
「何だ?そんなにこの街に思い入れでもあるのか?ドラゴンのくせに…」
あぁ、悪いがその通りだ。
ここはクリントと…そしてリーシャとで遊んだ思い出の場所だ。
ここには、リーシャとの思い出が詰まってんだ。ここだけじゃねぇ。色んな場所で、リーシャとの思い出が詰まってる。
だから、人間同士の問題だとかそんなの関係ねぇ。俺にとって大事なのは「リーシャ」なんだ。
俺は右手を挙げ、そこからドラゴンからすればバレーボールぐらいの大きさの圧縮弾を作り始める。
「?」
バルタスの一人が、何をしようとしているのか理解できないのか首を傾げる。
本物と偽物の違い。今俺が考えられるのは、これしかねぇ。
【まとめて吹っ飛びなぁ!!!】
俺はその圧縮弾を足元に放り投げた。
大きさはあるので大した威力は無い。だが、人間相手にはこれで十分だ。
実際、バルタス達はその衝撃波で次々と吹っ飛んでいく。
だが俺は見逃さなかった。バルタスの大群の中に一人、急いで建物の陰に隠れる者を。
そこか!
俺はそのバルタスに狙いを定めてテレポートをする。
「なっ!」
建物の陰に隠れようとしたバルタスを、俺は尻尾で軽く叩き飛ばした。
叩き飛ばされたバルタスは、さらに圧縮弾の衝撃を受けてさらに吹っ飛んだ。
俺は奴が落ちる前に掴み、奴が意識を失ったのを確認した。
そしてそれと同時に、沢山いた偽物のバルタスが一気に塵となる。
本物と偽物の違い。
それは命がある事だ。つまり、本物は偽物と違って自身の怪我に敏感な筈だと俺は思ったのだ。
だから圧縮弾という全体攻撃を行って、唯一避難しようとした本物のこいつを見つけたという訳だ。ちょっとした賭けだったが、上手く行って助かった。
にしてもこいつ、どうしようか?また意識戻ったら分身するよな?う〜ん…あ、そうだ。
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僕は無事帰宅し、テスト勉強を始めた。
お母さんはお父さんのお見舞いでいないみたいで助かった。帰るのが遅くなった上に、また身体中に怪我をしているのだから、バレたらどうしようと怖かったんだよね…。
そういえば、警察はバルタスを見つけてくれたかな?
バルタスは、無人の車の中に閉じ込めておいた。両サイドにこれまた無人のバスを挟んで。
これで自力で脱出する事は出来ない筈だ。コピーは自分の体からにしか生まれないみたいだったしね。
しかし、これは本当に本格的なソーサラーとの戦いを考えた方が良いかもしれない。あと、今日は出てこなかったけどスパイクギフトとかいう殺し屋も。何だか、もうドラゴンとの戦いが恋しくなってきた。
……あぁ駄目だ駄目。そんな事考えたら本当にドラゴンがやってくるぞ。今はテスト勉強だテスト勉強。
さて、気を取り直して勉強勉強…。
…………
………
……
全然分からん。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
午後9時8分
アベンズ市
そこは何処かの倉庫だった。
薄暗い倉庫で、ハイテク機器が並ぶ現在とは違い、何処か歴史を感じる構造だ。水漏れが酷いのかは分からないが所々には水溜りがあり、お世辞にも綺麗な場所とは言えないが。
「いやぁ…キミの活躍には感動したよ。中々強力な魔法だね」
そんな倉庫内で、とある男が別の男と話していた。
「これからキミも『ネオプロローグ』の一員だ」
その男はそう言って、別の男に握手を求める。
「歓迎するよ。バルタス・プラナード」
握手を求められた男は、なんとバニッシュに捕まった筈のバルタスだった。
「こちらこそよろしくお願いします」
そう言ってバルタスは、目の前の男に握手をした。
その男の名は…
「ダン・ノーマックさん」
ダンは新たな仲間であるバルタスを歓迎し、微笑んだ。




